沖縄県の情報産業
本項目では、沖縄県の情報産業について解説する。沖縄県にはコールセンターをはじめとする情報産業が多く、2019年8月現在約2万人が従事する[1]。
概要[編集]
2017年時点で454件の情報関連企業が沖縄に進出している。[2]
コールセンター[編集]
2017年の沖縄県のコールセンターの立地企業数は80社、雇用者数は18,268人である[2]。
データセンター[編集]
沖縄県は日本本土より距離があり、また地盤も強固で地震も少ない[注 1][3]ことから、首都圏に本土がある企業のバックアップとしてデータセンターも多く建設されている。一例として2006年には浦添市のファーストライディングテクノロジー(FRT)に経済産業省のバックアップ機能を設置すると公表した[4]。
歴史[編集]
沖縄県はその地理・立地条件から、農業、観光業以外の産業に乏しく、平均給与は長年最下位であった[5][注 2]。その中で白羽の矢が立ったのが情報産業である。
情報通信産業は他の産業に比較し、立地場所を選ばず、比較的少ない資本で事業化できるため、若年人口が他都道府県にたいし多く若年失業率が11.8%であった[5]沖縄の失業率改善に役立てられると考えられていた。その中で、1998年9月に情報サービス(コールセンター)、コンテンツ制作(エンターテインメント)、ソフト開発(GIS)の3軸からなる「沖縄県マルチメディアアイランド構想」が掲げられた[6]。
また2002年4月には、沖縄振興特別措置法が施行され、3次にわたる情報通信産業の振興計画が推進。結果としてコールセンターの集積が進み、2011年度には沖縄県内の情報通信産業全体の2割に当たる約770億円まで拡大した[6]。
沖縄県マルチメディアアイランド構想[編集]
沖縄県が1998年に掲げた構想。来るべき新時代の産業・経済・社会を実現し、沖縄がマルチメディアにおけるフロンティア地域となり、21世紀の新産業創出及び高度情報通信社会の先行的モデルを形成することで、
- 沖縄における情報通信産業の振興・集積による自立的な経済発展
- 高度情報通信技術を活用した特色ある地域振興の道標
- アジア・太平洋地域における情報通信分野のハブ機能を通した国際貢献の3点
を達成することを目標とした。雇用吸収力は2010年の日本における情報通信産業の想定雇用規模245万人の1%、2.45万人を目標とした。
ISCO[編集]
2018年7月には、沖縄の経済問題を打開するため、沖縄県の情報通信関連産業をはじめとした産業全体の振興を図る[7]目的で「沖縄ITイノベーション戦略センター(IT Innovation and Strategy Center Okinawa:ISCO)」が立ち上げられた[8]。
問題点[編集]
問題点として、産業の内訳ではソフトウェア開発、コールセンター、BPOセンターなど受託業務が多数を占め、またおよそ3分の2が県外企業による事業であるため、「首都圏の下請け」から脱せていないといわれている[8]。
また、国の補助金からの交付金だけで年間数億~数十億の予算がついているが、不明瞭な取り組みや失敗施策も少なくはない。一例として沖縄データセンター(ODC)は県内のIT企業3社が出資して2015年に設立され、総事業費73億円(うち国費59億円)を投じたが、高設備による高額な価格体系で営業に苦戦し、わずか3年後の2018年6月に倒産した[8][9]。
注釈[編集]
- ↑ 1923年から2015年にかけて、沖縄県では震度5強以上を観測する地震がなく、また震度5弱も12回と他地域と比較して少ない。
- ↑ なお、2017年現在でも全国最下位である。“平均給与、沖縄最下位が続く理由 垣間見える「格差社会」”. 沖縄タイムス (2017年1月11日). 2019年9月9日確認。
出典[編集]
- ↑ “労働力調査”. 沖縄県 (2019年8月). 2019年9月8日確認。
- ↑ a b “H29情報特区実施状況報告(PDF)”. 沖縄県 (2018年6月). 2019年9月9日確認。
- ↑ “IT・金融の集積が進む沖縄 なぜ、沖縄か?”. 沖縄県. 2019年9月9日確認。
- ↑ 『沖縄タイムス』2006年12月2日
- ↑ a b “沖縄県マルチメディアアイランド構想”. 沖縄県庁 (1998年). 2000年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月8日確認。
- ↑ a b “アジアのITブリッジ拠点を担う「沖縄クラウドネットワーク」”. IT Leader(Impress) (2015年10月26日). 2019年9月9日確認。
- ↑ ABOUT-沖縄ITイノベーション戦略センター
- ↑ a b c 伏見学. “沖縄のIT産業は生まれ変われるのだろうか?”. #SHIFT(ITmedia). 2019年9月9日確認。
- ↑ “沖縄データセンター、民事再生法適用 負債10億2400万円”. 沖縄タイムズ (2018年6月28日). 2019年9月9日確認。