よみもの:忙しい人のための『宇宙よりも遠い場所』
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宇宙よりも遠い場所のあらすじを、時間のない人向けに紹介します。
あらすじ[編集]
高校2年になった玉木マリ(以下キマリ)は自ら手帳に書いた「高校に入ったらしたいこと」一覧を見つけ何一つ出来ていないと涙ぐむ。最初に学校をさぼってあてのない旅に出ようとするが登校してしまう。一方で学校帰りの駅で同じ高校の生徒と思われる女子が目の前で落とした100万円入りの封筒を拾う。翌日校内で親友のめぐみと封筒の持ち主を探すがトイレに向かうそれらしい女子を追うと個室の中で泣きながら何か叫んでいた。個室から出た彼女は封筒を見るなりキマリに礼を言う。彼女は小淵沢報瀬。南極観測隊員だった貴子の娘で母の書いた著書「宇宙よりも遠い場所」をキマリに見せながら3年前に遭難した母を探すために南極に行きたいという。100万円はアルバイトで貯めた渡航費用だった。報瀬の事が気になっていたキマリは放課後上級生にお金を要求される報瀬を見かけて助け南極行きの夢を手伝いたいと告げる。報瀬はキマリに一緒に南極に行くことを提案し本気なら民間に移譲された観測船が見学できる広島の呉まで来るよういう。キマリは迷いながらも東京を経由して新幹線で広島へ向かい列車内で再会した報瀬と呉まで同行する。観測船を前にその巨大さに圧倒される二人。
めぐみの調べで民間南極観測隊の窮状を知ったキマリは下校時報瀬に問い質すが報瀬も反発して先に帰りかける。しばらくして戻って来て「作戦」があるから渡航費用のためのバイト探しを続けるようキマリに話す。道すがらキマリはコンビニのバイトを見つけ応募する。バイト先には報瀬とキマリのやりとりの一部始終を見ていて感銘を受けた同い年の日向がいて自分も南極に行きたいという。日向は高校に行ってないが高認資格をもち来年からの大学受験勉強前に何か成し遂げてみたいという理由を話した。
報瀬のいう「作戦」とは新宿歌舞伎町で行われる観測隊員の親睦会の解散時を狙って店から出てきた男性隊員と懇意になりそのコネで同行者になろうというものだった。色仕掛けを伴うその作戦は失敗し顔見知りの女性隊員から逃走するがキマリ、報瀬、日向は捕まり喫茶店で南極へは連れていけないと説教をされ電車で群馬への帰路に。報瀬はまったく諦めてなかったが作戦内容が酷いという理由で日向とキマリは報瀬を南極行き作戦のリーダーから解任した。
報瀬宅で新たな作戦会議中日向は女子高生が南極レポートを行うという記事をスマホでみつける。レポーターは高校1年で白石結月といい報瀬は芸能事務所の電話を調べて自分が同行できないか掛け合うよう日向に命じるが自分でやれと押し問答しているところに白石結月本人が現れる。結月は南極に行きたくないので代わりにレポーターの仕事を引き受けないかと報瀬にもちかける。興奮する報瀬だったが結月のマネージャー兼母親の民子が現れ話はお流れに。その夜報瀬宅に民子が訪れ結月を説得してくれたら同行者として推薦すると報瀬に話す。結月を説得したいキマリ、報瀬、日向だったが先に結月がどうして南極に行きたくないかを知るべく結月が泊まるホテルまで行き近くのファミレスで尋ねた。結月は南極に行っているあいだに高校で友達を作れないことに焦っていた。生涯友人がいなかったことを告げた結月を不憫に感じたキマリが結月の頭を抱きしめるが南極行きの説得をする話に進展がないまま解散となる。結月が東京での仕事の為に群馬を離れる朝、結月はホテルの窓からキマリ、報瀬、日向の3人が梯子を使って南極行きを誘いに来る夢を見る。目が覚めてSNSのログを見ると高校の友人二人共がSNSから抜けていた。ドアノックの音で出てみるとあの3人が立っていた。夢の中の3人と重なって見えた結月は号泣し3人となら南極行きを受けると民子に連絡し、仕事の前に4人で国立極地研究所に向かい南極に関する展示を体験する。
