ウニ
ウニは、棘皮動物門ウニ綱に属する生物の総称。楕円体状で中空の殻と、動かせる棘をもつことが特徴[1]。すべての種が、岩などの基質の表面に張り付いたり、砂中に潜ったりして暮らす底生生物(ベントス)である。複数の食用種を含む。
形態[編集]
棘皮動物の特徴である、5放射相称の体をもつ。すなわち、体の中心を軸にして5回同じ構造が並ぶような体になっている。海岸などでウニの殻を拾い、そのイボイボの付き方を観察すればわかりやすいと思われる。またコシダカウニでは、裸状帯域(トゲが生えてないとこ)の並び方に5放射相称がすぐに見て取れる。殻はおおむね楕円体状で、棘疣とよばれるイボイボに覆われている。このイボイボに棘がくっついている。また、管足と呼ばれる、先端が吸盤状にくっつくようになった腕をもつ。この腕を使って、歩いたり基質にくっついたりする。また、肉眼ではわかりづらいが、ウニの表面にはペンチかピンセットに似たような非常に短い棘も生えている。これは叉棘とよばれ、外敵からの防御や体表の掃除に使われているとされる[2]。ラッパウニやシラヒゲウニなどはこの叉棘に毒がある[3]。通常口側を基質に向けて暮らしている。つまりひっくり返すと口が現れる。口器はアリストテレスのちょうちんと呼ばれ、非常に複雑な形をしている。口側を裏とすると、表側に肛門が開いている。そしてそのまわりに、5個の生殖孔が開いている。この口と肛門をつなぐように消化管が通り、そのまわりに生殖巣が配置されている。我々が食べる部分はその生殖巣である。
生態[編集]
底質にくっついて過ごす種の多くは、主に大型の藻類を食べる[4]。砂に潜ってすごす種の生態研究は少ないが、一般にはデトリタス食、つまり泥の中の有機物を食べて暮らしているとされる[5]。タワシウニのように、岩に穴を掘って暮らすウニもいる。そういった種の掘った穴では、家主が死んだりしていなくなったあとにムラサキウニなどの他のウニや、その他の生物が利用する場合がある[6]。また、ガンガゼの長い針はヘコアユなどの魚類のすみかとなっていることもある[7]。
生活史[編集]
繁殖は通常放卵放精で行われる。受精卵は原腸胚、プリズム幼生を経て、プルテウス幼生(エキノプルテウス幼生)となる。プルテウス幼生のあいだ、プランクトンとして海中を漂った後、稚ウニとなって着底する。幼生の着底後の変態は藻類などが分泌する化学物質によって促されることが知られている。たとえばアカウニやムラサキウニでは紅藻のピリヒバの分泌するものがウニの変態を促進する[8]。
分類[編集]
丸っこい正形類、平べったい不正形類に大きく分けられることが多いが、必ずしも分類学的なタクソンとは一致しない。丸っこいものはムラサキウニやバフンウニのように基質に張り付く種類、平べったいものはカシパンやブンブクのように砂に埋まって暮らす種類である。
以下、WoRMS(2022)[9]に基づく。
Cicaroidea亜綱
- キダリス目 Cicaroida - 棘が太くていかついオウサマウニなど。
真ウニ亜綱 Euechinoidea
- Aulodonta下綱
- Carinacea下綱
- Irregularia下綱
- Atelostomata準綱
- Holasteroida目 - トックリブンブクなど。
- ブンブク目 Spatangoida
- Neognathostomata準綱
- タマゴウニ目 Echinoneoida - タマゴウニなど。
- Luminacea上目
- タコノマクラ目 Clypeasteroida - タコノマクラなど。
- マンジュウウニ目 Echinolampadacea目 - マンジュウウニ、ハグルマカシパンなど。
- Atelostomata準綱
なお、上位の分類としては棘皮動物門に属する。棘皮動物門には、ヒトデやナマコが含まれている。
人間との関係[編集]
生殖巣を食用にする。食用とする種類はムラサキウニ、キタムラサキウニ、バフンウニ、チリウニなど。ムラサキウニにおいては温暖化に伴うとみられる増えすぎが深刻になっている[10]。藻場が食い荒らされることによる他の漁業資源への影響が発生しているほか、ウニ自身が海藻を食い尽くして餌不足になることによって、ウニの身入りが悪くなるという問題もある。そのため駆除や、採集して肥育することで商品価値を高める[11]などの手法で対策が取られている。
ウニの殻は美しく、海岸にもしばしば漂着することからコレクションの対象となる。またアクアリウムでは、水槽の掃除役としてシラヒゲウニが利用される場合がある。
