プロファイリング
プロファイリングとは、犯罪捜査において容疑者の住居・性別・年齢・経歴・移動手段などを絞りこむための手法。
概要[編集]
- FBI 方式
- リバプール方式
の二種があり、日本で採用されているのは後者。
いずれにせよデータマイニングに近いドライな分析手法である。
まず、過去の事例データに基づいて条件と結果の相関を洗い出し、それを分類・整理してデータベース化しておく。
実際の事件において得られた証拠(証言を含める)から、相関の高い要素(条件)に当てはまりそうな、相関の高い要素に注力する。
これ以外に、それぞれの事件の犯行の手口などを比べて「これは同一犯人が起こした事件ではないか?」といった事件間の相関も参考にする。
人間生活との関わり・利用[編集]
単純に犯行地点にマルを描いて済ませるような真似はしない。「どういう移動手段でどのルートを使い …… 」などを考えると、「この駐車場とこの駐車場に同一ナンバーの車が停めてなかったか?」といった点にも着目できる。
理論[編集]
犯人像の推定は、「犯行現場から得られたさまざまな情報から,犯人像(プロフィール)を推定する手続き」である。対象事件が連続事件だと推定できれば、この一連事件を引き起こした犯人像を推論していく。犯人像推定では,「類似性の高い犯行行動を実行する犯人同士は、類似した特性を有す」という相同仮説に基づき,IF ~ THEN ルール、すなわち
IF(〇〇の犯行特徴を有する) THEN(△△の犯人特徴を有する)ルールを抽出してゆく。
たとえば、
- 対面犯罪において,犯人が犯行時に覆面をしていたならば、犯人が被害者と面識があり顔割れを防ぐため,覆面したと考えられる。すなわち IF(覆面している)THEN {被害者と面識がある} ルールが成立する可能性は高まるかもしれないが、
- 相手を確実に殺す自信がある
- 犯行現場を目撃される危惧が少ない
- 覆面をすることで不審者として意識されたくない
とかいった理由があるかもしれない。 ただし,IFの部分は捜査段階で得られた情報のみから抽出する必要がある。先の対面犯罪の例において、被害者は完全に顔を覆った犯人ではなく、帽子を深く被った犯人を目撃したとする。これを「顔割れを防ぐ覆面行為」と捉えてよいかは、検挙後に犯人に尋ねてみないと分からない。捜査段階では「帽子を深く被っていた」ことしか判明しないので,それをIFとして推論せざるを得ず、制約が付いた状態でIF ~ THENルールを考える必要がある。IFを過大解釈して心理学的な考察がないまま統計分析を行うと、間違った推論に陥る可能性がある。
その他[編集]
よく知られているプロファイリングの失敗例としては、松本サリン事件がある。サリンやらソマンやらタブンとかいった有機リン酸系の神経ガスは、それなりの資金と設備があってこそ合成が可能であり、そこいらのおっちゃんが農薬やら現像液やらを混ぜて作れるのだったら世界中で真面目にテロを行なっている皆様は面目丸つぶれである。そうなると、「どこぞのテロ国家が日本を実験場にした」とか「旧財閥系の大手の化学合成を行なっている企業の仕業」かもしれないが、それもいささか想定として無理がある。
そうなると「オウムがサティアン内に化学工場を作って合成した」というのが まともな読み筋であり、被害者のひとりである河野義行氏の容疑者扱いは「公安による陽動作戦」だと思っていたら、「松本警察署の勇み足だった」という無様な結果に終わった。あげく地下鉄サリン事件を防げなかったことは、警察史上大きな汚点であるといえる。
この点からいうと、冤罪事件の事例分析はプロファイリングのデータサンプリングには非常に有効であると思われるが、そうした研究はいまのところ行われていないようである。