南極行きが決まった報瀬とキマリは学校に休学届を出す。キマリはなかなか親に言い出せないがなぜか母親は南極行きの事を先に知っており叱られる。南極行きは試験で赤点を取らないことを条件に認められる。
観測隊員の基礎訓練を行う合宿のため集合場所の立川駅にキマリ、報瀬、日向、結月の4人が現れるが迎えに来た観測隊副隊長のかなえの運転する車が旧型のバンで南極チャレンジプロジェクトの先行きに不安を感じながらも同乗し高原にあるホテルに着いた4人は南極に関する講義を受ける。最初に観測隊隊長の藤堂吟から挨拶があったが報瀬だけが浮かない顔。翌日ルート工作と呼ばれるコンパスやGPS計測器を用いた移動訓練を行いその晩はキャンプで一晩を過ごす。消灯後キマリが報瀬に隊長を知っているか尋ねると、母の高校時代からの知り合いで隊長の吟だけが南極から帰って来て母の消息不明を告げたという。それ以上報瀬に尋ねられないキマリ。明け方早く起きたキマリは外に出て隊長の姿をみつける。何がみえますかと尋ねると黙って手を取る隊長。岩の上に上ると朝日が差し込み美しい。他の3人を起こしに行くキマリ。岩の上に立ち朝日を見ながら南極に思いを馳せる4人。
キマリの高校では報瀬と共に全校生徒による壮行会が行われた。4人による東京での出発前レポートの仕事を終え自宅に戻ったキマリは南極行き用の荷物の準備中に見つけたゲーム機をめぐみに返そうとめぐみ宅を訪れた。しかしめぐみは酷く浮かない様子で応対した。いよいよ出発の前日、クラスの送別会で浮かない顔のめぐみに笑顔を向けるキマリだったが共に下校すると帰りに寄った神社前でキマリと報瀬に対する悪い噂が流されているとめぐみから聞く。ショックを受けるキマリだがそこへ報瀬と日向が現れめぐみに日向を紹介するキマリ。噂のことをめぐみに再確認するキマリ。噂に激怒した報瀬が横やりをいれて話は沸騰するが日向が悪意に向き合うなと言い鎮める。まだ納得がいかない報瀬を誘って5人でカラオケに行き怒りの発散を提案するキマリ。始めは抵抗していた報瀬だが周囲は強引に勧め大声で歌う。カラオケの帰りキマリはめぐみと二人になり今まで様々な場面でめぐみに頼って迷惑をかけてきたことを詫びめぐみからの自立の意味を込めて南極行きの決意を述べる。
翌朝、出発の準備を済ませ家から出たキマリを待っていたのはめぐみだった。めぐみはキマリに絶交を宣言する。めぐみいわくやっかみから悪い噂を流したのは私で今までキマリの面倒を見てきたのは優越感からでキマリを必要としたのは自分だといい、それを変えるために関係を断つ必要があると嗚咽しながら告げる。キマリは泣きながら一緒に南極にいくかと尋ねる。めぐみは断り立ち去ろうとするところにキマリが抱きつき耳元で絶交無効を宣言して南極へ旅立っていった。
観測船にはオーストラリアのフリーマントルから乗るがその前にシンガポールを経由する民間航空便で日本を離れるキマリ達4人。シンガポールに到着してから慣れない海外旅行に結月以外の3人は大はしゃぎだが日向がパスポートを紛失していることに気が付く。大使館で再発行をしようとするが到着が遅れるので報瀬は観測隊の厳しさから遅れを不安に思う。日向と報瀬はホテルで同室になるがそこで日向は3人で先に行くよう報瀬に提案する。報瀬が一緒に行くというと気を使われるのが苦手だと白状する日向だったが話はそこまでだった。翌朝空港のカウンターで結月が航空券の再発行を求めるが1月後まで空きがなく日向を除く3人で先にフリーマントルに行くかどうかで揉める。報瀬は4人で行くことを最優先に手持ち資金の100万円を使って予定が合うビジネスクラスの航空券4人分を購入してしまう。呆れながらも喜ぶ日向、キマリ、結月。安心して食事を始めるがその最中に航空券をしまおうとバックを開けた報瀬はそこに日向のパスポートがあるのに気づく。入国審査後に日向が報瀬に預けていたのを忘れていた。航空券は払い戻して元の予定で出発することになったが騒動の罰として報瀬と日向はドリアンを食べさせられることになった。
