北鎌倉ビフォア社へようこそ

『北鎌倉ビフォア社へようこそ』（きたかまくらビフォアしゃへようこそ）は、一ノ瀬縫 による小説作品。2020年8月21日から202年月日までウェブサイトエブリスタ上に連載されたオンライン小説。

概要

人と人とのつながりをテーマに、葬儀社を営む日下部の、生前葬に対する方針「一度死んだ気になって、その後どう生きるか。それを考える儀式だ」を基本に、アルバイトにすぎない傷心の主人公が、むしろ仕事に前のめりになって、上司の背中を押す。という形で、ストーリーが進んでいく。

あらすじ

相手の浮気がもとで、婚約を解消した千代田有咲は、心の傷を抱えたまま、故郷の長野から、北鎌倉までやってきた。 古民家風の家の前で、小学校時代の級友、葉芝風佳と再会をはたす。そこには、風佳のほか初老の紳士で、古民家の大家である篠田さん。イケメンだが無愛想な、自らを「スイーツ愛好家」と称する日下部が住んでいた。 日下部は古民家の地下室で、生きている人が、自分の葬儀をとり行う「生前葬」を専門に引きうける、「北鎌倉ビフォア社」を経営していた。おのおの、訳ありの人生を背負う客がおとずれ、有咲も行きがかり上、仕事の手伝いをするようになる。

登場人物

千代田有咲　（ちよだ ありさ）

文房具メーカーに勤務する２８歳。結婚直前、婚約者に浮気をされ、婚約を解消。会社では、結婚詐欺の加害者のような噂をたてられ、会社を辞職。生まれ故郷の長野県から、小学校時代の友人をたよって、北鎌倉にたどり着く。やがて大家から頼まれ、生前葬をおこなう「北鎌倉ビフォア社」の仕事を手伝うようになる。

日下部仁　（くさかべ じん）

葬儀社「北鎌倉ビフォア社」を営む。１８０センチはあろうかという高身長で、鼻筋の通った端正な顔立ち。いわゆるイケメンだが、無口で無愛想、ぶっきらぼう。自称「スイーツ愛好家」の、甘いものに目がない３０歳。普段の装いは和服姿。初対面では、有咲に無関心でぞんざいな態度をとるが、次第に打ち解けていく。

葉芝風佳　（はしばふうか）

有咲の小学校時代、六年二組のクラスメイト。母親がピアノ教室の先生で、楽器はなんでも得意。大人っぽい雰囲気を放っていたせいか、周りからは浮いていたが、有咲とは気が合った。卒業後は神奈川県に引越す。十六年ぶりに有咲と再会した彼女は、長い黒髪をポニーテールにして、そろえた前髪。色白で紅色の唇、零れ落ちそうな大きな目の美人に成長していた。そんな彼女は、ある秘密を抱えていた。

篠田　（しのだ）

古民家の大家で、名前は一応不明。柔和で、物腰のおだやかな人物。友人の風佳が、この家の二階に住んでいて、有咲も暮らすことになった。古民家の地下室にある、「北鎌倉ビフォア社」の仕事を手伝っていて、有咲にも日下部のサポートを頼む。６５歳。

風間太一　（かざま たいち）

有咲の小学校時代、六年二組のクラスメイト。体が弱く、猫背で、度の強いメガネをかけた男子。ぎこちないが、物事に一生懸命取りくむ性格。彼と有咲、風佳の三人は、卒業まで多くの時間を、一緒に過ごすようになった。卒業後は、私立学校に進学していったが、後に「北鎌倉ビフォア社」の人探しの対象者として、名前が浮上する。

田丸梨加　（たまる りか）

古民家の地下室にあるビフォア社で、有咲が初めて立ち会った、「生前葬」の喪主。有咲と同じ２８歳で、神奈川県川崎市出身。自分の葬式をとりおこなうが、参列した友人たちは、すべて雇われたアルバイト。本当のダンス部のメンバーとは、キャプテンだった彼女の失敗で、大会の優勝を逃していらい、不和のまま音信不通になっていた。しかし、日下部の提案で、ふたたび葬儀をやり直すことになる。

久枝茉奈　（ひさえだ まな）

梨加のやり直し生前葬に集まった、もとダンスメンバー数人のうちの一人。大会当時は副部長で、厳しい練習を強いる梨加と対立していたが、実際は部長である彼女に頼りきり、すべてを押しつけてしまった、と後悔していた。

御手洗静花　（みたらい しずか）

夫の仕事の都合で、フランクフルトに移住するまでのあいだ、夫の兄の店「晴奈庵」に住んでいて、生前葬と人探しの依頼をする。３５歳。

芦川龍郎　（あしかわ たつろう）

静花の実父。海で溺れかけた、幼い頃の静花を救出。別れた妻が、娘を連れて再婚していたので、黙って立ち去る。

御手洗誠也　（みたらい せいや）

静花の夫。

御手洗祥吾　（みたらい しょうご）

甘味処「晴奈庵」の主人で、誠也の実兄。

松浪弘恵　（まつなみ ひろえ）

北鎌倉中泉高校のもと教師。自分の生前葬儀と、もと教え子「風間太一」の行方探しを依頼する。

風間マキト　（かざま マキト）

風間太一の兄で、名前の漢字は不明。ふたりの両親が離婚したので、離れ離れになったが、時どき会っていたらしい。

渉　（わたる）

苗字は不明。 有咲の婚約者で、浮気をして婚約を破棄された。会社では被害者ポジションをとり、婚約解消の原因を、有咲に責任転嫁する。営業部勤務。

万莉　（まり）

苗字は不明で、名前のみ登場。 有咲と同期入社した同僚で、渉の浮気相手。

清水　（しみず）

名前は不明で、苗字のみ登場。有咲の会社の同僚で、３年先輩。

佐藤　（さとう）

名前は不明で、苗字のみ登場。有咲の会社の同僚で、彼女によくグチや悩みを話していた。同期入社。

平田　（ひらた）

名前は不明で、苗字のみ登場。有咲の会社の上司で、声をかけてくるときは、少々高圧的。