変異株
変異株(へんいかぶ,英:Mutant strain)はウイルス遺伝子の複製過程で一部に読み違え(ミス)や組み換えが起こり遺伝情報が一部変化して、新しい性質を持った子孫ウイルスができること。変異株は新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスなど
概要[編集]
変異では生物の種類は変化しないので、ウイルスの名称は変わらない。変異は「突然変異」ともいう。まれに近縁のウイルスの間で多数の遺伝子の交換(組み換え)が起きると、2つのウイルスの特徴を持つ新しいウイルスが誕生することがある。その場合には「'''変異種'''」と呼称される。
免疫抑制者等において一人の患者での長期的な感染により、免疫逃避による変異の蓄積が加速度的に起こった結果という仮説が立てられている。
懸念される新型コロナウイルスの変異株[編集]
国立感染症研究所は変異株のリスク分析を行い、「懸念される変異株(VOC)」を公表している。
No | 分類(WHO) | Pango系統 | 株名(WHOの呼称) | |
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1 | VOC | B.1.1.7 | アルファ株 | N501Y |
2 | VOC | B.1.351 | ベータ株 | E484K,N501Y |
3 | VOC | P.1 | ガンマ株 | E484K,N501Y |
4 | VOC | B.1.617.2 | デルタ株 | L452R |
5 | VOI | B.1.427/B.1.429 | イプシロン株 | L452R |
6 | VOI | P.2 | ゼータ株 | |
7 | VOI | P.3 | シータ株 | E484K,N501Y |
8 | VOI | P.3 | イオタ株 | |
9 | VOI | B.1.617.1 | カッパ株 | K452R,E484Q |
「N501Y」はウイルスのタンパク質の501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変化したものである。 「E484K」は84番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リシン)に変化したものである。 「L452R」は452番目のアミノ酸がL(ロイシン)からR(アルギニン)に置換したものである。 「E484Q」はスパイク蛋白の484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からQ(グルタミン)に置き換わったことを指す変異である。
インフルエンザウイルスの変異株[編集]
インフルエンザウイルスの遺伝子はRNA(人の遺伝子はDNA)遺伝子であり、誤ったコピーが発生しやすい。人の1000倍の確率で起こるとされる。さらに増殖スピードが速い。1個のウイルスは1日で100万個以上に増殖する。
変異の経路は3通りあると言われている。 第一は両方のウィルスに感染しやすいブタに同時に感染し、体内で両者の遺伝子が交じり合うことにより、全く新しいインフルエンザウィルスになる。新型インフルエンザの「A/H1N1型」は、この経路である。
第二は鳥インフルエンザウィルスが突如変異を繰り返しているうちに人から人に対する感染性を獲得して新型インフルエンザウィルスになる経路である。
第三は鳥と人の両方のインフルエンザウィルスが、人の体内で遺伝子を交わらせて新型インフルエンザウィルスになる経路である。