ケトリング

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ケトリング(英語:Kettling)とは、警察が大規模なデモ抗議を鎮圧するために用いる戦術の一つ。包囲囲い込みなどと呼ばれることもある。いわゆる挟み撃ちである。

鎮圧する対象を逃げ道のない通りへと追い込み、ライオットシールドなどを装備した警察官が挟み撃ちする。鎮圧される側は、警察の管理する出口を通って逃げない限りは、移動を阻止され、やがて拘束されてしまう。

この戦術には、過激なデモや抗議を高確率で鎮圧できる長所と、通りすがりの人や傍観者を巻き込んでしまう短所があり、市民の間で賛否が分かれている。2012年3月、欧州人権裁判所は、ケトリングを合法的な行為と見なす判決を出した。

概要[編集]

1967年、当時のイギリス領香港において、警察が共産主義者の暴徒の鎮圧に利用したことが始まりである。[1]香港で大きな成果を上げたことから、ケトリング戦術はイギリス本土の警察に逆輸入され、以後欧州で普及するようになる。

ケトリングの名前の由来は、一般的には、抗議者の封じ込めの様子ををやかん(ケトル)の熱と蒸気に例えた比喩だとされている。その他、ドイツの軍事用語に、包囲殲滅の意味を持つ「ケッセル」(ドイツ語でやかんの意味)というものがあり、それに影響を受けたという説もある。

以下が具体的な手順である。

  1. 警察を、複数の小さなグループに分ける。
  2. 警察のグループがデモ隊の逃げ道を一つずつ封鎖し、デモ隊を一つの大きな塊とする。
  3. デモ隊の塊を少しずつ包囲する。必要に応じて応援を呼ぶ。
  4. 包囲を数時間継続し、デモ隊が飽きたり、疲れたりするのを待つ。
  5. デモ隊の一部が帰宅するなどして包囲網が小さくなったら、中に残ったデモ隊を拘束する。

AAによる再現[編集]

警察官を「警」、デモ隊を「デモ」とする。

|警警警警警 |
|      |
| デモデモ |
| デモデモ |
|      |
| 警警警警警|

問題点[編集]

ケトリングで包囲された人々は、数時間にわたって飲食やトイレの使用を制限される。その他、偶然デモの近くを通りがかった人や傍観者など、本来弾圧すべきではない人々を巻き込んでしまう可能性がある。

人権侵害につながる側面があるため、複数の国では警察によるケトリングに対し法的な異議申し立てがなされた。発祥地であるイギリスでは、裁判所が「ケトリングが許可されるのは、誠意をもって使用され、合理的な時間行われる場合に限られる」とする判決を出した。

参考文献[編集]