あけぼのばし自立研修センター
あけぼのばし自立研修センター(あけぼのばしじりつけんしゅうせんたー)は、引き出し屋である。クリアアンサー株式会社が運営していた。
引きこもり元海上自衛隊員男性死亡事件[編集]
2017年1月18日に男性 A(当時46歳、1971年生)が、クリアアンサー株式会社(当時の代表:堅物啓和)が運営するあけぼのばし自立研修センターにより自宅から連れ出され、自立支援施設に入所後の2年後に熊本県あさぎり町の研修先の1人暮らしのアパートにて2019/4/25に餓死状態が発見された事件[1]。遺族は関与したあけぼのばし自立研修センターを運営していた業者クリアアンサー株式会社と曙橋自立研修センター くまもと湯前研修所をクリアアンサー株式会社と共同運営していた株式会社常笑(代表:藤岡洋史)を提訴した[2][3]。
施設入所まで[編集]
A(当時46歳、1971年生)は母親(当時77歳)と2人暮らしであり、Aの幼少期は内気で誰に対しても優しかったといい、高校卒業後に海上自衛隊に入隊し、カヌー競技や釣りが好きで、休日には遠方への外出もしていた。3年間の勤務後に退職して企業に就職したが、上司が変わったことが原因で人間関係が上手くいかなくなり、1997年に会社を退職。会社での上司が原因である人間関係が原因で人間嫌いになり、26歳より20年間自宅に引きこもっていた[1][2]。Aは買い物などの外出はできなかったが、自宅では家族との会話があり、洗濯物を取り込んで畳むなどの家事などは積極的に手伝ったり、食事が好きで家族と一緒に食事をしていた[3]。
母親は医師や保健所に相談したが解決せず、2016年にAの父が病死したことがきっかけで、親の死後の息子を心配した母親がインターネットで見つけた業者「あけぼのばし自立研修センター」に依頼し、担当者に「ひきこもりが長期・高齢化するほど解決が難しくなる」と迫られたことで契約した。半年間の費用が918万円であり、そのために自宅を売却し、業者に支払った金額は最終的に1300万円になった。2017/1/18に職員5人が来宅し、母親は職員の訪問を事前に男性に知らせることを強く禁じていた[2]。また、母親がガードマンの同伴を拒否したのに対して業者はそれに応じず、通常職員3名とガードマン2名を訪問させた。職員5名はAを取り囲み、高圧的に施設に入るようにAに迫り、Aは大声で泣き出した。A母親が居間で待っている間、Aの前後を挟むようにして職員が部屋から出てきたが、Aは「ワーッ」と大声で泣いていたといい、その姿が母親が最後に確認した生前のAの姿だったという。母親はAと連絡を取らないように業者から指示されていた[3]。
熊本への移送後と業者の悪質な対応[編集]
Aは1年7ヶ月後の2018/8末に自立支援施設を出所後、熊本県湯前町の研修所に移されることになり、母親は半年間約386万円の追加契約を行った。2回の契約で合計1304万円となり、分割で支払った。自宅が売れないうちは業者から「支払わなければ息子さんをまた家に返しますよ」と電話が掛かってきて、自宅が売れるまでは借金で費用を賄った。業者の支援は壮絶に杜撰な物であり、業者からは月毎に報告書が送られたが内容不十分であり、実際にはAが東京の施設入所中に入院や手術をしており、母親には後から知らされた。契約延長後は業者から報告者すら届かなくなり、担当者 Bに訪ねても返事がもらえなかったという。Aの熊本行きは急なことであり、母親は空港へも見送りに行くことができなかったという[3]。
熊本移住後のAは、「株式会社常笑」(代表:藤岡洋史)が「クリアアンサー株式会社」と共同運営していた「曙橋自立研修センター くまもと湯前研修所」の管理下にて、熊本の介護施設にて勤務し、職場での評判はとても良く、入所者や職員から慕われていたというが、その後に職場を退職し、再びひきこもり状態に戻って孤立したまま深刻な困窮状態に陥り、2019/4/25に熊本県内の研修先の1人暮らしのアパートにて餓死しているのが発見された[3]。遺体はひどく痩せ細っていたという[1]。介護施設の職員はAを気にかけ、Aを復職させるためにAのアパートを訪問していたという[3]。死亡状況は、アパートの部屋の冷蔵庫は空で、業者に事情を尋ねても要領を得ず、金銭や衣服などの遺品も戻らなかったという[2]。Aの熊本への移動後、業者からは表面的な説明しかされず、Aのアパート暮らしが関連業者「株式会社常笑」(代表:藤岡洋史)代表者名義での一人暮らしだったことや、勤務していた介護施設など母親は全く知らず、Aの死後に全て知らされた。Aの死後、母親に業者の担当者 Bから「○○くん(Aの名前)、死にました」というような杜撰な言い方で突然の電話があり、Aが遺体で発見されて家族が駆けつけた際、業者の担当者 Bは「フォローを続けるなら追加費用が必要だった」と言い放ったという。Aの通夜の日に業者の担当者 Bがやってきて、茶封筒に入れたわずか2ヶ月分の不完全な報告書を手渡していったという[3]。