フリーマントルに到着した4人は早速観測船を前にレポートの撮影を始めるが報瀬のあがり症は酷い。かなえに案内されて4人部屋の船室に入る。出港前に船内のレポートを済ませることになり船橋に行くが報瀬に話させるとレポートにならず結月に交代。報瀬はポンコツの張り紙を顔に張られ隅の方へ。隊長の吟から4人の船室は以前報瀬の母貴子が使っていたと聞かされなにか痕跡がないか探すが見つからない。4人は出港準備の手伝いを始め買い物に出かける。しかしなぜこの時点で食料品を買い込むのか不安に思った結月は4人でかなえに本当に南極に行けるのかと問い質す。しかしうまくはぐらかされてしまい結月の提案で独自に調査を開始する。女性隊員が甲板で電話の相手と今回の調査は困難だという話をしているのを耳にする。隊員が酒場で飲んでいる席に近づき重大な計画があることをつきとめるがそれが何かまではわからない。夜、船室で消灯して横になると報瀬のベッドの上に蓄光塗料で星空が描かれており貴子が遺したものではないかと思われた。物思いに耽る報瀬は甲板に出て夜空を見上げていると吟が声をかけ民間観測隊の挑戦と挫折を話してくれた。翌日の決起会で同行者として紹介される4人。自己紹介で報瀬は隊員の表情を見て言葉に詰まるが日向に背中を押されてレポート用に書いてもらった原稿をアレンジした南極行きの決意を述べると大受けで隊員の士気は高まった。
準備が整い南極へ向けて出港する観測船。キマリ、報瀬、日向、結月の4人も港にテープを投げて離れ船内でレポーターとしての仕事を始める。同乗する研究員にインタビューして回るが報瀬の行動が一々要領を得ない。レポートが終わり調理の手伝いに行くと料理長の弓子からジャガイモの皮むきを頼まれる。船が揺れしゃがんで作業していると4人で一馬力と評さるがケガをしないようゆっくりでいいとも言われる。艦上体育許可の船内アナウンスがあり弓子に説明を受け4人は甲板に出て運動を始める。他の隊員と同等の速度で走り込んだキマリは船を1周しただけで動けなくなってしまう。部屋に戻ってバーベルや腹筋運動で体力づくりを目指すが長くは続かない。入浴の時間になり4人で海水風呂を経験。夕食の時間になり洗濯当番を忘れていた報瀬は慌てて食事をかきこみ間に合わせる。慣れない一日はなんとか過ぎたが4人の疲労も大きく先行きが心配。他に選択肢は無いと強がる報瀬だが結月の様子がおかしくなり嘔吐してしまう。他の3人も同様に酔い止め薬が切れて船酔いとなり船室で横になって船の揺れに耐える。様子を見に来たかなえから薬を飲んで休むよういわれるが食事は欠かさないよう指導される。4人は無理に食べるが全部吐いてしまうことを繰り返し、艦上体育で外に出た時にクジラを見ようとしたキマリも戻してしまう。保奈美に船室の荷物固定が済んでいないと指摘され対処するがこれから南極大陸に近づくにつれ海は大荒れになると脅される。ベッドで横になったまま結月は本当に南極に行って役に立つのかとぼやくが報瀬はここでも他に選択肢はないと強がる。キマリは報瀬の言葉を遮って選択肢はあったし自分たちで選んだと反論する。4人が廊下にいたところで大きな揺れに合い全員で重なるように倒れた。吹っ切れたのか4人は目配せして最後に結月が外に出てみたいと提案。甲板への扉を開けると揺れで船の端まで飛ばされ危うく落ちそうになる。暗がりで水を被ったが舐めるとしょっぱく海水であることに驚く。船乗りとしては非常識で危険な行動だったが彼女達に何かを残したようで船酔いも解消し船に乗れるようになったと弓子からも評される。船内アナウンスで流氷発見の知らせがあり甲板に見に行く4人。いよいよ南極はすぐそこにまで迫っていた。
