高松琴平電気鉄道10000形電車
高松琴平電気鉄道10000形電車(たかまつことひらでんきてつどう10000がたでんしゃ)とは、かつて高松琴平電気鉄道に存在した電車の1形式のことである。
概要[編集]
琴平線での急行運転の実施に備えて1952年に2両編成1本が製造された。吊り掛け駆動方式の旧性能電車ではあったものの当時の地方私鉄向け電車としては画期的な装備となっており、以降20年近くにわたって急行運用に充当され、「こんぴら号」という愛称があった。
構造[編集]
車体は17m級のノーシル・ノーヘッダーの半鋼製車体を備え、前面は張り上げ屋根となっている。連結面は切妻で広幅貫通路を備え、貫通幌や密着連結器も琴電初採用となった。床もリノリウム張りとなっている。
主電動機には吊り掛け駆動用の中でも大出力・高回転型のHS-355を採用。制御装置は日立製電動カム軸式抵抗制御のMMC-HB10を採用している。このため変電所容量増大の観点からユニット方式を採用した。
ブレーキ方式は日立式電磁直通ブレーキだが、何より注目されるのはワンハンドルマスコンを日本で初めて採用した点である。しかし、電空同期機構が不十分なため、以降の日本の電車には普及しなかった。また、非常用にM三動弁による自動空気ブレーキを備えていた。
一方、台車のみは払い下げを受けたものを使用しており、営団1000形電車の改造発生品を流用した。このため、第三軌条のコレクターシューが残っていた。
運用[編集]
当初から急行に充当され、1959年から65年までは1方向の固定クロスシートとなっていた。その後、こんぴら2号として1010形が登場し、ともに俊足性を活かして急行に充当されたが、従来車はもとより、この1010形との併結もできなかった。
このため、急行の廃止後は性能を持て余し、1980年には以下の大改造が行われた。
- 制御方式のHL化
- ブレーキ方式のSME化
- ユニット方式を取りやめ、1001に電装品を集中搭載し、1002の電装を解除
しかし、ブレーキ管や主電動機をそのまま流用したため使い勝手がかなり悪くなり1986年に1070形の1073Fが入線すると代替廃車され、しばらく留置された後に解体処分の憂き目となった。車両を50年や60年単位で使用する琴電にとっての車齢34年での廃車だったので異例の短命となってしまった。