木魂
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『木魂』(すだま)とは、夢野久作の短編小説。
概要 [編集]
タイトルの「木霊」は普通、「こだま」或いは「こたま」と読み、樹木に宿る精霊を指す。「すだま」は普通、「魑魅」「霊」などの漢字があてられ、山林や木・石の精霊を指す。
1927年1月に、雑誌『探偵趣味』に発表された随筆『線路』のなかで、すでに本作と似た主題が語られており、かなり長い間アイデアを暖めて書かれた作品であると推察される。
あらすじ[編集]
幼時から数学が好きだった主人公は、数学上の着想に熱中している時などに、たびたび自分自身の声に呼びかけられる感覚を経験してきた。大人になって妻と子を病気・事故で亡くし、一人身になってしまってからは、以前にも増してたびたびにその感覚に襲われる。ある朝、子供が死んだ場所と同じ線路の上で、自分はキットいつか此処で轢殺されるだろう、と予感しながら自我の中にある感覚を追求していく。そうしてその考えがクライマックスに達した時に、本当に電車によって轢殺されてしまう。
全編にわたり狂気に満ちた記述となっており、論理性は薄い。「数学」「鉄道線路」「子供」「声」などが多義性をもって描かれている。現在でいう双極性障害(?)を数理的に解釈したり、自己催眠による幻覚のアイデアが語られるくだりなどは、彼の代表作『ドグラ・マグラ』などとも通じる所があり、興味深い。
収録書籍[編集]
- 夢野久作全集 (三一書房) 第3巻
- 『ぷろふいる』傑作選 ISBN 978-4334729745
外部リンク[編集]
- 青空文庫 - 本文を無料で読むことが出来る。