上農正剛
上農 正剛(うえのう せいごう、1954年[1] - )は、教育者、哲学者[2]。江副学園言語教育研究所ろう教育部門室長。元・九州保健福祉大学社会福祉学部・大学院社会福祉学研究科教授[3]。
略歴[編集]
熊本市生まれ。早稲田大学文学部卒業[1]。聴者[2]。1982年~1999年東京で難聴児学習個人指導教室を運営[3]。主に一般校に通う難聴児の教科学習と言語の個人指導に17年間携わる[1][4]。この間、聴覚障害児を持つ母親を対象に「難聴児学習問題研究会」を主宰[1]。トータルコミュニケーション研究会(2003年より「ろう・難聴教育研究会」)運営委員、全国早期支援研究協議会運営委員[5]、「ろう教育を考える全国討論集会」共同研究者を務め、障害認識論とリテラシー論に関する講演も多数行っている[1]。
1999年より九州保健福祉大学保健科学部言語聴覚療法学科専任講師[1]、2004年より同社会福祉学部専任講師[6]、2007年より同准教授[7]。2009年に「聴覚障害児医療の再検討」によって、立命館大学先端総合学術研究科より博士(学術)を授与される[8]。2014年~2020年九州保健福祉大学社会福祉学部子ども保育福祉学科教授[7][3]。2020年江副学園言語教育研究所ろう教育部門室長[3]。
人物[編集]
斉藤道雄の『手話を生きる』によれば、聴覚障害児の日本語指導において優れた実績を挙げ、また日本の聴覚障害児教育を正面から批判してきた数少ない専門家の一人だとされる[4]。
2003年に『たったひとりのクレオール』を刊行。聴覚口話法・インテグレーションのもとで、多くの聴覚障害児が十分な日本語の読み書き能力を獲得することができず、過酷な状況を経験していることを指摘している。聴覚口話法における言語観・障害観を批判し、「障害受容」から「障害認識」への転換を主張している。バイリンガルろう教育を基本的に支持している[9]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『障害認識をめぐるお母さんとの対話――聴覚障害児の理解のために第23集』(全国心身障害児福祉財団、1996年)
- 『たったひとりのクレオール――聴覚障害児教育における言語論と障害認識』(ポット出版、2003年、第2版2005年)
- 『聞こえない世界と聞こえる世界――差異と平等』(愛媛県人権啓発センター、2008年)
分担執筆[編集]
- 現代思想編集部編『ろう文化』青土社、2000年
- 日本手話学会第30回大会記念報告集委員会編『日本手話学会第30回大会記念報告集』(エイコー、2006年)
- 田中望、春原憲一郎、山田泉編著『生きる力をつちかう言葉――言語的マイノリティーが〈声を持つ〉ために』(大修館書店、2012年)
出典[編集]
- ↑ a b c d e f たったひとりのクレオール―聴覚障害児教育における言語論と障害認識 紀伊國屋書店
- ↑ a b 斉藤道雄『手話を生きる――少数言語が多数派日本語と出会うところで』みすず書房、2016年2月、250頁
- ↑ a b c d 江副学園 言語教育研究所ろう教育部門 個人学習支援コース 江副学園
- ↑ a b 斉藤道雄『手話を生きる――少数言語が多数派日本語と出会うところで』みすず書房、2016年2月、247頁
- ↑ 所属学協会 九州保健福祉大学
- ↑ ■人権講演会「きこえない世界ときこえる世界」 京都産業大学
- ↑ a b 職歴 九州保健福祉大学
- ↑ 修了生の活躍 立命館大学先端総合学術研究科
- ↑ クァク・ジョンナン「日本手話によるろう教育の展開 : 言語権からみたバイリンガルろう教育の内と外」立命館大学博士学位論文、2016年9月
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 研究者情報 九州保健福祉大学
- 上農正剛 KAKEN
- 上農正剛 arsvi.com
- 手話-言語へのもう一つの入り口 九州保健福祉大学
- 『たったひとりのクレオール』という1冊 酒井邦嘉 - 東京大学 ポット出版