飛鳥山トンネル

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江北側坑口

飛鳥山トンネルとは、首都高速中央環状線(C2)にある、飛鳥山公園王子駅を潜る、自動車専用トンネル。片側二車線で、内回りトンネルは長さ480m、外回りトンネルは長さ740mと、長いトンネルではない。

トンネル両側は高架につながるため、この飛鳥山トンネルはちょうど谷のようになっている(いわゆるサグ)。そのため、下り坂から上り坂に変わったことに気付かず、速度が落ちた車に、追突する事故が絶えない。

江北ジャンクション・荒川側では上下線が横並び(都合4車線の横並び)であるが、板橋ジャンクション・池袋側では上下線を2層の縦並びになるため、トンネル内で並びを変えている。この措置は、既存道路の上に高架で道路を造る際、土地の確保を最小限に抑えるためのもの。

構造[編集]

本トンネルは、おおむね4つの区間に分けられる。板橋ジャンクション側から、飛鳥山交差点の下までの開削工法による区間、飛鳥山公園を潜るNATM工法による区間、JR線王子駅を潜るHEP&JES工法による区間、現在換気所が設けられている江北ジャンクション側の開削工法による区間である。

開削工法区間(板橋側) 延長440m
板橋側では、都電荒川線と本郷通りが走る飛鳥山交差点の直下を通過する。この交通を妨げないよう、飛鳥山公園内と歩道に立坑を開削し、そこから横に交差点の地盤を保持するパイプルーフ(鋼管による天井)を挿入し掘り進め、トンネル空間とNATM工法区間の建築スペースを確保した。これにより、交差点を開削することなくトンネルの建設が可能となった。
ここには工事中、ログハウス風の案内施設「あすか山」が設けられ、近隣住民への説明が行われた。
NATM工法区間 延長108m
飛鳥山公園下を通過する区間。山岳部で多く使われる新オーストリアトンネル工法(NATM)が用いられた。
板橋側開削部より、現在の2つのトンネルを隔てる内壁にあたる部分に、先行して中央導坑を掘削、その後地中を固めながらトンネル本体を構築する、「中央導坑先進上半工法+高圧噴射改良長尺先受工法(アンブレラ工法)」が取られた。まこと長ったらしい名前である
この工法を採ることで、桜の名所として知られる飛鳥山の植生への影響を最低限としつつ、地山崩落や地表面の沈下を防ぎ、東京メトロ南北線のトンネル上3.5mを通過させるという、精度の高い施工を可能とした。
この工事では、先に中央導坑の上半分を掘削、そこからトンネル掘削面をセメント置換しながら、トンネル本体が構築された。
HEP&JES工法区間 延長53m
この区間はJR線の直下に当たり、施工もJR東日本に委託された。当初はトンネル外殻となる部分に鋼管を挿入していくPCR工法が予定されていたが、工期短縮のため、挿入した鋼材(エレメント)がそのままトンネル外殻となる、HEP&JES工法に切り替えられた。
またHEP&JES工法であっても工区両端に開削による立坑を設けるのが常であるが、飛鳥山公園内に立坑を設けることが出来ないため、先行して建築されていたNATM工法区間の終端部に、地中接合部を設け、立坑の代わりとした。地中接合部は先述の変更のため、5m程度の延長が必要になり、トンネル本体工事に先立ち、TULIP工法で延長がなされた。これはNATM工区建設時に同時に設けた中央導坑に加え、側壁導坑2本を建設、この間をトンネル上壁となるアーチ形の鋼管支保工でつなぎ、トンネルを掘削するもの。この支保工挿入には1列60時間、計16列960時間を要した。
HEP&JES工法区間では、最初にトンネル最上部となる基準エレメントを工区全区間に貫通させ、それに連結する形でアーチを形成するエレメントを挿入、トンネルを形成していった。基準エレメントは機械掘削を予定していたが、旧王子駅の松杭や石垣などの遺構が存在したため、人手による掘削を行うこととなった。これによる工期の遅れを取り戻すため、夜間工事の予定であったものを昼夜連続工事に変更、後述の沈下調査にいっそう注意を要することとなった。
この区間での最小土被り(JR線の通る地表面からトンネル上部までの深さ)はわずか2.4mである。
開削工法区間(江北側) 延長100m
区道を仮設桟橋に移設し、その下を開削によりトンネルを構築、またHEP&JES工法区間の立坑とした。現在は換気塔が設けられている。

特に板橋側開削工法区間(飛鳥山交差点)、HEP&JES工法区間では、営業する鉄道線の直下を掘り進める形となり、地表面沈下にはかなり気を遣う工事となった。沈下の調査として高精度のセンサを随所に設け、緊急時には即座に電車の運行を止める連絡体制も設けられた。幸いにも大規模な沈下は発生せず、夜間の保守作業で対応可能な範囲に収まった。

参考[編集]

  • 土木施工(山海堂)
    • 1997.1号「飛鳥山トンネル工事 首都高速中央環状王子線」
    • 2001.9号「施工研究 軌道直下を横断する円形JESトンネルの設計・施工 首都高速中央環状王子線・飛鳥山トンネル」
    • 2003.3号「施工研究 営業線直下における円形トンネル施工の工夫 首都高速中央環状王子線・飛鳥山トンネル」
  • 鉄道施設協会誌 2001.12号「施工 東北本線王子駅構内首都高速道路新設工事に伴う支保工敷設 飛鳥山トンネル延伸・拡幅部でのTULIP管(先行支保工)設置工」
  • 建設の機械化 1995.4号「都市NATMによる飛鳥山トンネルの設計および施工」
  • トンネルと地下 1998.7号「飛鳥山公園下の大断面めがねトンネルの施工 首都高速中央環状王子線 飛鳥山トンネル」