玉ねぎ型

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

玉ねぎ型とは、作品全体の構造が繰り返し繰り返し反転するミステリー作品を形容する言葉。剥いても剥いても中身がある玉ねぎに例えたもの。

概要[編集]

ミステリー作家・阿津川辰海は「玉ねぎ型」の特徴を下記のように表現している。[1]

  • 二人+アルファという限定された人数で描かれる心理戦
  • 次々に攻守のフェーズが代わるゲーム性
  • いずれの作品でも現れる『演じる』というモチーフ
  • 部ごとのチェンジ・オブ・ペースが見事なサスペンス

必然的に「コンゲーム」と似た要素をもつこともある。

作品例[編集]

阿津川辰海は、具体的な作品名として下記を挙げている。[1]

  • 探偵<スルース> (1972年のアメリカ・イギリス映画)
  • デストラップ 死の罠 (1982年のアメリカ映画。アイラ・レヴィン原作)
  • マトリョーシカ (三谷幸喜の演劇。『探偵<スルース>』へのオマージュ)
  • フライプレイ! 監棺館殺人事件 (霞流一の本格ミステリー小説。『探偵<スルース>』と『熱海殺人事件』へのオマージュ)

阿津川自身の『入れ子細工の夜』も、玉ねぎ型の作品である。

我孫子武丸は、下記の作品を挙げている。

  • ワイルドシングス (1998年のアメリカ映画)
  • レインディア・ゲーム (2000年のアメリカ映画)

少し拡大解釈になってしまうが、竹本健治『匣の中の失楽』もある意味、玉ねぎ型の作品といえるかもしれない。

言葉の発祥[編集]

我孫子武丸のこのツイートが元祖だと思われる。ここでは「玉ねぎ」という表現である。

インターネットでの用例はほとんど見つからない。阿津川辰海は下記のように述べている。[1]2023年現在は、「コアな本格ミステリファンなら聞いたことがある表現」ぐらいの知名度だと思われる。

映画はここから二転三転、次々に局面を変えて魅せてくれるわけで――誰が言い出したか、こういう構造の作品を、<玉ねぎ型>と呼んでいるわけです。剝いても剝いても中身がある、という意味で。

脚注[編集]

  1. a b c 阿津川辰海『入れ子細工の夜』後書きより。