ÖROK公共交通品質等級
ÖROK公共交通品質等級(独:ÖV-Güteklassen)は、オーストリアで、公共交通の便利さを評価するために用いている指標である。
概要[編集]
オーストリア国土計画会議(ÖROK)が用いている、公共交通の便利さを評価する指標。都市部も農村部も含んだオーストリア全土で、統一的な指標で公共交通の便利さを評価している。国土の交通計画の他、住宅・都市開発など幅広い用途で使うことを想定している。
列車の運行ダイヤと、停車場からの徒歩ルートの道のりを元に計算することができ、日本を含む全世界に当てはめることも一応できる。しかし、オーストリア国外で各地域の実情に合っているかどうかは確認されていない。
品質基準の決定手順[編集]
次の順番で、計算することができる。
停車場カテゴリーの決定[編集]
最初に、駅・バス停(以降、停車場)毎のカテゴリーを決定する。カテゴリーは、平均運行間隔と発車する公共交通のランクを元に決められる。平均運行間隔は、次の数式を用いて決定する。
840[分] ÷ (平日6時から20時までの全方向の列車・バス出発便数合計 × 0.5)
例えば、人丸前駅であれば、2024年3月改正のダイヤで124本が発車するので[要検算]、平均運行間隔は13.5分となる。日本へそ公園駅であれば14本なので、平均運行間隔は120分となる。5時台以前、20時以降の出発便は無視する。
平均運行間隔に基づいて、停車場のカテゴリーを、次の表[1]に基づいて決定する。
平均運行間隔 | 本数 | 停車場から発車する最高ランクの交通モード | |||
---|---|---|---|---|---|
特急列車 快速列車 |
普通電車 地下鉄 普通列車 高速バス 地域鉄道 |
路面電車 メトロバス[2] トロリーバス |
路線バス | ||
<5分 | 337本以上 | Ⅰ:赤 | Ⅰ:赤 | Ⅱ:橙 | Ⅲ:黄 |
5分≦x≦10分 | 168 - 336本 | Ⅰ:赤 | Ⅱ:橙 | Ⅲ:黄 | Ⅲ:黄 |
10分<x<20分 | 85 - 167本 | Ⅱ:橙 | Ⅲ:黄 | Ⅳ:緑 | Ⅳ:緑 |
20分≦x<40分 | 43 - 84本 | Ⅲ:黄 | Ⅳ:緑 | Ⅴ:水 | Ⅴ:水 |
40分≦x≦60分 | 28 - 42本 | Ⅳ:緑 | Ⅴ:水 | Ⅵ:青 | Ⅵ:青 |
60分<x≦120分 | 14 - 27本 | Ⅴ:水 | Ⅵ:青 | Ⅶ:紫 | Ⅶ:紫 |
120分<x≦210分 1) | 8 - 13本 | - | Ⅶ:紫 | Ⅷ:灰 | Ⅷ:灰 |
>210分 1) | 0 - 7本 | カテゴリー外 |
- 1) 最低サービス基準にあたる一方向あたり4本相当。
特急列車と普通列車、普通列車とBRTなど、複数の交通モードが発車する停車場に関しては、最高モードの方を採用する。また、特急・快速列車、あるいは高速バス・BRTの定義は明確になっておらず、オーストリアの場合は各州によって決定される。路線や時刻表に基づかない交通システムは対象外で、おそらくデマンドバスも対象外になると考えられる。
この基準に当てはめると、人丸前駅はカテゴリーⅢ、日本へそ公園駅はカテゴリーⅥとなる。なお、一日片道4本、往復で8本が最低サービス基準と位置づけられているため、これを下回る停車場はカテゴリー外となる。例えば免許維持路線のバス停、一部の過疎路線の駅(道後山駅など)もカテゴリー外である。
公共交通品質等級の決定[編集]
停車場カテゴリーを用いて、公共交通の品質等級を決定する。各地点毎に、停車場のカテゴリーと、停車場からの徒歩の道のりの長さに基づいて、公共交通品質等級を次の表[3]に基づいて決定する。
停車場カテゴリー | 停車場からの道のり | ||||
---|---|---|---|---|---|
300m以下 | 301 - 500m | 501 - 750m | 751 - 1,000m | 1,001 - 1,250m | |
1 | A:赤 | A:赤 | B:桃 | C:朱 | D:橙 |
Ⅱ | A:赤 | B:桃 | C:朱 | D:橙 | E:濃緑 |
Ⅲ | B:桃 | C:朱 | D:橙 | E:濃緑 | F:薄緑 |
Ⅳ | C:朱 | D:橙 | E:濃緑 | F:薄緑 | G:灰 |
Ⅴ | D:橙 | E:濃緑 | F:薄緑 | G:灰 | G:灰 |
Ⅵ | E:濃緑 | F:薄緑 | G:灰 | ||
Ⅶ | F:薄緑 | G:灰 | G:灰 | ||
Ⅷ | G:灰 | G:灰 |
等級の記載が無い枠は、品質等級のランク外となる。
ランクAは、公共交通へのアクセスが最高ランクとされ、都市部に相当するランクである。
ランクBは、公共交通へのアクセスが高ランクとされ、都市部に相当するランクである。
ランクCは、公共交通へのアクセスが特に良いとされ、都市部あるいは農村部の幹線沿いに相当するランクである。
ランクDは、公共交通へのアクセスが良いとされ、都市部あるいは農村部の幹線沿いに相当するランクである。
ランクEは、最低限のアクセスが特に良いとされ、農村部に相当するランクである。
ランクFは、最低限のアクセスが良いとされ、農村部に相当するランクである。
ランクGは、最低限のアクセスがあるとされ、農村部に相当するランクである。
品質等級のランク外は、公共交通空白地帯を意味している。
この基準に当てはめると、人丸前駅はカテゴリーⅢなので、駅から徒歩300mの明石市立天文科学館はランクBとランクCの境目あたり、ということになる。日本へそ公園駅だと、駅前でランクE、駅から750m離れると公共交通空白地帯ということになる(バスも本数が少ないので、バスを考慮しても結果は変わらない)。
なおオーストリアの場合、ランクA~Gおよびランク外それぞれ、同じぐらいの人口になっている様である。
脚注[編集]
- ↑ Die österreichweiten ÖV-GüteklassenのTab.1をMarmaray翻訳、本数の列と表中の色名を追加
- ↑ おそらくBRTと同義。
- ↑ Die österreichweiten ÖV-GüteklassenのTab.3をMarmaray翻訳、表中の色名を追加
外部リンク[編集]
- 公共交通のポテンシャルが地図でわかるオーストリア、ローカル線「赤字か否か」の議論から脱却できぬ日本が欠く発想, JBpress
- Das Modell der ÖV-Güteklassen, ÖROK
- ÖV-Güteklassen/ÖV-Erschließung der Bevölkerung - 市町村毎の各公共交通品質等級の割合を地図で可視化している。