ゲマインシャフト

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ゲマインシャフト(独:Gemeinschaft)は、「共同体」を意味するドイツ語の単語だが、とくに日本語で「ゲマインシャフト」と表記される場合には、社会学者フェルディナント・テンニースが唱えた概念を指すことが多い。本記事でも、テンニースの唱えたゲマインシャフト概念について述べる。

概要[編集]

テンニースは1887年の主著『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』のなかで、ゲゼルシャフトの対概念としてこの概念を提唱した。

テンニースによると、ゲマインシャフトとは血縁・地縁関係や宗教・民族などのつながりなどをもとにして、社会自然に発生する集団のことを指す。このとき、ゲマインシャフトは近代以前からあった集団だと言える。テンニースはゲマインシャフトには本質的な信頼感・つながりとしての「本質意思」があり、たとえば仮に地理的に分離することがあっても、根本的には本質意思のレベルで結合しているとした。利害関係など何らかの目的のために結ばれた関係であるゲゼルシャフトに対して、テンニースはゲゼルシャフトを真の社会集団と捉えた。この背景には、急速に進む都市化社会において、農村の全人格的で「温かい」地域コミュニティが都市には見られず「冷たい」印象を与える(ように社会学者が感じた)ことがあった。つまり、テンニースはこの一組の概念を用いて、近代化を「温かく」「真の社会集団」である農村のゲマインシャフトが「冷たく」「偽りの社会集団」であるゲゼルシャフトに転じていく過程だと捉え、悲観していたのだと言える。なお、このような認識はゲオルク・ジンメルらによる初期の都市論にも影響を与えた。

社会学史的にはこの一組の捉え方は集団分類の方法としてはもっとも古いもののひとつである。このテンニースの分類ののちに社会学では社会集団の分類法が数々唱えられたが、とくにチャールズ・クーリーの「第一次集団と第二次集団」の分類法や、ロバート・マッキーバーの「コミュニティとアソシエーション」の分類法は、いずれも前近代的で自然発生的な集団と近代的で機能的な集団に二分しているという点でテンニースの二分法に類似している。