東くめ

東くめ(ひがし くめ、1877年6月30日 - 1969年3月5日)は和歌山県東牟婁郡新宮町（現新宮市）出身の童謡作詞家。日本で初めて口語の童謡を作詞した。勲五等宝冠章。

経歴

• 1877年(明治10年)6月30日、紀州藩新宮領主水野家の家臣であった由比甚五郎の長女として生まれる。母は琴世。出生名は由比くめ。
• 1883年、父が亡くなり、母・妹とともに母方の祖母に引き取られた。祖母は若い頃、紀州家の奥御殿で衣装奉公をしていた。祖母は東くめの幼少時から、お伽話の代わりに、平家物語や古事記など、古今の名文・名歌を読み聞かせた。
• 1888年(明治21年)、祖父の大阪転居により、大阪市西区の川口外国人居留地にある「ウヰルミナ女学校」（現大阪女学院）に入学する。在学中に讃美歌とピアノの音色に魅了され、音楽の道を志すようになったという。在学期間は1年であった。
• 1890年(明治23年)、東京音楽学校選科に入学、以後予科、専修部、さらに研究科に進む。東京音楽学校でピアノと和声学を学んだ。同級生にバイオリニストの安藤幸がいる。
• 1896年に東京音楽学校専修部を卒業。
• 1897年、研究科在籍のまま東京府立高等女学校(のちの第一高女、（現都立白鴎高校）教諭となる。雑誌「音楽」に由比くめの名で、「友の交わり」、「竹生島」など四篇の唱歌を発表する。
• 1899年に東京女子高等師範学校教授で同郷の東基吉と結婚。
• 1901年(明治34年)、言文一致で書かれた日本で最初の唱歌集『幼稚園唱歌』が発行された。同書に収録された20曲のうち13曲は東くめの作詞である。「お正月」、「鳩ぽっぽ」、「雪やこんこん」などの作詞を手掛け、2年後輩の瀧廉太郎が作曲した。夫は東京女子高等師範学校付属幼稚園の批評係も兼ねていたので、当時の幼児が歌う幼稚園唱歌を見聞きしていたが、幼児には難しすぎると感じていた。そこで子供たちのために、可愛い歌を作りたいと考えたという。
• 1917年(大正6年)、基吉が池田師範学校の校長に就任したため大阪府池田市に転居する。
• 1962年7月15日、新宮駅前広場で「鳩ぽっぽ」歌碑除幕式が行われた。新宮市名誉市民となる。池田市で最初の教育文化功労賞を受ける。
• 90歳まで現役のピアノ教師として働く。
• 1963年、池田市・五月山公園に、地元有志により歌碑が建立（デザインは沢村徹）された。
• 1969年3月5日、逝去。享年91歳。勲五等宝冠章が贈られる。

歌詞碑

• 「鳩ぽっぽ」の碑と鳩の彫刻が新宮駅前に建立されている。高さ1.3メートル、幅1.5メートル、厚さ30センチの石に東くめ自筆の歌詞が刻まれている。
• 東京浅草寺の宝蔵門付近にも「鳩ポッポ」の歌碑が作られている。
• 長野県の善光寺境内にも「鳩ぽっぽ」の歌碑がある。

• 新宮市の歌詞碑除幕式は、東くめ、長男貞一夫婦、木村新宮市長、熊野和歌山裁判所長、ロータリクラブ会員、ライオンズクラブ会員等が出席した。午前9時から花火の号砲を合図に除幕式が開始された。冒頭、須川ライオンズ幹事が開会を宣言し、城南中学校ブラスバンドによる「君が代」の吹奏に続いて、ブラスバンドの「鳩ぽっぽ」吹奏の中、貞一あや子夫妻が進み出てリボンに鋏を入れ、くめの自筆が刻まれた仙台石の歌碑が現れた。東くめによる感謝の言葉の後、中村文化会長殿が碑建設の経過を報告し、市長の発声により長寿を祝福する万歳三唱で除幕式は終了した。

人物

• 1917年以降は大阪府池田市室町に住み、児童の歌唱指導に取り組んでいた。
• 「鳩ぽっぽ」は東くめの作詞であるが、その歌詞(鳩ぽっぽ　はとぽっぽ)と文部省唱歌「鳩」(ぽっぽっぽ 鳩ぽっぽ・・・、作曲・作詞者不明)は両者よく似ているので、東くめ作詞の別バージョンと考えられる。
• 「雪やこんこん」は『尋常小学唱歌』『雪』(作詞者・作曲者は不明)とは別の曲だが、「雪やこんこん、あられやこんこん」の出だしは同一であり、東くめ作詞の別バージョンと考えられる。
• 東くめの業績を再考するための朗読劇が2017年5月13日に新宮市の蓬萊体育館で上演された。
• 和歌山県のサイトでは、子どもに分かりやすい歌を作ることは、夫の東基吉が東くめが勧めたとされている。東くめへのインタビューでは自分で考えたように述べているので、かなり状況が異なっている。
• 東くめの日記、楽譜、未発表歌詞などの関係資料は東京芸術大学2019年5月10日に、くめの孫から寄贈された。大学史史料室HPの寄贈資料リストを整備し、公開される予定。

作品

• 「お正月」・・・・「もういくつねると・・・」
• 「鳩ぽっぽ」・・・「鳩ぽっぽ　はとぽっぽ・・・」
• 「みずあそび」
• 「鯉幟」
• 「雪やこんこん」