長縄跳び大会で最下位になった悔しさから帰りにも行われるという大会に向けて甲板で縄跳びに励む4人。そこへ隊員の財前敏夫がやってきて報瀬に向かって告白する。敏夫が好きなのは報瀬ではなく隊長で高校生の中に隊長の古くからの知り合いがいると知って尋ねてきた。船室で弓子を加え敏夫の恋話を聞くが弓子はやめておけという。報瀬は十年以上前から吟を知っているが写真があるわけではなく敏夫の押しの強さに4人は呆れる。ただ隊員の恋の行方を番組でレポートするのは落ち気味の再生回数の回復につながるのではと考え敏夫は参加させずレポーターだけで協力することにした。4人は食堂でソフトクリームを食べながら報瀬に昔の隊長を思い出してもらうがちょっとずれた人という程度でよくわからない。報瀬も幼稚園児だったので恋愛などわかるわけがないという。出航の前の晩に報瀬は吟と話していたのではといわれてもあれば偶然だという。隊長に突撃レポートしてみてはどうかという話になり隊長室に押しかける。報瀬との関係について距離があると吟から聞いていたかなえは報瀬が現れず残念な表情。隊長は観測に関すること以外答えないというが女子高生の積極性に押されていた。船橋に戻った吟は船長から報瀬との仲はどうかと尋ねられる。私を許してないのではと答えると隊長として隊員とはよく話しておくべきと船長が進言する。報瀬一人を呼び出した吟は単刀直入に私のことをどう思っているか尋ねる。報瀬は恨んでいないというが本心なのかと問われるとわからないといって涙ぐむ。報瀬にしてみれば母の帰りを待つ毎日が途切れることなく今も続いていて南極にいくことでそれを終わりにしたいと吐露する。ちょうどそのころ観測船が定着氷にぶつかりラミング航法が始まる。氷に全力でぶつかり船の自重で氷を砕く砕氷船ならではの豪快な航法。過去に日本が割り当てられた昭和基地周辺は接岸が難しい場所で様々な工夫を凝らして接岸に挑んできた。それは敗戦国だった日本に課せられた制約だったかもしれないが苦労が多い程燃えるとかなえや報瀬の回想内で吟は話す。そして到着を目前に吟はひとり甲板に出て貴子を思い出し涙していた。敏夫は声をかけられず弓子とやけ酒を飲む。
ラミングが終わり観測船は停止した。双眼鏡で基地までの距離を確認する船長。かなえから船の外に下りてよいといわれる4人。いよいよ上陸だが船のタラップを降りて半径5メートル以内に着地するだけだ。4人は誰から降りるか決めて報瀬に譲った。報瀬は逆に皆の手を取って4人で同時に降り立った。キマリや結月が報瀬に喜びの声をかけると報瀬は南極を目指した自分をバカにしてきた人への恨み節を炸裂させざまーみろと連呼する。キマリ達3人も呼応して4人でざまーみろを連呼していると甲板から4人を見守っていた観測隊員全員も隊長の掛け声でざまーみろに加わった。
観測船に搭載されている大型ヘリで昭和基地に移動する4人だったが報瀬だけはあまり心が動かない様子。基地では個室が与えられ南極とはいえ快適な生活環境を元に三年放置されていた基地復旧のための様々な仕事や調理の手伝いに励む。忙しいことは嫌いではないという結月は他の3人に今まで一緒に旅をしてきたことを改めて確認していぶかしがられるが、基地に来たときにメールが届き出発前に受けたドラマのオーディションに合格したことを明かす。同時にドラマの撮影が始まると多忙になり皆と一緒にいられなくなる不安を口にするが、そもそも4人とも普段の生活は別々だしもう親友だから心配ないというキマリに対し結月はいつ親友になったのかと問う。言葉通り受け止めたキマリは泣きそうになるがその場は日向が取り繕う。結月の疑念は深くドラマの仕事を受ける代わりに友達誓約書を書いて欲しいと3人に願い出る。唐突な結月の行動に報瀬はそんな書面は無駄だと言いかけるのを遮ってキマリが泣きながら結月を抱きしめる。わかんないんだよねと声をかけるキマリに複雑な表情の結月。夕食のメニューは具材が半解凍のパーシャル丼だったが、キマリがおかわりで席を立ち食後の結月の誘いを断ると日向と報瀬が結月に対してフォローに入る。