リザード (アルバム)

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リザード (Lizard) は1970年12月に英国のロックバンド、キング・クリムゾンが発表したサードアルバム。

経緯[編集]

キング・クリムゾン分裂後まもなく元メンバーやゲスト・ミュージシャンを迎えて「ポセイドンのめざめ」を製作し発表したロバート・フリップが、ツアーの行えない状況下で七ヶ月という短いスパンで発表したのが本作である。メンバーは完全に流動化し、オリジナルメンバーはフリップ以外ピート・シンフィールド(楽器は演奏しない)のみになった。フリップはイエスのジョン・アンダーソンに(初代ギタリストピーター・バンクスが脱退しスティーヴ・ハウは未参加)イエス加入を薦められていたがこれを断り逆に彼をこのアルバムで歌わせることになった。メンバーは前作から参加していたキース・ティペットや、ファーストアルバムで脱退したイアン・マクドナルドの穴を埋めることのできるメル・コリンズに引き続き参加を要請、フリップの郷友のゴードン・ハスケルにベースボーカルを任せ、ドラムスには正確で細かい技術に定評のあったアンディ・マカロックを指名した。録音後ツアー用のリハーサルを行うもハスケルとフリップの意見が衝突しハスケルが脱退、バンドはまたもや空中分解した。

ハスケルの脱退についてフリップ&EGレコードは「彼はセッションミュージシャンという扱いなので契約不履行の際はギャランティーを支払わない」と宣言。ハスケルは訴訟も辞さない構えだったが経済的理由から断念。また、後にボックスセット「紅伝説」にこのアルバムから選曲される際にハスケルのパートを、ボーカルはエイドリアン・ブリューに、ベースはトニー・レヴィンに差し替えるというヒトデナシ行為をフリップは行っている。

概要[編集]

キース・ティペット・グループやゲストの参加によりジャズ色が濃厚になり、よりカオスな曲調を極め半ばフリップのソロアルバム化した本作は、他に例を見ないほどフリップがアコースティックギターを多用しているのが特徴。また、ヴォーカルが朴訥でマッタリコクのある声かつ叫んだりロック風の歌い方をしないゴードン・ハスケルになったことで全体的によりとらえどころのない作風になっており、ベスト盤にこのアルバムからは選曲されないなどファンからは好き嫌いがはっきり分かれ、フリップ自身からも注目されることが少ないアルバムである。

またフリップはこのアルバムを聴き続ければ24回目には打ちのめされる(負け惜しみ?)と語っているが真相は不明。しかしながらピート・シンフィールドの陰鬱なゴシック調歌詞世界は相変わらず炸裂しており、前衛的なピアノやメロトロン、コルネットやフルートの多用によってロックの枠を完全に超えた現代音楽の域に達しているという意見もある。特に「水の精」のフルート、ヴォーカルにイエスのジョン・アンダーソンをゲスト起用しB面を埋めるキング・クリムゾン史上最長の組曲「リザード」のメロディの美しさは特筆すべきものである。

収録曲[編集]

作詞作曲全てロバート・フリップとピート・シンフィールド。収録時間は42分43秒。

  • サーカス-カメレオンの参上- - Cirkus ;including Entry of the Chameleons - 6:29
電気処理されたピアノの不思議な旋律とささやくボーカルが「舌を噛むような」中世暗黒時代のサーカスの喧騒を描いた歌詞を歌うと突如メロトロンとサックスが狂暴なリフを奏で、途中からフリップのアヴァンギャルドで狂的なアコースティックギターが絡んでいき、終盤には金管が明るく不気味なファンファーレを吹き曲は収束していく。このアルバム中最もロック色が強く人気の高い曲である。1971年から1972年にかけてライヴの序盤に演奏された。

YouTube 動画リンク

  • インドア・ゲームズ - Indoor Games - 5:40
フリップのジャズロックへの傾倒を示す曲で、妙なエレピに下世話なサックスが大活躍する。フリップはいわゆる曲の「サビ」を作ることは苦手のようだ。
  • ハッピー・ファミリー - Happy Family - 4:17
前曲から途切れなくメドレー形式で演奏される曲。前曲より聴覚をいじめてくるタイプの奇妙な曲。曲ラストがユニーク。
  • レディ・オブ・ザ・ダンシング・ウォーター(水の精) - Lady of the Dancing Water - 2:44
本作品中最も常識的な曲。アコースティックギターとフルートを中心に様々な楽器が繊細で美しい世界観を作り上げている。1971年からのツアーでもたまに演奏されたようだ。
  • リザード - Lizard
  1. (a)ルーパート王子のめざめ - Prince Rupert Awakes - 4:35
    (b)ピーコック物語のボレロ - Bolero - the Peacock's Tale - 6:36
    (c)戦場のガラスの涙 - The Battle of Glass Tears - 11:03
    (i)夜明けの歌 - Dawn Song
    (ii)最後の戦い - Last Skirmish
    (iii)ルーパート王子の嘆き - Prince Rupert's Lament
    (d)ビッグ・トップ - Big Top - 1:10
B面を占めるのはキング・クリムゾン史上唯一の20分を超える作品かつ一番の異色作である。「ルーパート王子のめざめ」部分のヴォーカルにジョン・アンダーソンが起用され幻想的で繊細な世界を見事に表現している。小曲が数多くインクルーディングされているが細かい区切りがわからない部分も多く、幻想的な部分や「ボレロ」以降間延びした感の否めない部分など明らかにロックの常識からは外れた曲である。

アルバムジャケット[編集]

デザインの常識から考えると奇妙なレイアウトで表には「Crimson」の文字が意匠化されて配置されている。一番大きいCの文字の絵は一曲目「サーカス」を表している。I部分の絵にはなぜかビートルズのメンバーらしき人物が描かれている。(ハッピー・ファミリーの挿絵らしい)裏面は意匠化された「King」の文字がレイアウトされており、おそらくは「リザード」の世界観を示している。

参加ミュージシャン[編集]

左からフリップ、メル・コリンズ、アンディ・マカロック、ゴードン・ハスケル、シンフィールド
レギュラーメンバー
  • ロバート・フリップ - ギター、メロトロン、キーボード
  • メル・コリンズ - サックス、フルート
  • ゴードン・ハスケル - ボーカル、ベース
  • アンディ・マカロック - ドラムス
  • ピート・シンフィールド - 作詞
ゲストミュージシャン
  • ジョン・アンダーソン - ボーカル
  • キース・ティペット - ピアノ、エレクトリックピアノ
  • マーク・チャリグ - コルネット
  • ニック・エヴァンス - トロンボーン
  • ロビン・ミラー - オーボエ、コール・アングレ