アースバウンド

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アースバウンド(Earthbound)は英国のロックバンドキング・クリムゾン1972年に発表したライヴ・アルバム。その音質の悪さ、演奏の凄まじさなどからロックの怪盤として扱われている。

経緯[編集]

アルバム「アイランズ」を発表したキング・クリムゾンは1971年からツアーを重ねるが、ロバート・フリップピート・シンフィールドの元からバンドにいた二名と新加入であるメル・コリンズイアン・ウォーレスボズ・バレル(当時の芸名はボズ)の三名の音楽的見解の相違は次第に深いものになっていった。特にブルースやより土着的な音楽を愛する新加入組との音楽性、フリップが今後目論むバンドの方向性とは相容れないと判断されたピート・シンフィールドは1972年の二月には解雇される形でバンドを脱退。残されたメンバーもフリップと相容れず、脱退がすでに決定する形で契約の都合上2月11日からのツアーに臨む状況となっていた。

概要[編集]

バンド初のライヴ・アルバムとして発表された本作は、ライヴ会場のミキシング・コンソールに直に繋いだアンペックスのカセット・テープで録音された音源がプレスされており、強すぎる音圧で音は常に割れ気味でヒス・ノイズも多く、聴くリスナーを良い意味でも悪い意味でも驚かせるものであった。英国ではアイランド・レコードの廉価版(ヘルプというサブレーベル)でのみのリリースとなり、米国ではアトランティック・レコードが「Poor sound quality」としてリリースを見送った。日本では長らく輸入盤でしか入手が不可能であった。

曲目も曲をフルで収録したものは少なく、きちんとしたヴォーカル曲はA-1の「21世紀の精神異常者」のみ[1]で、ライヴ内のジャムなどを抜粋したものが多い。そのジャムもフリップの存在を無視したような三人によるブルースもどきであり、長らくフリップによってCD化は拒否されていたが、コレクターズ・クラブでこの時期の演奏を大量放出した後の2002年に30th Anniversary Editionと題しリマスター盤が販売された。またVSC3シンセサイザーでのエフェクト処理がドラムソロに施され荒涼感を増している。

曲目[編集]

  1. 21世紀の精神異常者 - (2月11日デラウェア州ウィルミントン公演) 音質も相まって暴力的な演奏は本曲のベストテイクの呼び声も高い。ボズのヴォーカルもエフェクト処理され歪んでいる。
  2. ピオリア - (3月10日イリノイ州ピオリア公演) 前曲とはうって変わってけだるいブルースジャムの抜粋。
  3. 船乗りの話 - (2月26日フロリダ州ジャクソンビル公演) 実際のライヴでは「フォーメンテラ・レディ」からのメドレー演奏だが、カットインかつカットアウトの収録。
  4. アースバウンド - (2月27日フロリダ州オーランド公演) これも三人組主導のジャム。
  5. グルーン - (2月26日フロリダ州ジャクソンビル公演) 「ポセイドンのめざめ」の時期に発表されたシングルB面曲がこの時期演奏された。後半は延々とドラムソロが続き、フリップのギターとともにフェイドアウトする。

脚注[編集]

  1. 当時のコンサートでも「サーカス」や「冷たい町の情景」などしっかり歌モノは披露されていたが、ツアー後半になるにつれヤケクソっぽいジャムの占める割合が増えていた。
  • なおEarthBoundというと日本国外ではコンピュータRPGの「MOTHER2 ギーグの逆襲」をさすことが多い。言葉の意味としては「地に根差した」、「土着的」という意味になる。