日向の言葉ではないという友達観に続き報瀬曰く友達とは曖昧なものでいつ関係がなくなっても仕方がない、だからこそいつでもつきあえると持論を述べるが結月はまだ納得できない。一方でキマリは乗船中に船酔いで出来なかった結月の誕生祝いをしようとケーキを準備していた。日が落ちない南極の夜に結月の部屋を訪れたキマリは自分のスマホのログを見せながら出発前に絶交されたが親友と思っているめぐみとの関係を説明する。SNSでメッセージを送りあうだけで相手の生活の様子が頭に浮かぶのでこれが友達かなと話した。そこへクラッカーとケーキを持った日向と報瀬が乱入し結月初の友達による誕生会が行われた。泣きながらくしゃみでケーキの火を消し飛ばす結月に笑いあう3人だった。翌日の結月は3人とは別行動でキマリに昨日のお礼をしようとSNSアプリをひらいて何度もメッセージを訂正していた。結局、ありがと、ね。と送り別の作業場で受け取ったキマリが友達は「ね」一文字で表せると名言っぽいことをいい、ね、と返すと結月からももう一度、ね、が返ってきた。
昭和基地からは年末に日本に向けてライブ放送を行うがそのリハーサルの日、キマリの顔は日焼けで狸のようになっていた。映像が繋がると日本からキマリの母と妹のリンがキマリの顔を見るなり爆笑する。続いて日向の友人が紹介され訝しがる日向が映像を確認すると日向の様子が急変し後を報瀬に任せて部屋を出ていった。一方吟とかなえは追加の機材を航空機で受け取りある計画の準備を進める。リハーサル後に4人は昭和基地からの年賀状送付の作業をしていたが日向の様子が変でキマリが話しかけると急にトイレに立った。何かに気が付いた報瀬は日向を追って外に出ると管理棟前の雪山で大暴れしている日向を見つける。あまりの激しさに声もかけられない報瀬だったが気が済んだ日向は静かになって管理棟に戻り報瀬は心配そうに影から見送る。報瀬が遅れて管理棟に戻ると天候か回復したので調査同行を許された4人だが日向は既に平静を装い不審に思う報瀬。調査同行中も日向が気になって身が入らない報瀬だったが帰りの車上で何か困ってないか日向に尋ねるも無難な返答をされる。大人組から麻雀に誘われた報瀬は基地宛に日向の友人からメールが来ていることを耳にする。日向の様子が気になって仕方がない報瀬は迷いながらも通信室にメールを確認しに行く。メールを覗き見た直後日向、キマリ、結月が現れ日向からメールを見たのかと追及される。少しだけ見たと返すが様子がおかしい日向に対して涙を見せながら困っているならちゃんと話して欲しいと打ち明ける報瀬。折れた日向は3人を自室に呼んで悩みを打ち明ける。リハーサルで友人を名乗った3人が高校時代の部活のチームメイトで日向を持ち上げて大会選手に選ばれた後先輩に3年に譲るのが筋だろうと詰問されるとそれに媚びて保身の為に日向の悪評を流し日向を退学にまで追い込んだと話した。事情を知った3人は翌日の地質調査同行でも身が入らない。日向から忘れろと言われキマリと結月は納得するが報瀬は見過ごせなかった。調査の作業後キャンプとなるが水くみに日向だけを誘った報瀬は友人を名乗る3人が許せないと打ち明ける。報瀬は私ではないからと日向は諫めるがその気持ちに感謝して手を頬に寄せ礼をいう。それ以上はいらないとデコピンしておいて報瀬を抱きしめるがキマリが声をかけるとテントに戻る日向。額を押さえて見送る報瀬。
