ド・マリニーの掛け時計

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ド・マリニーの掛け時計』(ド・マリニーのかけどけい、原題:: De Marigny's Clock)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つで、1971年に発表された。

東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて「ラムレイの神話作品のメイン・キャラクターであるタイタス・クロウ物語の一編。『銀の鍵の門を越えて』に登場したド・マリニー所有の時計にまつわる後日譚」[1]と解説している。このアイテムは長編のタイタス・クロウサーガで真価を発揮することになる。

ラムレイ自身は、邦訳版用に提供した序文にて、ラヴクラフトの『怪老人』を名編と評し、さらに本作品との類似を挙げた上で、執筆当時は全く気付いていなかったが無意識に影響された可能性を言及している[2]

あらすじ[編集]

タイタスの住むブロウン館に、2人組の強盗が押し入る。強盗は隠し財産があるに違いないと信じ込み、タイタスを脅して邸内の捜索を始める。本棚が荒らされるのを、タイタスが怒りを堪えて耐えていたそのとき、賊は大時計に目をつける。その時計は、タイタスが入手してから10年間謎を解き明かせないでいるという、曰く付きの代物であった。

盗賊ジョーは中に財宝が隠されていると思い、タイタスに開けるよう命令するが、タイタスは無理と回答する。業を煮やしたジョーは無理やりこじ開けようとし、さらには類稀な金庫破りの才能が発揮され、タイタスが開けられなかった時計の蓋が開いてしまう。ジョーは時計に突っ込んだ手を呑まれかけて悲鳴を上げ、相棒ペイスティーは救出を図るも、クロウは危険性を察知して退く。ジョーの呑み込まれた部分は溶解しており、ペイスティーもまた呑み込まれた後に、大時計の蓋が閉じる。

図らずともタイタスは、大時計が航時空機<タイムスペースマシン>だったという説が裏付けられたことを知る。

主な登場人物[編集]

  • タイタス・クロウ - ブロウン館に住む神秘家。人皮装丁の汗をかく本「水神クタアト」などを所有する。
  • 盗賊ジョー - 顔に傷のある悪漢。銃を持つ。金庫破りの達人。
  • 盗賊ペイスティー - 青白い顔の男。ナイフを持つ。自覚のない霊能者で、理由わからないままブロウン館の雰囲気に何かを気取る。
  • エティエンヌ-ローラン・ド・マリニー - 過去の人物。掛け時計の前所有者。時計の蓋を開けることができたらしい。
  • ウォード・フィリップス - 過去の人物。彼とド・マリニーは、大時計をタイムマシンであると書き残している。
  • スワミ・チャンドラプトラ - 過去の人物。1932年10月に、時計の中に入り姿を消す。
  • ゴードン・ウォームズリー - ヨークシャーのグール大学教授。故人2人と同様に、大時計をタイムマシンであると書き残している。『盗まれた眼』にも別の肩書で登場する。

関連作品[編集]

関連項目[編集]

収録[編集]

  • 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』夏来健次

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』381-382ページ
  2. 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』【ド・マリニーの掛け時計】250ページ。