母子像

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母子像』(ぼしぞう)とは、昭和29年(1954年)に発表された久生十蘭の短編小説。

概要[編集]

初出は読売新聞、3月26~28日号。英文学者・吉田健一が、英訳して海外に紹介し、ニューヨークのヘラルド・トリビューン紙の「第2回国際短編小説コンクール」では、1等を受賞したという傑作である。

最初は原稿用紙100枚程度のそこそこ長めの内容であったが、幾重にもわたる執拗なまでの推敲を加えて、現在の20枚強の短さにまで凝縮させた。一切の無駄を省き、硬質ささえ感じさせる端正な文章は、まさに晩年の久生十蘭の円熟ぶりを如実に現している。

梗概[編集]

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主人公の和泉太郎が、花売りの格好をして銀座を歩き回ったり、廃棄された掩体壕の中で火遊びをするなど非行行為を繰り返しているため、警察が担任の先生に事情を伺う、というところから始まる。警察は適当な理由で書類を片付けてしまおうと考えており、担任の方は戦時中母親に殺されかけた経験が、今となって反抗的行動として現われているのではないかとの推測を述べる。然し、彼の非行行為の理由は、本当は別な所にあった。彼は推測とは裏腹に、美しい母親の事をとても好いていた。殺されかけた事さえあるが、それでも母親の事を好いており、たとえば花売りの格好で銀座へ行ったのは、バーで働く母親に会おうとしたためだった。あるとき彼は、母親がお客と寝ているらしいことを人伝てに知る。ベッドの下に隠れた彼は、初めて人が性交するときの声を聴き、純情さゆえに強いショックを受けてしまう。母に幻滅を感じた彼は自殺しようとする。それが掩体壕における「火遊び」であったのだが、上手く焼身自殺できずに置いてあった資材だけ燃えてしまう。警察は、担任の次に本人に聴取を行うのだが、上の事実を彼は警察に喋ろうとはしない。それどころか彼の頭の中には死ぬことだけしかなかった。人を殺して死刑になれば死ねる、と考えた彼は出し抜けに警官のピストルを奪って乱射する。慌てたもうひとりの警官が手持ちのピストルで彼を射殺し、そうして非行行為の本当の原因は永久に分からないままになってしまう・・・・。

別作品[編集]

外部リンク[編集]

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