法水麟太郎

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法水 麟太郎(のりみず りんたろう)とは、作家・小栗虫太郎の推理小説中に登場する、探偵キャラクター。

概要[編集]

私立探偵。一人で調査する姿が描かれる事は稀で、多くは、熊城卓吉(くましろたくきち)捜査局長・支倉(はぜくら)検事とともに、3人組で捜査に従事している。熊城は、普段は警察官のひとりとして、私人を交えずに捜査に当たっている(ものと思われる)のだが、事件内容が非常に特異・奇怪であるものに限り、法水氏に協力を依頼することがある。支倉は、作中で下の名前が明らかにされたことはないが、(長期連載中の雑誌や文庫版の)登場人物の一覧紹介の中に「支倉肝」として紹介されたことはあるようだ。但し読みは不明。

元来、小栗の推理小説はどれをとっても「超現実性」を孕んでいるのだが、とりわけ法水麟太郎シリーズの作品では、その傾向が最も顕著に現れている。法水シリーズの中に登場するトリックは、どれもこれも、「理論的に」可能というだけの話であって、「現実的に」は先ず不可能なものばかりである。あまりにも実現可能性が低かったり、一般人がそこまでの難解なトリックをどうして考え出せるのかという点で疑問があったり、たとえ考え付けたとしてももっと簡単な方法が他にあるのではないか・・・・等々々。トリックありきのプロットであるため、それを許容できない人には、読むのは苦しいかも知れない。とはいえ、登場人物たちはみな一癖も二癖もある者たちばかりであり、その奇怪な雰囲気によって、何となく有得てしまいそうに思わさせられるのは流石である。

読者は無論のこと、お供の熊城や支倉にさえも理解できない、難解な学術的智識、詭弁を吐きまくることで、事件を実際以上に壮大なものであるかのように装飾し、捜査をいっそう困難な物にしていく悪癖がある。本人は、自ら事件を難解に塗り替えておいて、その中で頭脳遊戯を楽しんでいる模様。まことにタチが悪く、実際的な事件の解決には不向きな性情の男だが、最終的には超人的頭脳でもって、超科学的な事件の真相をも明らかにしてしまう。

「法水」が「ほうみず」とも読める事から、シャーロック・ホームズをもじった名前ではないか、とも俗に言われる。

登場作品一覧[編集]

  • 後光殺人事件 (1933年)
  • 聖アレキセイ寺院の惨劇 (1933年)
  • 黒死館殺人事件 (1934年)
  • 夢殿殺人事件 (1934年)
  • 失楽園殺人事件 (1934年)
  • オフェリヤ殺し (1935年)
  • 潜航艇「鷹の城」 (1935年)
  • 人魚謎お岩殺し (1935年)
  • 二十世紀鉄仮面 (1936年)
  • 国なき人々 (1937年)

『オフェリヤ殺し』まではトリック重視の本格ミステリだが、『潜航艇「鷹の城」』以降は通俗的なサスペンスの色彩が濃い。

影響[編集]

  • J・G・バラードの小説『残虐行為展覧会』の翻訳者は、「法水 金太郎」という名義を用いている。これは横山茂雄氏と、稲生平太郎氏の、合同ペンネームである。
  • 岡村雄輔の小説『廻廊を歩く女』中には「秋水 魚太郎」なる人物が登場する。どうやら私立探偵ではないようだが、私人にも拘らず親しい警察官のコネを利用して、現場捜査にも携わるなど、法水と似た設定を持っている。
  • 作家法月綸太郎は、法水麟太郎をもじったペンネームだと、しばしば世間一般に思われているが、実際は、吉川英治の小説『鳴門秘帖』中に登場する「法月弦之丞」という人物のほうをもじったものであるらしい。

関連項目[編集]