成り上がり英雄譚 屑星皇子の戦詩

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成り上がり英雄譚 屑星皇子の戦詩』(なりあがりえいゆうたん)は、ハヤケンによる日本ライトノベル作品。イラストはフ子

概要[編集]

2015年7月にHJ文庫から刊行されたライトノベル作品。

ストーリー[編集]

聖王歴528年、帝国の星神器を扱えずに屑星皇子(くずぼしおうじ)と蔑まれてきたラウル・ラシュメアは、エルラーンの王女ルシエ・エルラーンと政略結婚をすることになる。ここから、ラウルは帝国への反逆を始める。

登場人物[編集]

主要人物[編集]

ラウル・ラシュメア
本作の主人公。ウェーメリア帝国の第五皇子。帝国の星神器を扱えなかったことから、屑星皇子と周囲から蔑まれて母親にも殺されかけるなど見捨てられた存在となる。帝国では有能な人物だと思われて殺されたりしないように、道化を演じてきた。
ルシエとの政略結婚のために小国エルラーンに向かうのを機会に、帝国をよりよい方向に導いて周囲を見返すことを目指す。そして、手始めにエルラーンで自分の評判を徐々に高めめてルシエたちの信頼を得ていく。そして、アゼルキア州で暴虐の限りを尽くしていたボウテングをルシエと政略結婚する前から立てていた計画によって打ち取る。そして、アゼルキア州の長官に信頼のおけるバルカとすることに成功。これによって、アゼルキア州でのラウルの信頼も高まる。新たにエルラーンに設立された第二騎士団の団長となった時には、アゼルキア州で軍事費を浮かすために削減する兵士を引き取った。
ルシエ・エルラーン
政略結婚でラウルの婚約者となった。小国エルラーンのお姫様で槍の星神器《エレノーテ》の使い手。『精霊姫(せいれいき)』と国民から人気が高い。
最初はラウルとの政略結婚に反発して、決闘を申し込む。しかし、決闘でラウルの強さを知り、一緒に過ごしていってラウルの人柄も知ったことで、表向きだけでも結婚の相手と認める。ルカという名前でエングリッツにて幼いラウルと腕試しをしたことがある。当時はラウルから男の子だと思われていた。
ラウルを団長とする王立第二騎士団を設立されたことで、ルシエは王立第一騎士団の団長となる。バルゼイア連合の支援要請を受けて王立第二騎士団が遠征に行ったときには、大量の兵士のために必要な食料を確保するためにゲルトリッシュの土地一帯をフェンリルを使って開墾している。
マリーベル・バロウズ
愛称「マリー」。ラウルの従者にして幼馴染の少女。ゴルータの娘。屑星皇子と蔑まれてきたラウルを小さいころから世話を焼いてきた。ラウルを甘やかしており、膝枕などもする。巨乳。
リハルトと共にラウルの従者としてエルラーンに向かう。幼いころからラウルを好きだが、政略結婚に思うところはあっても受け入れている。それでも女性としての思慕はマリーからの一方通行なのではと辛く思っていたが、リハルトとラウルの会話を聞いて、ラウルもつらい気持ちを抱えつつもマリーのことを想っていたということを知って改めて覚悟が決まった。
弓騎兵としての腕前は高く、ラウルが団長をする第二騎士団では弓騎兵を教育して率いている。同時に二本の矢を弓につがえる二本射ちを10歳のころには身につけていた。
リハルト・オヴェルス
双剣の使い手で、帝国五神将《剣王》の息子。高い戦闘能力を持つ。熟女好きで、ラウルとは女性の価値観があわない。
マリーベルと共にラウルの従者としてエルラーンに向かう。不愛想だが、マリーとラウルの間でぎくしゃくしているときはフォローに回るなどもしている。
シバ・イーザ
白虎族の少年。援軍にやってきたラウルの水先案内人をする。バルゼイア連合では肩身の狭い立場にいた。
軍師としての才能は高い。コランに命を狙われるようになったジバの才能を見込んだラウルは、ワウルフに頼んで自分の部下になれるように画策。ラウルの配下となった。

ウェーメリア帝国[編集]

皇族[編集]

