第七官界彷徨

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第七官界彷徨』(だいななかんかいほうこう)とは、1931年に書かれた女性作家・尾崎翠の代表作。

概要[編集]

1931年、雑誌『文学党員』2月・3月号にて全体の7分の4が発表された。同年6月、板垣鷹穂・編集の『新興芸術研究2』で全編が発表された。

都市部の下宿で共同生活する、少女と3人の親戚を描いている。

登場人物[編集]

小野町子
主人公の少女。「第七官にひびくような詩」を書きたいと考えている詩人志望者。
痩せた体型であり、赤いちぢれ毛を気にしている。
作者の尾崎翠自身がモデルと思われる。
小野一助
町子の兄。「分裂心理学」を専門とする病院の医師。
小野二助
町子の兄。植物の発育を研究している大学生。部屋のなかでよく肥やしを燃やし、臭気をあたりに発している。
彼の育てる蘚(こけ)の「恋愛」が、本作の見どころの一つである。
佐田三五郎
町子の従兄弟。仲睦まじい間柄であるが、明確な恋愛関係にはない。
音楽大学に一度落ち、再受験を考えている浪人生だが、午前中は眠っているなどモチベーションは低い。
下宿に元々捨て置かれていたピアノを演奏しているが、調律が狂っていることに悩んでいる。
分教場(予備校)の先生に嗤われると、要らないものを衝動買いしてしまう癖がある。

評価[編集]

半世紀後に流行する少女漫画を先取りしたかのような、乙女チックな作品である。

コケというもっとも原初的な生物の<恋愛>を描くことによって尾崎翠は人間も含めた普遍のエロスを描いたということになる — 加藤幸子『尾崎翠の感覚世界』