ライブ中継当日。出番を待つ日向は元チームメイト3人を許したら楽になるかと報瀬にぼやく。許せばほっとする彼女らを見るのは腹が立つがそれは心が小さいなと自分を責めて涙ぐむ日向を見て報瀬は心を決めてカメラに向かう。始まる前にと前置きをして今後三宅日向に関わらないよう元チームメイトに語り始めるが言葉につまる。すかさずキマリが日向は私達と最高の旅を楽しんでいるとカメラに向かって言う。止めようとする日向に友情じゃないですかといいながら抱き着く結月。報瀬も日向は部活での出来事から立ち直っているといい人を傷つけたのだからそのモヤモヤした気持ちを持ち続けて生きていけと、それが私の友達を傷つけた代償だと泣きながら叫ぶ。結月に抱えられながら泣き崩れる日向。いまさら何よ、(ふ)ざけんなよ、までいう報瀬。一部始終を見守っていた隊員達はあっけにとられていたが隊長の吟は何かを決意したように準備しようかと言い立ち上がった。中継も終わり年越しそばを食べ終えたキマリは年末のテレビ番組の録画で鐘を見て私たちも煩悩落としをやろうといい出し4人で基地の外に吊ってあるドラム缶製の鐘をついた。
報瀬は基地の自室で机に伏して物思いに耽っている。母が消息を断ったことを知らされたその日から夢の中にいるような気持ちが今も続いている。内陸旅行隊への同行が許された4人だが報瀬は迷っていた。母が遭難した場所へ行くのである。ラジオゾンデの放球レポートにも現れず一人で峠の茶屋を設営しながら考え続けていた。放球を終えたキマリがノープランで報瀬に話かけるが逆にキマリが泣き出したので次の仕事の玉ねぎの皮むきをしながら報瀬は心の中を語る。落ち込んでいるわけではなく普通過ぎる日常に戸惑っている。景色は写真のようだし何のためにここまで来たのか。目的地に着いたらもう先は無くもし何も変わらなかったら今のこの気持ちを一生抱えていくことになると話した。
内陸旅行出発を前に南極バーベキュー会が開催された。焼けるそばから食べないと冷えてしまう忙しい食事。報瀬が迷っていると聞き心配してキマリ達3人に声をかけた弓子には何もしないのも友情と返答する。いい友達だと弓子に言われ舞い上がる結月。挨拶を終えて離れた場所にいた吟に声をかける報瀬。母がいた場所にいくべきか尋ねるとそれを聞くくらいならやめておくよういう。なぜ行くのか尋ねる報瀬に自分の思い込みだと答える吟。思い込みが不可能を可能にしてきたのだと。報瀬だって今まですべて自分で決めてきたのでしょうといわれ心が動く。自室に戻った報瀬はアルバイトで貯めた100万円を一枚ずつ取り出しどんな仕事で得たのかを確認しながら今までの思いを固めた。出発の日、荷物が多いと隊長に指摘されるキマリ。遅れて現れた報瀬をみて皆笑顔になり手作りの旗の前で記念写真に納まる。
ヘリで雪上車のある内陸まで一度移動し機材を積み込んでから目的地を目指す。時速5キロの遅さであるが揺れる社内でトランプをする4人。補給作業のために外に出ると息をするのも辛い寒さ。標高も上がり荒天が予想されると雪上車をロープで繋げそこを伝って移動するよう指示される。ブリザードになる車外。母がいなくなったときもこうだったか吟に尋ねる報瀬。その時の様子を克明に伝える吟。眠れない報瀬を気遣い南極に連れてきてくれたことに礼をいうキマリ。ただ4人だったら北極でもよかったと言い添える。報瀬はそれを聞いて今は3人の友達が一緒に旅をしてくれていることを実感し亡き母当てに友達が出来たとメールを送る。一行は目的地の天文台建設予定地に到着する。名前は小淵沢天文台といい隊長が鉄塔を見上げ涙する。吟を見てまるで他人事のように母のことを思い出していると口にする報瀬にキマリ達3人は何か遺品がないか地下の倉庫を探し回る。見つけたノートパソコンには貴子と幼い報瀬の写真が貼られていた。ノートパソコンを報瀬に手渡すキマリ。昭和基地に戻り報瀬は自室でノートパソコンの電源を入れると起動した。ログインパスワードは報瀬の誕生日だった。メールソフトが受信を始める。流れてくる件名に自分が送ったメールのタイトルばかりが次々に表示されていく。その数は1000件を超えても止まらない。母に送ったメールを今自分で受信し母はもういないことを突き付けられ慟哭する報瀬。部屋の外で様子を伺っていた3人も号泣していた。昭和基地の外は久しぶりに星空を迎えていた。
