掌の小説

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掌の小説』(たなごころのしょうせつ または てのひらのしょうせつ)は、川端康成による日本掌編小説集。

川端が若い頃から40年余りにわたって書き続けてきた作品集である。1話の長さは、短いもので2ページ程度、長いものでも10ページに満たない短編小説が122編収録されている。

チャールズ・イにより英訳もされている(「Palm of the Hand Stories」、ISBN 480530653X)。

解説[編集]

この作品に関して、川端は

この巻の作品の大半は二十代に書いた。多くの文学者が若い頃に詩を書くが、私は詩の代りに掌の小説を書いたのであったろう。無理にこしらえた作もあるけれども、またおのずから流れ出たよい作も少くない。今日から見ると、この巻を「僕の標本室」とするには不満はあっても、若い日の詩精神はかなり生きていると思う。

と述べている[1]が、12年後に出された全集ではこの評価を覆し、「わたしの歩みは間違っていた」と自己嫌悪を述べている。

作品解説[編集]

自伝的な作品
骨拾い
『十六歳の日記』で書かれた「盲いた祖父の病気」に続き、その火葬を扱っている。
日向
川端自身と思しき人物が、初恋の少女の話に交えて、自身の「無言のまま人を凝視する癖」について語っている。
初恋や恋愛に関する描写は弱き器火に行く彼女鋸と出産写真雨傘処女作の祟りでも伺える。
二十年
小学生の時の思い出が綴られている。
両親の死について語られている。
有難う
清水宏により映画化(『有りがたうさん』1936年)されている。
笑わぬ男
川端が原作脚本を手掛けたサイレント映画『狂った一頁』を題材にしている。

収録作品[編集]

  1. 骨拾い
  2. 男と女と荷車
  3. 日向
  4. 弱き器
  5. 火に行く彼女
  6. 鋸と出産
  7. バッタと鈴虫
  8. 時計
  9. 指環
  10. 金糸雀
  11. 写真
  12. 白い花
  13. 落日
  14. 死顔の出来事
  15. 屋根の下の貞操
  16. 人間の足音
  17. 二十年
  18. 硝子
  19. お信地蔵
  20. 滑り岩
  21. 有難う
  22. 万歳
  23. 胡・子盗人
  24. 玉台
  25. 夏の靴
  1. 雀の媒酌
  2. 子の立場
  3. 心中
  4. 竜宮の乙姫
  5. 処女の祈り
  6. 冬近し
  7. 霊柩車
  8. 一人の幸福
  9. 神います
  10. 帽子事件
  11. 合掌
  12. 屋上の金魚
  13. 金銭の道
  14. 朝の爪
  15. 恐しい愛
  16. 歴史
  17. 馬美人
  18. 百合
  19. 処女作の祟り
  20. 駿河の令嬢
  21. 神の骨
  22. 夜店の微笑
  23. 夫人の探偵
  24. 門松を焚く
  25. 盲目と少女
  26. 母国語の祈祷
  27. 故郷
  28. 母の眼
  29. 三等待合室
  30. 叩く子
  1. 秋の雷
  2. 家庭
  3. 時雨の駅
  4. 貧者の恋人
  5. 笑わぬ男
  6. 士族
  7. 質屋にて
  8. 黒牡丹
  9. 日本人アンナ
  10. 雪隠成仏
  11. 離婚の子
  12. 顕微鏡怪談
  13. 踊子旅風俗
  14. 望遠鏡と電話
  15. 鶏と踊子
  16. 化粧の天使達
  17. 白粉とガソリン
  18. 縛られた夫
  19. 舞踊靴
  20. 楽屋の乳房
  21. 眠り癖
  22. 雨傘
  23. 喧嘩
  24. 化粧
  25. 妹の着物
  26. 死面
  27. 舞踊会の夜
  28. 眉から
  29. 藤の花と苺
  30. 秋風の女房
  1. 愛犬安産
  2. ざくろ
  3. 十七歳
  4. わかめ
  5. 小切
  6. さと
  7. 五拾銭銀貨
  8. さざん花
  9. 紅梅
  10. 足袋
  11. かけす
  12. 夏と冬
  13. 笹舟
  14. 秋の雨
  15. 手紙
  16. 隣人
  17. 木の上
  18. 乗馬服
  19. かささぎ
  20. 不死
  21. 月下美人
  22. 白馬
  23. めずらしい人


脚注[編集]

  1. 改造社版『川端康成選集』第一巻 あとがきより

外部リンク[編集]