ミレーニア
ラウルの姪。先代皇帝ラヴェールの第一皇子で帝国の現皇帝だが、お飾りとされていて実権はない。
亡き父ロファールの教育方針もあり、屑星皇子とされるラウルのことも馬鹿にしない。むしろその行動を内心では全肯定している。
ジエーロに武器の稽古をつけてもらっている。
ボウテング
先代皇帝ラヴェールの第四皇子。アゼルキア州の長官だが、民衆を圧迫する統治を行う。ラウルのことも散々虐げていたため、ラウルは敵対しても彼には一片の慈悲をかけなかった。
ラウル・ラシュメアを使ってエルラーンに戦争を仕掛けて勝利することで自分の地位をあげようとしたが人格だけでなく能力も最底辺であるため、そのラウルの知略に容易く嵌って「本国に無断で、それも皇族が婿入りした国に戦争を仕掛けた」逆賊となった挙句、苦し紛れに屑星皇子とラウルを罵倒した直後に、そのラウルから「人間の屑星」と言い返された。
戦争は士気・戦力共にエルラーン側に大きく水を空けられた末に大敗。最後はラウルからあらん限りの恨みと嘲笑と侮蔑を込めた別れの言葉をリハルト・オヴェルス経由で送られ、更には命乞いも聞き入れられることなくリハルトによって殺害された。
レイノルズ
宰相兼ウェーメリア州の長官。ラウルの異母兄弟で先代皇帝ラヴェールの第二皇子。
アイヴァーと並ぶ帝国の権力者であり、アイヴァーと権力争いをしている。星神教の原理主義者で、異教徒の殲滅を目指している。
ラウル・ラシュメアをただの愚か者ではないと見抜いており、ボウテングを使って力を推しはかったが失敗。そして、バルカ・ライゼルを州長官にする目的も見抜いたうえで泳がす。
アイヴァー
近衛軍元帥。ラウルの異母兄弟で先代皇帝ラヴェールの第三皇子。数々の武勇をあげており、『帝国の獅子』とも呼ばれている。
レイノルズと並ぶ帝国の権力者であり、レイノルズと権力争いをしている。軍事の才能にあふれているが、戦いの火種をまくような行動をする。
黄金皇帝ラヴェール
ウェーメリア帝国の前皇帝。戦が強かっただけでなく、封建制の元に腐敗していた貴族を抑え込んで中央集権制を敢行。貴族の重税を見なして均一の税金にしたり、身分に関係なく無料で学べる学問所(アカデミア)を開設して有用なものを集めたりした。また、国教の星神教を抑え込んで改宗を強制せずに、人心を集めて圧政に苦しむ国からは解放軍とまでみなされ、大陸の三分の二を支配するまでになった。ラウルとは疎遠で、ナシュアが心を病む原因も作ったため人間性には疑問の余地が残る人物だったが、ラウルも功績自体は偉大であることを認めている。
ロファール・ラシュメア
先代皇帝ラヴェールの第一皇子。五年前に『ニルバスの悲劇』で亡くなる。『黄金を継ぐ者』と称されて、ラヴェール以上に優秀ともいわれて跡をつぐものだと誰もが思っていた。ラウルにも優しくしていた。
ロファールが亡くなったことでラヴェールは病に陥り、帝国は志を見失う。
ナシュア
ラウルの実母。屑星を産んだ皇妃と悪評され、ラヴェールからも見放されたことで心を病んでしまい、ラウルを殺害しようとしたときもあった。現在は亡くなっている。

五神将[編集]

大神将ゴルータ・バロウズ
マリーの父親。五神将の長。弓の名手。
バルカ・ライゼル
アゼルキア州副長官。かつては帝国五神将《紅竜将(こうりゅうしょう)》ともされていた。竜人種(ドラゴニユート)と呼ばれる種族。
ラウルによってボウテング亡きあとに州長官となった。武勇一辺倒の人物ではなく、冷静な判断力と情け深い心を持つ。
ゼファト
帝国五神将《剣王》。
リュミエラ・ミスト
占星軍師。当代一の軍略家とも呼ばれるが、現在は前線を退いて帝国史料室の室長という閑職についている。
仕事嫌いだが、やる気になればいかんなく能力を発揮する。
ジエーロ・アーヴァイン
五神将の《剣聖》。ゼファトと共に大陸最強の呼び声が高い。ラウルの剣の師匠。

その他[編集]