南極滞在も残すところあと3日、日々の基地生活にすっかり慣れたキマリ達だったが4人が別行動を取ることも多くなっていた。そんな中アイスオペレーションという南極の氷採取の作業に参加する4人。スノーモービルに同乗して現地に向かう。南極から持ち出せるのは氷だけなので唯一のおみやげでもある。早速かき氷にして食べるが報瀬はペンギンに夢中になるあまりペンギンに囲まれて動けなくなってしまう。これから冬に向かう南極で星が綺麗でオーロラも見えるとかなえから解説されオーロラと南極星をまだ見ていないことを思い出すキマリ。ペンギンに群れている報瀬をからかいながら撮影する日向。氷塊にくるのも今日が最後と言われ越冬できないかと言い出すキマリ。学校や家族、結月のドラマなど現実には無理な希望だがもう一度4人で南極に来ることを皆で約束する。そして最後にやりたいことがあったらいうよう隊長から言われていることを話す結月。全員で遊びたいという理由でソフトボールを選ぶ4人。ピッチャー吟で打者敏夫の場面、強烈なデッドボールを目にして臆した報瀬だが母の貴子は打ったと聞いて打席に立つ。貴子を思いながら投げる吟のボールを見事打ち返しボールはセンター日向の頭上を越え彼方まで飛んで消えた。
基地内に戻った4人は報瀬が髪を切りたいというので手伝う。カット担当は日向。報瀬の希望でロングをボブにするほど大胆にカットした。夏隊の帰還式に現れた主賓の4人だったが報瀬の髪型をみて驚く吟とかなえに笑顔で応える報瀬は吟曰く笑うと貴子そっくりだという。式典の挨拶で吟は日本で初めて女子高生の観測隊員が南極で過ごしたことに触れ周囲も不安だったが立派に隊員をやり遂げたと称えた。帰っても越冬している我々を時々思い出して欲しいと述べる。続いて夏隊代表として報瀬が挨拶。報瀬は元々母を夢中にさせる南極は嫌いだったが気持ちを整理したくてここまで来たという。母が宇宙よりも遠い場所と呼んだこの場所は剥き出しで誰も守ってくれない。そこですべてをさらけ出して自分に向き合い乗り越えてきた。母がここを愛した理由は場所だけでなく仲間と過ごす時間と空間だと述べまた来ることを誓った。
出発の日、4人は隊員から色々な餞別を受け取り結月は氷見が持参した自分のCDにサインをする。ドラマへの期待も聞いた。ヘリに乗り込む前にかなえはバンで迎えにいったときの話でプロジェクトを中止にできないと勇気づけられたという。隊長をよろしくとかなえに告げる報瀬。言うようになったと返す吟に母の形見のノートパソコンを取り出して無くても大丈夫ですからと笑い手渡した。4人を乗せたヘリは昭和基地の上空を横切り観測船へと飛び立っていった。
最後のレポート収録を観測船の甲板で行うことにした4人。南極に降り立った時の服装で準備をしているとキマリが空にオーロラが出ていることに気づく。うまく映らないという日向。それでいいというキマリ。4人が輪になって横になりオーロラを見上げていると報瀬のスマホに母からのメールが届く。母のノートパソコンに残されていた未送信のメールを吟が送ったものだった。本物は一万倍きれいとコメントされたオーロラの写真が添付されていた。本物のオーロラの下で知ってると応える報瀬。
国内の空港まで帰ってきた4人。キマリはここで別れようという。もう一緒にいられないんですかと不安そうな結月に逆で一緒にいられなくても一緒にいられる。もう私達は私達だからと名言っぽいことをいう。やらなきゃならないことがたくさんあるからという報瀬。それが終わったらまた旅に出ようというキマリ。4人でと念を押す結月。報瀬は100万円あるしという日向にそれはもうないという報瀬。あの場所に置いてきたという。
それぞれが家路について家族や大切な人と再会する。キマリは自分の部屋に戻りSNSで帰宅をめぐみに伝えると残念だったなと即座に返信がある。オーロラをバックに自撮りした写真が添付された私は今、北極だというメッセージだった。なんで―と何度も言いながら嬉し泣きするキマリだった。