妖蛆の王

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妖蛆の王』(ようそのおう、原題:: Lord of the Worms)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる小説。クトゥルフ神話の1つで、1983年の『ウィアードブック17号』に掲載された。

ラムレイが創造したヒーロー、タイタス・クロウを主役としたオカルトアクションシリーズの一編にあたり、作中時1946年・タイタス29歳と、タイタスの若いころの活躍を描いたエピソードである。短編集『The Compleat Crow』などに収録され、短編集ごと日本語翻訳されている。

ラムレイが他の中短編の合間に書いたものであり、編集者の要求に応じて急いで完成させたもの。ラムレイ自身、タイタスの中短編から一編を選ぶならば本作を挙げると語っており、またラヴクラフト作品とは全く主人公像が異なることが現れており「決して恐怖に屈したり逃げ出したりすることがない」と評している。[1]

朝松健は、初期タイタス作品よりも格段にクオリティが上がっていると評しており、よくある作品から、ラムレイ自身の創意にあふれた作品になったという旨の解説をしている[2]

タイタス後年の作品で登場する文献は、この戦いでの戦利品と目される。執筆されたのは本作の方が後なので、アイテムの入手秘話という位置づけである。特に文献「妖蛆の秘密」には、19世紀英訳版の存在が追加され、以後のクトゥルフ神話資料にも導入されることとなる。

あらすじ[編集]

タイタスは陸軍省で暗号解読やオカルト関係の特殊な仕事に従事していたが、終戦に伴い失職する。翌1946年1月、タイタスはジュリアン・カーステアズの秘書として、彼の屋敷で膨大な蔵書の整理をする仕事を得る。

数秘学を学んだタイタスは、面接で用心して生年月日を偽る。しかし仕事を進めるにつれ、タイタスには薬物を盛られたり催眠術をかけられている可能性が浮上し、雇用主に警戒を抱くようになり、友人らの協力を得て対策を打つ。また屋敷内では、奇妙な虫を見かける。

さらに郵便受けの手紙を盗み見たことで、カーステアズがタイタスの戸籍を密かに調べていたことが判明する。役所からの調査報告には「カーステアズが遺産継承者として、タイタス・クロウという人物を探していること」が書かれ、続いて「当該年月日生まれの同姓同名の該当者なし。別年月日なら該当者1名」と報告されていた。タイタスはカーステアズに、役所を装った偽電話をかけて「(偽生年月日の)タイタス・クロウが実在する」と虚偽報告をする。

聖燭祭前夜にあたる2月1日、カーステアズは弟子たちと共に転生の儀式を始め、タイタスは催眠術にかかっているふりをしながら彼らのもとに赴く。土壇場で真相を暴露されたカーステアズは驚愕し、転生を強行しようとするも、妖蛆たちを従わせることはできず、自滅する。タイタスにとって、この戦いは、以降の人生を方向づける決定打となる。

主な登場人物・用語[編集]

登場人物[編集]

タイタス・クロウ
主人公。本作時点ではまだ若い。カーステアズの秘書として雇われる。
1916年12月2日生まれだが、生年月日を偽っている。オカルト的な意味合いでは、名前の数字は9と6、偽の生年月日の数字は999と666で、カーステアズに狙われる。真の生年月日の数字は22。
ジュリアン・カーステアズ
<古墳館>の主である老オカルティスト。<現代の大魔術師><妖蛆の王>と呼ばれる人物。12人の弟子がいる。
その正体は、1602年にガリラヤ湖畔コラズィンで生まれた反キリストであり、体内に宿した虫たちの術で生きながらえている妖術師。現在は6代目の肉体だが寿命が迫っており、若いタイタスの肉体に転生を企てる。
個人としては破格の蔵書を有し、「妖蛆の秘密」「アル・アジフ」などを持っている。
テイラー・エインズワース
化学者。タイタスの学友であり、オカルト・錬金術に造詣ある異端の化学者。カーステアズがタイタスに差し入れるワインの成分を調べる。
ハリー・タウンリー
医師。タイタスの主治医。催眠療法・同毒療法・鍼治療などを信じる奇人医師。タイタスを診療し、高度な催眠術下にあると診断する。
セジウィック
大英博物館の学芸員。戦争時代から懇意のタイタスに「妖蛆の秘密」の閲覧を許可する。

妖蛆の秘密関連[編集]

妖蛆の秘密
大英博物館には、保存状態の悪いラテン語版と、古ドイツ語版と、一部のみ英訳版がある。カーステアズの書庫には、チャールズ・レゲットの英訳版があり、カーステアズは「サラセン人の宗教儀式」の章のみ切り取って別保存している。
ルードヴィヒ・プリン
「妖蛆の秘密」の原著者。中東の妖術に造詣が深かった。妖蛆を用いた転生術についても記載している。
チャールズ・レゲット
原本から1812年に英訳した人物。
僧X
「サラセン人の宗教儀式」の章のみを英訳した人物。

収録[編集]

  • 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』夏来健次

関連作品[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』【妖蛆の王】38ページ。
  2. 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』346ページ。