犬のお告げ
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『犬のお告げ』(原題:The Oracle of the Dog)は、イギリスの推理作家G・K・チェスタトンの推理小説。短編集『ブラウン神父の不信』に収録されている。
あらすじ[編集]
ヨークシャー海岸のクランストンで密室殺人が発生した。ドルース大佐が自宅の東屋で背中から刺し殺されて亡くなったのだ。事件の前後、秘書のパトリック・フロイドは庭木の手入れをしており、母屋と東屋をつなぐ中央路を通った人物がいれば見逃すはずはなかった。このフロイドの姿もまた別の人物によって目撃されており、庭から離れていないことが確認されている。また、通路の両脇にはぎっしりと植物が植えられており、一歩でも踏み出せば足跡がつかないはずはない。犯人は、この一種の「密室」状態でどのように犯行を成し遂げたのか?
――犯行とほぼ同時刻、海岸を散歩していたドルースの飼い犬・ノックスは、世にも奇妙な悲しい鳴き声をあげた。まるで、主人の命が尽きたことを感じ取ったがごとく。
概要[編集]
雑誌『ナッシュ』1923年12月号にて発表された。
高い評価[編集]
- 東京創元社版『ブラウン神父の不信』の背表紙では「これを読まずしてブラウン神父は語れないほどの傑作」と紹介されている。
- 『有栖川有栖の密室大図鑑』のなかでは、海外の密室ミステリを語る上で重要な20作品の1つとして紹介され、「鮮烈なまでの視覚イメージと見事な聴覚イメージ」というキャッチコピーがつけられている。
- 1949年にエラリー・クイーンの呼びかけに応じて、12人の作家・評論家[1]が短篇ミステリーのベスト12を選定した(黄金の十二)。『犬のお告げ』は3票が入り、4位タイであった。(ちなみに、1位は8票が入った『オッターモール氏の手』(トマス・バーク)であった。)
後の作品への影響?[編集]
余談だが、作品の冒頭には「ドッグをさかさに綴ってゴッドとしたんではまずいがね」というブラウン神父の台詞が登場している。
ひょっとすると、エラリー・クイーンの(念のため伏せ字)『盤面の敵』に影響を与えているのかもしれない。
また、天城一『高天原の犯罪』は「犬は賢者である。或はそれ以上である。」という書き出しで始まる。天城はチェスタトンの作品に通じており、主著『天城一の密室犯罪学教程』でもチェスタトンの諸作品(『見えない人』『奇妙な足音』『ムーンクレサントの奇跡』)に触れている。この書き出しに、ある種の連想が働いていると見るのも無理筋ではあるまい。(あくまで推測の域は出ないが)
登場人物[編集]
- ドルース大佐
- 被害者。
- ジャネット・ドルース
- 大佐の娘。父の死体の第一発見者。ヴァンレンシュタイン博士と恋仲である。
- ドナルド・ドルース
- 大佐の息子。自堕落な生活を行い、大佐から見放されている。
- ハーバート・ドルース
- 大佐の甥。インド帰りの士官。馬の飼育に詳しい。
- ハリー・ドルース
- ハーバートの弟。インド帰りの士官。
- インドの警察で働いていたが規則に違反して失職している。モンテ・カルロで財産をスっている。
- パトリック・フロイド
- 大佐の秘書。特徴的な赤毛をもつ。さまざまな分野に精通し、精力的に行動する。
- 事件の発生前後、庭木の手入れを行っていた。
- オーブリー・トレール
- 大佐の顧問弁護士。遺言書の手続きを行うため、自宅を訪れていた。
- 上等な黒服を着用し、長い頬髭を生やしている。長いネクタイピンを付けている。
- いつもはいかめしい表情をしているが、時折白い歯を見せて笑う。
- 事件直後に犬のノックスが吠え立てた相手である。
- ヴァランタイン博士
- 大佐の隣人。外国人。ジャネット・ドルースと恋仲にある。
- いつもトップハムハットに地味なコートという正装をしており、四角に刈った顎髭を生やしている。
- ファインズ
- ドナルド・ドルースの友人。ブラウン神父に話を持ち込んで、事件を解決してもらおうとする。
- ノックス
- ドルース大佐の飼い犬。ギリシャ神話の夜の女神にちなんで名付けられた。
- ブラウン神父
- シリーズおなじみの探偵役。本作では安楽椅子探偵として、ファインズから聞いた話だけを元に推理する。
脚注[編集]
- ↑ 「ジェームズ・ヒルトン」「ハワード・ヘイクラフト」「ジョン・ディクスン・カー」「アントニイ・バウチャー」「ヴィンセント・スターレット」「ジェイムズ・サンドー」「オーガスト・ダーレス」「ヴィオラ・ブラザーズ・ショア」「リー・ライト」「ルウ・D・フェルドマン」「チャールズ・ホンス」「エラリー・クイーン」の十二人。
ネタバレ有り解説[編集]
→ こちらからどうぞ。