愛知県豊田市2人殺害事件
愛知県豊田市2人殺害事件(あいちけんとよたしふたりさつがいじけん)は、1995年に愛知県豊田市で二人が殺害された事件。
概要[編集]
1995年5月3日、豊田市越戸町の神社「天満宮」の境内で、お参りに来ていたB(当時66)とBの孫であるC(当時1)が包丁で刺殺される事件が発生。Aが、現行犯逮捕される。Aは、容疑は認めていたが意味不明な供述が多く、名古屋地検岡崎支部は4カ月間の鑑定留置をして、刑事責任能力があると判断。殺人罪で起訴した。
裁判経過[編集]
Aは起訴されたものの、弁護側がAには訴訟能力がないと主張。公判中の1997年3月に名古屋地裁岡崎支部は、Aの訴訟能力に問題があるとして公判が停止。公判停止までの間、7回審理が行われていたものの、審理らしい審理は行われていなかった。その後は、中止が長引き、裁判が長期に当たって中断することになった。
2014年3月20日、17年ぶりとなる公判を開くことが決定[1]。弁護側は控訴棄却を、検察側は重大事件で遺族の処罰感情が強いことから公判継続を求めていた。また、新たな治療法が発見される可能性があるなどとも主張した。
名古屋地裁岡崎支部(国井恒志)裁判長は、裁判を打ち切る控訴棄却の判決を言い渡した[2]。判決では、「被告に訴訟能力はなく、回復の見込みもない」と述べた。判決理由として、①複数の医師による精神鑑定で統合失調症は悪化している②2013年12月に行った裁判官らの面接で、人定質問すら成立しなかった、という2点をあげて、検察側が主張していた新薬や画期的な治療法で回復が見込めないとした[3]。検察は、遺族の強い処罰感情も公判継続の根拠としていたが、「裁判所の責務は公判継続をできないことを明確化することで、そのことが遺族に対する誠実な対応になる」とした。ただし、事件当時に責任能力がなかったかどうかは分からないとして、無罪とはしなかった。なお、弁護側が裁判に出廷できる状況ではないとしてAは出廷していない。検察の起訴した重大事件を裁判所が公訴棄却とするのは異例。
2015年11月16日、名古屋高裁(石山容示裁判長)は、1審判決を破棄して審理を名古屋地裁へ差し戻した[4]。 控訴審で、検察側はAに記憶障害を伴う水頭症の疑いがあり、治療によって回復する見込みがあるという医師の意見書を提出。弁護側は「仮に水頭症でもAは手術に同意する能力がない」と主張していた。この決定に対して弁護側は上告。
2016年9月30日までに最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は双方の意見を聞く弁論を2016年11月28日に開くことを決めた[5]。2016年12月19日、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は、裁判を打ち切る判決を言い渡した[6]。最高裁は「被告に訴訟能力が回復する見込みがなければ、裁判所は裁判を打ち切ることができる」として、被告の回復が見込めないときに検察が起訴を取り消さなくても裁判を打ち切ることができるという初判断を示した[7]。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ↑ 2014年3月11日産経ニュース「17年ぶりに審理再開へ 2人殺害事件の公判」
- ↑ 2014年3月21日、日本経済新聞「17年停止の裁判「打ち切り」判決、愛知2人殺害 」
- ↑ 2014年3月20日、中日新聞「17年ぶり審理で公訴棄却 名地裁支部、豊田2人刺殺」
- ↑ 2015年11月16日、中日新聞「公訴棄却を破棄、差し戻し 祖父孫殺害で名古屋高裁」
- ↑ 2016年10月1日、毎日新聞「愛知・豊田の2人殺害.訴訟継続を見直しか 心神喪失被告、最高裁弁論へ」
- ↑ 2016年12月20日、日本経済新聞「愛知2人刺殺の裁判打ち切り 被告が精神疾患、最高裁」
- ↑ 2016年12月19日、毎日新聞「愛知・2人殺害.最高裁「裁判所は裁判打ち切りできる」」