広島市東区介護施設放火殺人事件
広島市東区介護施設放火殺人事件(ひろしましひがしくかいごしせつほうかさつじんじけん)は、2012年12月5日に広島市東区の福祉施設入居者が放火されて焼死した事件。
概要[編集]
2012年12月5日夜、広島市東区戸坂大上4にある終末医療施設「ホスピス・ナーシングホーム『クリーム』」2階の個室で寝ていた女性(当時85歳)のベッドの掛け布団付近から出火。女性は全身にやけどを負って翌日に死亡した。
2013年1月18日に広島県警広島東署は、介護施設で働いていた女性Aを殺人と現住建造物等放火未遂容疑で逮捕。逮捕容疑は、12月5日午後6時半ごろに2階一室に入所していた女性の掛け布団の足元付近にライターで放火。全身にやけどを負わせて12月6日に死亡させたとした。Aは大筋について「間違いありません」と容疑を認めたが、「殺すつもりはなかった」と殺意を否認。動機については「人間関係などのストレスがあった」などと供述したものの、曖昧な供述も多かった。
犯行のいきさつなどに不明な点も多く、1月から3カ月にわたって精神鑑定を実施。その結果、責任能力は問えるとして2014年4月26日に広島地方検察庁は殺人と放火の罪で起訴した。また、同僚から現金を抜き取った窃盗罪でも起訴されている。
裁判経過[編集]
裁判では捜査段階では容疑を認めていた女性Aが一転して犯行を否認。弁護側は、自白は誘導的な取り調べでしたもので、任意性も信用性もないと主張した。検察側は取り調べで女性が自白するシーンを録画したDVDを法廷で再生するなどしてと自白に不自然な点はないと主張[1]。目撃者や凶器とされたライターといった直接証拠がないため、自白の信用性が争点となった。
2014年7月16日、広島地裁(伊藤寿裁判長)は、同僚から現金を抜き取った窃盗罪のみを有罪にしたうえで、放火と殺人罪については無罪。懲役1年6月執行猶予3年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した[2]。判決では、「秘密の暴露はなく、犯行動機などで供述が変遷しており、自白について信用性に疑問がある」とした。
2014年7月30日、広島地検は「原判決を覆す立証を行うことが困難」として控訴を断念すると発表[3]。殺人と建造物等以外放火の罪に関して無罪判決が確定することとなった。