嬰ヘ長調

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嬰ヘ長調(えいへちょうちょう)とは、音階の一つで、ファ#を主音とする長調。英語ではF# Major、ドイツ語ではFis-dur。構成音は「ファ#.ソ#.ラ#.シ.ド#.レ#.ミ#.ファ#」で、前者は「低いファ#」、後者は「高いファ#」である。ピアノの鍵盤で、白鍵のみであるハ長調「ド.レ.ミ.ファ.ソ.ラ.シ」から半音±6つ移動したもの。調号#6個の長調で、ファ.ド.ソ.レ.ラ.ミに#が付く。最低音は主音で、主音はファ#。嬰ヘ長調は、ファ#とラ#の音程が長3度であることに由来する。かつ調号の使用も6箇所であり、五度圏では調号無しの長調であるハ長調と対角線の位置にある調なので、この調号には異名同音調が存在し、調号b6個の長調である変ト長調と同じで、実音が同じ調に対して2つの調性の表記がある。調性の表記は、「調号#6個の嬰ヘ長調」でも「調号b6個の変ト長調」でもどっちでもよい。そのため、#系の調かb系の調か曖昧である。

キーを表す際、ポピュラー音楽では、単に「F#」とだけ略する場合もある。「F#」の表記は、単音の英語音名や和音(コードネーム)を表すときにも使われる。原調が嬰ヘ長調の場合、「Original Key=F#」と表記。

ピアノの場合、嬰ヘ長調はロ長調、変ニ長調と並んで黒鍵の使用が一番多く、黒鍵の位置関係から手にはまる上に、滅多に#のつかないミの音に#がつくので、読譜や運指が困難な調の1つでもある。

嬰ヘ長調(F#メジャースケール)の三音のダイアトニックコード
コードネーム F# G#m A#m B C D#m E#dim〔Fdim〕
構成音 ファ#.ラ#.ド# ソ#.シ.レ# ラ#.ド#.ミ# シ.レ#.ファ# ド#.ミ#.ソ# レ#.ファ#.ラ# ミ#.ソ#.シ
ディグリーネーム I IIm IIIm IV V VIm VIIdim
和音記号 I II III IV V VI VII
和音機能 T SD ×(none) SD D T D?
嬰ヘ長調(F#メジャースケール)の四音のダイアトニックコード
コードネーム F#M7 G#m7 A#m7 BM7 C#7 D#m7 E#m7(b5)〔Fm7(b5)〕
構成音 ファ#.ラ#.ド#.ミ# ソ#.シ.レ#.ファ# ラ#.ド#.ミ#.ソ# シ.レ#.ファ#.ラ# ド#.ミ#.ソ#.シ レ#.ファ#.ラ#.ド# ミ#.ソ#.シ.レ#
ディグリーネーム IM7 IIm7 IIIm7 IVM7 V7 VIm7 VIIm7(b5)
和音記号 I7 II7 III7 IV7 V7 VI7 VII7
和音機能 T SD ×(none) SD D T D?

調性のイメージは、繊細なロマンティックさを持ち、優和で華美さを持ち、ホテルのイメージで、ロマン派的な感じがする。調号無しの調性から一番遠い調性にいるので、がらりと変わった雰囲気で、音響効果に乏しく、どことなく非現実的で、落ち着いた感じで、柔らかい音がする。ある意味最も複雑で混沌とした印象を受ける。

嬰ヘ長調の音階では、第7音(導音)は「ミ#、英:E#」であるが、オクターブ表記には、白鍵には異名同音は使用不可で、嬰ヘ長調の音階を、オクターブ表記を使った音名に書き改めると、「F#3,G#3,A#3,B3,C#4,D#4,F♮4,F#4」となり、嬰ヘ長調の導音は「E#」とは書かずに「F♮」に変換される。

嬰ヘ長調の曲の例[編集]

[Fis]は楽譜上嬰ヘ長調の曲を、[Ges]は楽譜上変ト長調の曲を示す。

J-POP
  • コブクロの「ここにしか咲かない花」
  • DREAMS COME TRUEの「未来予想図II」
  • 小柳ゆきの「愛情」(サビの終止は変ホ長調?)
  • TUBEの「ビーチタイム」(2番目のサビで半音転調し、ト長調)
クラシック
  • バッハの「平均律第1巻第13番 BWV858」[Fis]
  • シューベルトの「即興曲 作品90−3」[Ges]
  • ショパンの「練習曲 Op.10-5『黒鍵』」[Ges]、「ワルツ第11番 Op.70の1」[Ges]、「Op.25-9 蝶々」[Ges]、「舟歌」[Fis]、「前奏曲13番」[Fis]
  • ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」[Ges]
  • ドヴォルザークの「ユーモレスク 第7番」[Ges]
  • プッチーニの「歌劇『蝶々夫人』第2幕『ある晴れた日に』」[Ges]