人的被害をもたらすウニもいる。ガンガゼは棘が刺さりやすく折れやすくまた毒があり、下手に触って刺さると非常に痛む。そして比較的普通種であるため、もっとも被害が出やすいウニだろう。またやや深場に生息するイイジマフクロウニも毒針を持ち、かなり強い毒があることが知られている[12]。また、シラヒゲウニやラッパウニなどは叉棘に毒をもつ。そこまで強い毒ではないが、体質によっては重篤化することもあるようだ。
バフンウニやガンガゼなどのウニは、石鯛釣りの餌としても利用される。棘をハサミでバリバリと落として、ウニ通しと呼ばれる器具でハリスを通して使用する。
栗との見分け方[編集]
水槽に栗が入っていてもウニと見分けがつかないのではないか、といったような議論がある[13]。まぁ似てるっちゃ似てるが、もちろん見分けがつかないなどということはない。以下に、ウニと栗の見分け方を紹介する。
- ウニは楕円体状で、針が長かったり短かったりする。一方、栗はほぼ真球状で、全方向に均等に針が伸びている。
- 当たり前ではあるが、栗は地上に降りて歩いたりなにかにひっついたりして生活する必要はない。落下したらそれでおしまいである。なので、形は真球状。しかし、ウニは管足で岩に張り付き、口で海藻を食べて暮らさないといけない。真球状では転がっていってしまうし、口の周りの針が長すぎては食べ物を食べられない。なので楕円体状で、かつ口の周りには長い針は生えていない。この点で、すぐに見分けがつく。
- 動く
- ウニの棘は、よく観察すれば普通に動いている。また、管足でゆっくり歩くし、海藻も食べる。2022年時点で知られているクリには、このような特徴はない。
- ウニには口がある。あと管足もある
- それでも納得がいかないなら、水槽に手を突っ込んでひっくり返してみると良い。栗なら何の抵抗もなくひっくり返せるし、裏には何もない。ウニなら管足でひっついているから剥がすときに少し抵抗を感じるはずだし、裏にはしっかりした口がある。クリにはそういった特徴はない。植物なので。
- 中身が違う
- それでも納得がいかないなら割ってみると良い。クリであれば、その中には焼き栗や栗ご飯にするあの部分が入っているはずだ。残念ながら、ウニに食べる部分が入っているかどうかは時期による。
脚注[編集]
- ↑ 田中颯 『ウニハンドブック』 文一総合出版、2019年、2頁。ISBN 978-4829981658。
- ↑ 田中颯 『ウニハンドブック』 文一総合出版、2019年、3頁。ISBN 978-4829981658。
- ↑ “ラッパウニ”. 串本海中公園. 2022年6月25日確認。
- ↑ Hariis, Larry G; Eddy, Stephen D (2015), “Sea Urchin Ecology and Biology”, Echinoderm Aquaculture, Hoboken, New Jersey: John Wiley & Sons, Inc, pp. 3-24
- ↑ 松田, 春菜; 浜野, 龍夫; 村瀬, 昇 (2008), “山口県東部の馬島沿岸におけるカシパン類とアマモの種間関係”, 日本水産学会誌 74 (5): 816-826
- ↑ Yamamori, Luna; Kato, Makoto (2017), “The macrobenthic community in intertidal sea urchin pits and an obligate inquilinism of a limpet-shaped trochid gastropod in the pits”, Marine Biology 164 (3): 61
- ↑ “危ないお家!?”. 海遊館. 2022年6月25日確認。
- ↑ Kitamura, Hitoshi; Kitahara, Shigeru; Koh, H.B. (1994), “Induction of Larval Settlement and Metamorphosis in the Sea Urchins Pseudocentrotus depressus and Anthocidaris crassispina by Fatty Acids”, Fisheries Science 60 (3): 311-313
- ↑ “WoRMS (2022). Echinoidea.”. 2022年6月25日確認。
- ↑ “藻場のウニ食害「磯焼け」福井の海も 高浜町、漁業者が団結し駆除など対策”. 福井新聞. 2022年6月25日確認。
- ↑ “岩手で「黄金のウニ」計画 二期作で太らせる、ずらす”. 朝日新聞. 2022年6月25日確認。
- ↑ “毒をもつ生物(9)やわらかく、強い毒をもつウニ── イイジマフクロウニ”. 東京ズーネット. 2022年6月25日確認。
- ↑ “ウニは栗に見えるし、その逆も然り説”. デイリーポータルZ. 2022年6月25日確認。