遺族は2021/1/1に関与した引き出し屋である引きこもり自立支援業者2社「クリアアンサー株式会社」(代表:堅物啓和)と、「株式会社常笑」(代表:藤岡洋史)らを相手取り、約5000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した[3]。
引き出し屋を運営していたクリアアンサー株式会社[編集]
引き出し屋「あけぼのばし自立研修センター」を運営していた「クリアアンサー株式会社」(代表:堅物啓和)は多くのトラブルを起こしており、複数の入所者が脱走していた。施設では人権侵害が噂されており、2018/2には入所者の男性(19歳)が研修所近辺の通り沿いで自害した[3]。2019/12時点で4件の民事訴訟、「東京自立研修センター」を運営する子会社の「リアライズ株式会社」(代表:監物啓和)は1件の民事訴訟を起こされていた。子会社の「リアライズ株式会社」は東京都新宿区住吉町や商店街にある使用施設や職員が共通していたことから、実質的な営業窓口会社として機能していたと見られている[4]。
2019/12/23にクリアアンサー株式会社は東京地方裁判所にて破産手続きを開始。2019/11に突然「いわれのない誹謗中傷や誤った情報が報道されている[3]。研修生の安全を守れない」などとして突然閉鎖を通告し、子会社のリアライズ株式会社と共に東京地裁に破産を申し立てた。11月下旬には「くまもと湯前町研修所」が閉鎖に向けて準備を開始し、東京でも両センター職員らがカーパーツ販売事業等で知られる関連会社の「株式会社SPREAD」への異動や退職をしていた[4]。ただし同社は2018年から2019年にかけて役員報酬を大幅に増額している上、2019年11月初めまで入所者を受け入れており「にわかに業績不振に陥るとは信じがたい」(林治弁護士)。また、宇都宮健児弁護士は「責任逃れのために破産したとすれば、極めて悪質だ」と批判した[5]。同社の代理人弁護士は、同社の強引な手法を批判する報道や、相次いだ民事提訴などの「ネガティブ・キャンペーン」による減収が、破産の原因」と債権者集会で説明。また同社社長は「うつ病で答弁できない」とされ、集会では終始沈黙していた[5]。
2020/6/15に宇都宮健児・林治・倉重都の3弁護士があけぼのばし自立研修センターを運営するクリアアンサー株式会社代表者・堅物啓和ら関係者9名に対し、被害者を自宅から連れ出して拉致した際に行った暴行罪、逮捕・監禁致傷罪、その後に引き続き被害者を地下室に9日間閉じ込めた監禁罪で牛込警察署に告訴状を提出し、受理された。これと結託し、医療保護入院と偽って被害者を身体拘束して強制入院させ続けた精神科病院の医師2名と看護師2名も逮捕・監禁罪で告訴した[6]。
出典[編集]
- ↑ a b c 高橋淳 (2021年1月4日). “業者に託したひきこもりの息子 やせ細り、一人息絶えた”. 朝日新聞DIGITAL. 2021年1月12日確認。
- ↑ a b c d 高橋淳 (2021年11月20日). “ひきこもりの息子、すがった先は悪徳業者だった 母の後悔届かぬ返事”. 朝日新聞DIGITAL. 2021年11月20日確認。
- ↑ a b c d e f g h i j 加藤順子. “引き出し屋問題 破産手続き中のひきこもりの自立支援業者らを遺族が提訴”. Yahoo!ニュース. 2021年11月26日確認。
- ↑ a b 加藤順子 (2019年12月25日). “ひきこもり支援うたう引き出し業者「あけぼのばし自立研修センター」関連2社が倒産”. Yahoo!ニュース. 2021年11月26日確認。
- ↑ a b “ひきこもり支援うたう「自立支援業者」が破産、2000万円支払った女性「返金もなく悔しい」”. news.nicovideo.jp (2020年3月31日). 2020年4月1日確認。
- ↑ “「ひきこもり支援」関連業者に対する告訴状況に関する記者会見”. 希望のまち東京をつくる会 (2020年8月3日). 2020年11月15日確認。