パイン・デューンズの顔
『パイン・デューンズの顔』(パイン・デューンズのかお、原題:英: The Faces at Pine Dunes)は、イギリスのホラー小説家ラムジー・キャンベルが1980年に発表した短編小説。クトゥルフ神話の一つ。
この作品に登場する怪物は「旧支配者の養い子」the fosterlings of the GreatOld Ones、「オールド・ワンの養い子」Fosterlings of the Old Onesと説明されている[1][2]。
あらすじ[編集]
マイケルは物心ついたころからずっと、両親と共にトレーラーハウスで放浪生活をしていた。英国北西部ランカシャーのパイン・デューンズの土地に来てから、両親の夜歩きが激しくなる。父はこの地に定住の意思を固めたようだが、母はよその土地に生きたがり、意見が分かれる。母は熱心に父を説得するが、父は聞き入れない。
マイケルは村のクラブにバーテンとして就職し、LSDトリップ常習者のジェーンという娘と仲を深める。やがてマイケルは、自分たちがこれまで遍歴した土地が全て魔女団の拠点として有名な場所であったことを知り、困惑する。またマイケルの夢には巨大な顔が現れ、記憶を刺激される。両親にジェーンを紹介した直後、マイケルはある風車を見たことで、自分がパイン・デューンズの生まれであることを思い出す。
マイケルは、両親は妖術使いなのかとの疑惑を深めていく。調べ物をするために図書館に行く。さらに両親の秘密のノートを見つけるが、幾人もの人の手で書き継がれたものであり、母の筆跡の箇所さえも意味がわからない[注 1][3]。「至福千年の懐胎」「旧支配者の養い子」「代々の再生をくり返すたびに霊魂の化身に近づく」「あらゆる次元に心を開くとき、霊魂の化身が現れ、その化身の上ですべての心がひとつになる」わけがわからない。
母はマイケルに、可能ならばジェーンを連れて、パイン・デューンズを離れるよう言う。翌日、車が盗まれて近所で焼き捨てられていたが、マイケルは父がマイケルたちを逃がさないためにやったのであろうことを確信する。さらに父は母に薬を盛っていると察する。 マイケルはジェーンと共に、マイケルの父と話し合うために向かう。しかし道中、森へと分け入り、広場の穴倉に蠢く不気味な巨大発光体を目撃する。マイケルは、それが先祖の姿に近づいた両親なのだと理解する。マイケルへと世代交代を果たした両親は、祖たる旧支配者に吸収されて消える。
気を失ったジェーンに、マイケルはLSDで幻覚を見たのだと説明して丸め込む。父の残した手紙には、両親が姿を消した理由が記されていたが、マイケルはそれが世間への嘘の説明にすぎないことを知っている。祖父母も両親も、パイン・デューンズで姿を消した。彼らの血を引く自分も、将来ジェーンと共に、この地へと戻って来るだろう。
主な登場人物・用語[編集]
- マイケル - 主人公。パイン・デューンズでクラブのバーテンに就職した。20歳。
- 父 - ここ数年でめっきり肥満が進行している。
- 母 - 小柄。パイン・デューンズに怯えて外に行きたいと言う。
- ジェーン - 村のバーの常連客。マイケルのガールフレンド。LSDを常用している。
- バーテン - 村のバーの店員。マイケルの職場の先輩。
- 「旧支配者」 - はるかな太古から封印状態にあり、力を蓄え復活すべく、古代人の胎内に化身体を宿らせた。マイケルの夢に「顔」として現れる。