ブノアの聖母
ブノアの聖母 (ぶのあのせいぼ、英:Madonna with a Flower、伊: Madonna Benois)はイタリアの画家レオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された聖母子像の作品。制作年は1475年から1479年で、エルミタージュ美術館に所蔵されている。
概要[編集]
レオナルド・ダ・ヴィンチの初期の名作である。1478年9月から12月「2枚の聖母を描き始めた」と手記にレオナルドが言及している。その聖母子をテーマとした2つの絵画のうちの1つであり、もうひとつは「カーネーションを持つ聖母」とみられている。ヴェロッキオ工房から独立したあと最初の作品と言われる。
下絵と想定されるスケッチ[編集]
本作に関連する可能性のあるスケッチが残されている。そのひとつ『猫と聖母子』(MADONNA COL BANBINO CHE ABBRACIA UN GATTO、大英博物館蔵、ペン画)では猫を抱く幼児キリストをに対する聖母の体がブノアの聖母に似ている。また『果物と聖母子』(ルーブル美術館蔵、ペン画)は聖母と幼児の姿態がにている。 そのほか関連が想定されるスケッチが大英博物館に残されている[1]。
画法[編集]
スフマート技術が使われており、色をぼかして塗る方法による自然なグラデーションを表現している。神々しい聖母子が母と子の日常的な画面のように表現されている。レオナルドは眉の薄い母親を数多く描いている。幼児キリスト右脚の明暗や境界線など、レオナルドらしさは見られないところもある。聖母マリアが差し伸べる花を見つめる幼児キリストの表情は幼いながら気高さがみられる。「カーネーションを持つ聖母」の感情表現から進歩がみられ、構図は「カーネーションを持つ聖母」の比べ安定感が出ている。幼児の後ろ窓に何も書かれていないのは、模写と思われる作品には戸外の風景が描かれていることから、後年に塗りつぶされた可能性が言われている。
贋作論争[編集]
長年に渡り贋作論争があったが、大英博物館からダヴィンチによるこの絵の素描(『猫と聖母子』)とみられるスケッチが発見されたことから真作と認められた。
来歴[編集]
名門貴族のクラーキンが当初コレクションとして所有していたが、フランスの画家レオン・ブノアの手に渡った後、ブノアの妻は夫の死後ロシアのペテルスブルグに戻り、ロシア皇帝ニコライ2世がこれを購入した。1914年にエルミタージュ美術館納められた[2]。
注文者[編集]
不明。
カンバスへの移行[編集]
本作は木の板に描かれていたが、後年になり乱暴にカンバスに移され傷んだと見られている。聖母の口や手、キリストの右手、左の膝などに加筆が施され、背景も上塗りされていると考えられている。
模写[編集]
本作の模写とみられる作品がギャレリア・コロンナ(ローマ)にある。サイズは本作と同じである。背景の窓に景色が描かれているところが異なる。聖母の背後に柱と書見台があり、カーテンが下がる。しかし模写は平凡な母子像に留まっている。
諸元[編集]
- 名称:ブノアの聖母
- 制作年:1475年 - 1479年
- 所蔵:エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルグ
- 種類:油彩(カンバスから移行)
- 寸法:縦 49.5cm、横31cm