成田空港における車輪降下手順
成田国際空港の、34L・34R滑走路進入時における、車輪降下手順(Gear Down Procedure)について述べる。成田空港は内陸に位置するため、周囲を田畑や民家に囲まれ、航空機の運航に特段の配慮を要するとされる。例としては離着陸を23時までに規制する「門限ルール」などがあり、これは遅延などで着陸予定時間が23時を超える場合、着陸を拒否されるため代替空港へ向かうなどの措置が必要になるものとなる(現在は条件付きで24時までに緩和)。
車輪降下手順は、このような環境配慮策のひとつで、次のような制限である。
- 滑走路34L/34R(太平洋側)からの着陸進入時は、九十九里浜の手前太平洋上で、車輪を降下し、固定されている必要がある。
- 34Lの場合、滑走路手前12.3海里=およそ23キロメートル(ウェイポイントCOSMO)までにギアダウン。
- 34Rの場合、滑走路手前13.6海里=およそ25キロメートル(ウェイポイントORION)までにギアダウン。
このような規則が設けられている理由としては、車輪に付着した氷塊が地上に落下するという訴えがあったことから、海上に氷塊を落とすことで被害を食い止めるためとなる。この規則は航空路誌およびアプローチチャートにより各航空会社に通知されている。そのうえで、定期的にきちんとギアダウンしているか実地調査を行っている。[1]
批判[編集]
この規則は主にエアラインやパイロットから批判を受けている。たとえば成田国際空港航空会社運営協議会からは当規則を含む非効率な運航について改善するよう国土交通省に要望されている。[2]この理由としては、氷塊の落下について合理的な説明がない事、地球環境への悪影響がある事、の2点が主に挙げられる。
まず、航空機からの排水や排気は、排水口のヒーターにより加熱され速やかに蒸発するよう設計されているため、正常に機能すれば航空機に起因する氷塊の落下は起こりにくい[3]。
またこの規則に伴う問題として、車輪を下ろすと空気抵抗が増すため、そのぶんエンジン出力を上げ速度を保つ必要がある。そのため燃料を余分に使うこととなり、その量はANAの試算で1回200ポンド (質量)~300lbs(90kg~130kg)と言われる。[4]つまり石油燃料資源を無駄に使い、また二酸化炭素の排出が増えてしまう。
航空機の安全対策も日々進化しており、降下タイミングとギアダウンのタイミングを調整し、可能な限り燃料の節約に努めるなど、地球環境にも配慮した合理的な対策へと変化させることが期待される。[5]