サイオン
平民出身で星神教が盛んでないセシルト州であり、ラウルにも偏見をもたずに接する。ラウルの帝国での数少ない友人。
洞察力に優れており、ラウルは参謀役として頼りにしている。ラウルがエルラーンに行ってからミレーニアの相談役となる。その後、ミレーニアの教育係に昇格する。
シルヴァン・グリート
バルカ・ライゼル配下の重装歩兵団である通称『紅竜兵団』の元一員。バルカの右腕だった。帝国貴族グリート家の出身。カーライルという偽名を使って、バルカ・ライゼルの援助を受けてアゼルキア州の自警団を組織して山賊などから村を守っていた。
当初はラウルを災厄をもたらすと殺害しようとしたが、ラウルの構想を聞いてラウルに協力する。ボウテング亡きあとに州長官に就任したバルカの補佐官となった。
イザベル・バロウズ
ゴルータ・バロウズの娘でマリーベル・バロウズの姉。ウェーメリア州の副長官兼皇宮警備兵の部隊長。レイノルズの右腕。笑顔を見せる相手は少なく、鉄の女とも呼ばれる。
マリーベルに皇宮警護という職を与えて収入を得られるように取り計らっていた。マリーベルがエルラーンにラウルと一緒に行くことに反対していたが、頑固な妹に共感してしまうところもあって説得を諦める。
リュカ・エスカ
リーゼル・エスカの息子。ミレーニアの初恋の相手となる。
リーゼル・エスカ
セシルト州長官。帝国の中でも良心的な長官。
リネカ
星神教会の総本山があるエレイラ州の長官。審問官を追い返しているアゼルキア州の長官のバルカを変えて欲しいとレイノルズに迫る。
アクベース
アゼルキア教区の司祭。リネカと共に審問官を追い返しているアゼルキア州の長官のバルカを変えて欲しいとレイノルズに迫る。

エルラーン[編集]

ユーリエ
エルラーンの女王。ルシエのことを厳しくも愛情をもって育てる。
マウロ
王立騎士団副団長。
ゾルテ
ガルレの山賊の副頭。エミューレの村を襲うも、ラウルたちに撃退されて、自身はリハルトに斬られる。

バルゼイア連合[編集]

ワウルフ勢力[編集]

ワウルフ
連合の盟主。獣人種の長。勇猛さから獣王とも呼ばれている。獣人騎兵団(じゅうじんきへいだん)と呼ばれる大陸有数の精兵を率いる。
先代盟主を倒して盟主となっている。
ベアド
イルハ砦の守将。クーガの軍の強襲によって戦死する。最後まで忠節を貫いた。
コラン
狐の耳と尾を持つワウルフの参謀役の男。
フワル・リーヴァ
ワウルフ直属の衛士(えじ)。ギーリとの連携攻撃が得意。ラウルの力を試すためにギーリと共に戦うも敗れる。
ギーリ・リーヴァ
ワウルフ直属の衛士。フワルとの連携攻撃が得意。ラウルの力を試すためにフワルと共に戦うも敗れる。

トラファルド勢力[編集]

トラファルド
ワウルフの先代盟主の忘れ形見。鳥人種のなわばりで潜伏しており、鳥人種と獣人種の一部と共にワウルフに反乱を起こした首謀者。
ワウルフは討つとしているが、敵であってもむやみに人殺しをせずに自分が盟主となった後の人材を確保しようとしている。26歳ながら大きな器の持ち主。武芸にも秀でている。
マニニと毎日夜伽している。
クーガ・ロマ
トラファルドの腹心。先代盟主が討たれた後にトラファルドを連れて鳥人種の住むクワアル高地に行って護りながら育て上げた。
トラファルド軍の指揮官としてイルハ砦を強襲して落とす。だが、ラウルによるからめ手による奇襲を受けて捕虜となる。
マニニ
鳥人種の族長の少女。華奢な体つきだが、出ているところは出ている。背中に純白で大きい翼を生やす。先祖返りで空を飛ぶことができる。
トラファルドの恋人であり、毎日夜伽を務めている。
バラーク
クーガの部下。ティナが収容されていた棟の守備隊長をしていた。ラウルに倒される。

ジュターユ王国[編集]

ティナ・ホロウ・ジュターユ
ヴィルフォードの娘。ジュターユ傭兵騎士団の一員として各地を飛び回っている。
イルハ砦でクーガの軍によって捕虜となる。ラウルたちの軍が攻め込んだ機会を狙って逃亡。ラウルに助けられる。その後、シバの身請けをしたラウルを見て運命の人と確信。自分の初めてをささげようとラウルに夜這いしようとする。だが、マリーによって失敗する。
ヴィルフォード・ホロウ・ジュターユ
評価の高いジュターユ傭兵騎士団の団長。弟はジュターユ王国の王。
イルハ砦でラウルと連携して救援に向かう。

