メダマイカリムシ
メダマイカリムシ 学名 Phrixocephalus triangulusは、カイアシ亜綱、管口目、ヒジキムシ科に属する寄生性の甲殻類(長澤&上野 2014)。また、メダマイカリムシ属Phrixocephalusに属する種の総称としても用いられることがある。魚類の眼球に、身体の一部を埋没させて寄生する。
概要[編集]
カイアシ亜綱に属する甲殻類は一般にカイアシ類と呼ばれ、海洋性のプランクトンとしてもっともよく見られる種類のひとつである。また、淡水においてもケンミジンコ類が生息することが知られており、初等、中等教育においてとりあげられることも多い。こうした自由生活性の種は多く知られる一方、カイアシ類には寄生性の種も存在する。たとえばウオジラミ科、ナガクビムシ科、そしてメダマイカリムシ属を含むヒジキムシ科において、魚類へ寄生するカイアシ類が存在することが知られている(長澤&上野 2014)。なかでもメダマイカリムシ属のものは目玉に寄生し体サイズが比較的大きく、またマダイやアマダイ、ヒラメなど水産的価値の高い魚につくので、しばしば問題になることがある。日本産魚類からはメダマイカリムシ属が10数種知られている(長澤&上野 2014)。メダマイカリムシの和名は種 P. triangulusをさし、オキトラギスというトラギスの仲間につく。
形態[編集]
体は大きく分けて頭胸部、頸部、および胴部に分けられる(齋藤&山田 2016)。頭胸部の先端には多数に枝分かれした頭胸部突起といわれるものをもつ。単に引っ張るとこの頭胸部突起は目玉の中に残ってしまいやすいが、茹でると取り出しやすくなるようだ[1]。バネのような形をした卵嚢を胴部の後ろに2つ持っている。
生態[編集]
魚の上で見られるのはすべてメス。頭胸部、および頸部の前半を魚の目玉の中に埋めて、魚に寄生して暮らす。頭胸部突起を水晶体奥部まで貫通させ、広げて体液を吸って生活している(Kabata&Forrester 1974)。宿主は種類によって異なり、マダイメダマイカリムシはマダイ、クビナガメダマイカリムシはネズミゴチ、メデューサノミダレガミはアマダイ類など(長澤&上野 2014)。
生活史[編集]
生活史はイカリムシ科全体でほぼ共通しており(Ismail et al. 2013),(Perkins 1983),(Schram 1979)、メダマイカリムシ属においても同様であると考えられる。イカリムシ科の生活史の概要について、(Ismail et al. 2013)をもとに簡単に解説する。まずはコペポディド幼生として孵化し、宿主の体表上に付着してカリムス期に入る。3~4期のカリムス期を経た後にいくらかカイアシらしい形で性成熟し、交尾を行う。交尾後、オスは離脱しすぐに死亡するものと考えられている。交尾の終わったメスは変態を行い、一見カイアシとは思えないおなじみの形になって魚に付着、生活を始める。
味[編集]
信じがたいが、これも単体で味わってみた人がいる。よく血を吸っているからか、"血液と海藻を足したような生臭さ"がありおいしくないらしい[2]。
脚注[編集]
- ↑ “メダマイカリムシがついてても気にする必要はない”. 2022年6月25日確認。
- ↑ “メダマイカリムシがついてても気にする必要はない”. 2022年6月25日確認。
参考文献[編集]
- Ismail, Norshida; Ohtsuka, Susumu; Maran, Balu Alagar Venmathi; Tatsumi, Satoshi; Zaleha, Kassim; Yamashita, Hirofumi (2013), “Complete life cycle of a pennellid Peniculus minuticaudae Shiino, 1956 (Copepoda: Siphonostomatoida) infecting cultured threadsail filefish, Stephanolepis cirrhifer”, Parasite 20: 42
- Kabata, Z; Forrester, CR (1974), “Atheresthes stomias (Jordan and Gilbert 1880) (Pisces: Pleuronectiformes) and its Eye Parasite Phrinocephalus cincinnatus Wilson 1908 (Copepoda: Lernaeoceridae) in Canadian Pacific Waters”, Journal of the Fisheries Research Board of Canada 31: 1589-1595
- 長澤, 和也; 上野, 大輔 (2014), “日本産魚類・鯨類に寄生するヒジキムシ科(新称) Pennellidaeカイアシ類の目録(1916‒2014年)”, 生物圏科学 53: 43-71
- Perkins, Penny Sue (1983), “The Life History of Cardiodectes medusaeus (Wilson), a Copepod Parasite of Lanternfishes (Myctophidae)”, Journal of Crustacean Biology 3 (1): 70-87
- 齋藤, 暢宏; 山田, 和彦 (2016), “ヤリヌメリRepomucenus huguenini (Bleeker, 1859)(スズキ目・ネズッポ科)から得られたカサガタメダマイカリムシPhrixocephalus umbellatus Shiino, 1956(カイアシ亜綱・管口目)”, 神奈川自然誌資料 37: 19-20
- Schram, Thomas A (1979), “The life history of the eye-maggot of the sprat, Lernaeenicus sprattae (Sowerby) (Copepoda, Lernaeoceridae)”, Sarsia 64 (4): 279-316