1978
1978 Gli Dei Se Ne Vanno, Gli Arrabbiati Restano! (les dieux s'en vont, les enragés restent!)はイタリアのジャズロックバンド、アレアが1978年に発表したアルバム。全9曲で収録時間は40分ほど。
概要[編集]
前作「呪われた人々」(1976)とそのツアーを最後にギターのパオロ・トファーニが脱退。よって当アルバムはヴォーカル、オルガンのデメトリオ・ストラトスの主張が大きく反映され、キーボードとピアノを操るパトリツィオ・ファリセッリ、ウッドベースも多用するアレス・タヴォラッツィ、超絶技巧ドラマージュリオ・カピオッツォの演奏はギターレスでありながらより白熱、危険な領域に突入する。またデビュー以降在籍したクランプス・レコードからアスコルト・レコードへ移籍したこともポイント。
とにかく変拍子が多用されており、ドラム、ピアノの拍子がどんどんずれていくと思わせておいてキメでしっかり合うという超絶技巧を惜しげもなく見せつけるアルバム。相変わらずアヴァンギャルドそのものな音楽性ではあるが、アコースティック中心の音がポップに整理されインプロヴィゼーションも洗練されており、歌詞も政治色が薄れ芸術性を重視したものとなっているためか彼らのアルバムでは聴きやすい方に入るとされる。そしてこのアルバムを最後にデメトリオは脱退し、翌年病没する。
収録曲[編集]
- Il Bandito Del Deserto/荒野の追放者 - 冒頭から11/8拍子という超変則的キーボードが異様なテンションで曲を支配し、キメのフレーズで偶数拍子にして奇数を処理するなど最早わけのわからん領域でドラムとベースが絡み、ヴォーカルが叫び、嘶く。ブルガリア民謡をモチーフに異様なアレンジ力で変態ジャズロックに仕上げた名曲。
- Interno Con Figure E Luci/形と光の中 - ドラムロールから12/8拍子による中東風のシンセサイザーによるリフが迸り、マリンバをバックにヴォーカルは奇妙なフレーズを口走り、ピアノが強引なまでに曲調を捻じ曲げきった所で冒頭のリフが奏でられる。
- Return From Workuta/ワークータから帰る - シンセサイザーとデメトリオのヴォーカルが中東風で瞑想的なドローンを構築する。緊張感あふれるウッドベースが瞑想感をより高め、静謐な宗教性すら感じさせる曲。
- Guardati Dal Meses Vicino/4月頃から - イントロは救急車のサイレン。変拍子ピアノとドラムの絡みが非常にスリリング。中間はデメトリオお得意のスキャットからピアノ中心のフリージャズに。
- Hommage A Violette Nozieres/精神錯乱 - ビートルズからの影響も感じさせるメロディーで、マンドリンを弾いているのはタヴォラッツィ。[1]
- Ici On Dance!/アイス・オン・ダンス - 多重録音されたブルガリア民謡風のヴォーカリゼーションからお得意の中東風シンセサイザーが迸る。タイトルはフランス革命の折にバスティーユ監獄の壁に描かれた落書きによる。
- Acrostico In Memoria Di Laio/アイオの記念 - 電流が走るようなシンセのイントロからピアノトリオ風のジャズに展開。ベースがファンク風のリフを奏でるとデメトリオが近親相姦の騒乱を描いた歌詞を男女演じ分けながらラップのように並べていく(途中イケナイ事を口走ったのかピー音も入る)、後半では違うリフが展開しつつフェードアウトする。
- "FFF" (Festa, Farina E Forca)/FFF - ドラムス乱れ打ちから瑞々しいピアノが入り、民謡風のメロディーが奏でられた後はピアノ主導のフリージャズ化する。当アルバムで唯一デメトリオの声が入らない曲。
- Vodka Cola/ウォッカ・コーラ - ウォッカ(露)とコーラ(米)ということで、冷戦を皮肉ったタイトルが付けられている。ドラムンベースとパーカッシヴなシンセを伴うイントロに酔っぱらったようなデメトリオの声が絡み、途中間抜けなトロンボーンが入ったり急にポップな曲調になったりと展開が読めないカオスな曲調。
ライヴ[編集]
1978年にアレアがどの程度のコンサートを行ったか定かではないが、一公演のみ音源が残されている。「荒野の追放者」や「形と光の中」、「ワークータから帰る」、「アイオの記念」、「ウォッカ・コーラ」などが演奏されたようだ。2011年からの再結成アレアではトファーニがフロントマンなので演奏してくれない模様。
脚注[編集]
- ↑ ヴァィオレット・ノジエールは1933年にフランスで父親を殺した女性のことで、映画にもなっている。フランス語版Wikipedia