ラトゥータ教国[編集]

コーデリア・フラクスル
トラファルドの下に征異(せいい)官将として派遣されてきた少女。見た目は幼いが20歳。
何もせずにただ無為に過ごしたいと願っている。フラクスル家に生まれた地位と財産に甘えて可能な限り、何もしてこなかった。『右』、『左』とそれぞれ刺青をされている大男を連れていて、身の周りの世話をさせている。自分で歩く気はないため、手押し車で運んでもらっている。人の名前や屋敷までの道も覚えておらず、右と左に記憶させている。軍事的才覚は高く、バルゼイアに行けと命じられて仕方なくトラファルドに協力することになった。

用語一覧[編集]

ウェーメリア帝国
ユミール大陸の三分の二を支配する帝国。中央四州「ウェーメリア州」、「レスフィ州」、「エレイラ州」、「ノルデール州」、外縁六州「ノートス州」、「セシルト州」、「トラード州」、「アゼルキア州」、「リリマ州」、「ミィルウォク州」に分かれる。
黄金皇帝ラヴェールは民衆にも支持されて、民衆にとって暮らしやすい国だった。しかし、ミレーニアが皇帝となってからはレイノルズとアイヴァーの権力争いなどから、民衆は重い税金や異教徒の迫害・星神教への強制改宗などによって苦しんでいる。
星神教
ウェーメリア帝国の国教。
エルラーン
精霊信仰(せいれいしんこう)をもつ小国。王都はアウレア。ラウルが婿入りした。
ガルレの山賊
アゼルキア州の山に住む山賊。ボウテングに奪った金の半分を収めることで見逃してもらっている。
ゲルトリッシュ砦(とりで)
別名「魔狼(まろう)の砦」。エルラーンの国防の要で堅固。ウェーメリア帝国アゼルキア州との境界にある。
バルゼイア連合
竜の頭蓋とも呼称されるユミール大陸の竜の下顎の位置にある勢力。ウェーメリア帝国トラード州に接する。複数の異人種による共同体。人の体に獣や尾を持つ獣人種(ベルセルク)、鳥の羽を背に持つ人である鳥人種(レイヴン)、耳や背に水生生物の尾びれ等を持つ魚人種に分かれている。
ウェーメリア帝国の外縁六州のトラード州に含まれるクワアル高地の北半分は元領地だった。
星神器(セレスティアル)メイクラウドを奉じている。バルゼイア連合の大部分を占めるラウダ大平原では自然と雨が降ることはほとんどないため、メイクラウドを持つ盟主が雨を降らせることが重要となる。
魚人種
主にバルゼイア連合の中でもエルラーン海岸から海を隔てたファルファラ島やラトゥータ教国の境の内海に位置するセルファラ島などの離島に住んでいる。争い事は好まず、商売人として生きる。船を使った海洋貿易をする。独自の兵力はほとんどなく、政治的にはバルゼイア連合の盟主に従属する。
鳥人種(レイヴン)
主にバルゼイア連合のクワアル高地に住む。武器を取って戦うことは不得手。混血や生活様式の変化によって飛行できる者は少なくなっている。
ラトゥータ教国
ウェーメリア帝国の外縁六州のセシルト州は元々はラトゥータ属国のセシルト大公国だった。
ジュターユ王国
ユミール大陸の北方にある小国。年中雪が降って土地が豊かでないため、国の主力産業は傭兵。
レディオーラ大陸
ユミール大陸の東方にある大陸。

単行本[編集]

巻数 初版発行日 ISBN その他 サブタイトル
1 2015年7月1日(2015年7月1日発売) ISBN 978-4-7986-1046-7
  • プロローグ
  • 第一章 政略結婚
  • 第二章 精霊姫の王国
  • 第三章 虎の威
  • 第四章 精霊祭の日
  • 第五章 カナフの森の戦い
  • 第六章 黄金の再臨
  • エピローグ
  • あとがき
2 2015年11月1日(2015年10月31日発売) ISBN 978-4-7986-1108-2
  • 前回のあらすじ
  • 第一章 四虎競食
  • 第二章 バルゼイアの獣王
  • 第三章 荷車城塞
  • 第四章 停戦交渉
  • 第五章 蠢動
  • 第六章 腐った枝
  • 第七章 青春の悩み
  • 第八章 決戦の前
  • あとがき

脚注[編集]


関連項目[編集]

外部リンク[編集]