インブリード

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インブリードとは、馬・犬・レース鳩などの家畜及び愛玩動物の近親交配のこと。日本においては競走馬や肉牛(特に繁殖牛)の生産・選別・血統を語る際に使用されることが多く、この記事では競走馬のインブリードに限って説明する。

概要[編集]

競走馬の生産において最も重要視されるのは、良質な遺伝子を親から受け継がせることである。そのため古くから優れた遺伝子を持っているとされる馬の子孫同士の交配が行われており、優秀な遺伝子を持っているであろう種牡馬に良質な繁殖牝馬があてがわれるようになっている。インブリードは良質な遺伝子が少しでも発現するようにするための方法である。

しかし相手は生き物である。良質な遺伝子ばかりが仔に引き継がれるとは限らず、虚弱体質の遺伝子、短命の遺伝子、精虫が少なくなる遺伝子(牡馬)、仔が受胎しにくい遺伝子(牝馬)など良くない遺伝子ばかりが受け継がれることも珍しくない。

血統表においてインブリードを表す時は数字を用いて ◯×△ と表記する。この数字は共通して現れる祖先の位置を表すもので、当該馬の両親を1、その親に対しては2・3・4と増えていき、概ね5代前までに共通する祖先がある場合をインブリードとして扱う。一例として父方の祖母の祖父と母方の父の父が共通な場合は「◯◯(馬名)の4×3」と表記する。
競走馬の血を構成する血量は両親からは50%ずつ、祖父母からは25%ずつ、曽祖父母からは12.5%ずつ、高祖父母からは6.25%ずつ、5代前からは3.125%ずつ受け継ぐと考えられており、これが後述する奇跡の血量と関わってくる。

奇跡の血量[編集]

生産者界隈では生産馬がいわゆる奇跡の血量を持つような配合を目指す事が多い。

奇跡の血量とはインブリードを行った際に特定の祖先の血量の和が18.75%になったもので、3代前の祖先と4代前の祖先が共通の場合がこれに当てはまる。3代前と4代前が共通でなくとも成立する場合があるが、代を経るに従って成立が難しくなるため、生産者に余程かのこだわりがあるか、対象の馬が大種牡馬でない限り見ることは少ない。
これより濃いインブリードでも競走馬は生産できるがデメリットが大きくなる。逆に薄くすることも出来るがインブリードの恩恵は受けにくくなる。

1940年代にアメリカで奇跡の血量について統計を基にした理論として発表され、日本でも紹介された。これが広まったのはトキノミノルが無敗で東京優駿を制した時と言われる。

極めて濃いインブリードを持つ馬[編集]

  • Coronation V - トウルビヨンの2×2。つまり父方・母方双方の祖父がトウルビヨン。激しい気性の持ち主だったが、何とか競走デビューすることは出来、凱旋門賞で4馬身半突き放す圧勝を見せた。しかし繁殖入り後は不受胎が相次ぎ、受胎しても死産に終わった。だが妹の方は普通に仔を成せている。
  • Flying Fox - Galopinの2×3。つまり父方の祖父と母方の曽祖父がGalopin。激しい気性の持ち主だったが、虚弱ではなく英国三冠を達成し、種牡馬としても大成功を収めている。
  • エルコンドルパサー - ノーザンダンサーの4×3、ネイティブダンサーの4×5、Specialの4×4、Forliの5×5・4、Thongの5×5・4。オーナーの渡邊氏は血統に造詣が深く、この配合は渡邉氏が自ら考案した配合である。

科学的な根拠[編集]

インブリードに科学的な根拠はなく、奇跡の血量にも科学的な根拠はない。生産者の間で経験則として広まったに過ぎない。