B級タニマチ
B級タニマチ(びいきゅうタニマチ)とは、主流ではないマイナーなバンドやお笑い芸人、アイドルのファンになり彼ら彼女らを推しにする行為のこと。なお、「タニマチ」とは本来、相撲業界でスポンサーのことを指す言葉である。
概要[編集]
普通はアイドルの出世を喜ぶのがファンのあるべき姿だが、相手がB級ともなると永遠に出世しないので、いつまでも囲っていられる利点がある。故にあえてB級アイドルやバンド、お笑い芸人を選ぶファンは少なからずいるようである。
アイドルとプロセスエコノミー[編集]
近年、「プロセスエコノミー」という言葉が流行している。これは「完成された製品や人物だけを楽しむ」のではなく「未熟なものが徐々に完成されていく過程を楽しむ」という新たな消費活動の傾向のことである。
デビューしたてのアイドルは、歌も踊りも下手であることが多い。それが徐々にこなれていく様を見て楽しむのはまさに「プロセスエコノミー」の一種である。しかし、B級タニマチの場合、何年経っても完成しない「サクセスなきプロセス」だけを楽しんでいるわけであり、なかなかに転倒した心理状態であるといえよう。また、アイドル側もその需要を半ば理解して、それほど本気で歌や踊りの技術を向上させる気もなく、成長「プロセス」だけを見せ続けているようなケースもあり、一種の共犯関係が成立している。
特に日本のアイドルは、海外のアイドルに比べて歌や踊りの技術が稚拙であり、その「素朴さ」「未熟さ」こそが尊ばれている節がある。世界的に活躍している日本発のアイドルといえば「BABYMETAL」「Perfume」「新しい学校のリーダーズ」などであるが、これらは日本人が一般的にイメージする「アイドル」像とは少し異なっている。「日本的な未熟なアイドル」がグローバルヒットしたためしはなく、世を席巻するのは例えば韓流アイドルのように、厳しい歌と踊りの訓練を経てきた者たちである。
哲学者アレクサンドル・コジェーブは、江戸時代以降の日本文化の特徴を「スノビズム」と表現している。これは正確な説明が難しい概念なのだが、ざっくりいえば「内実の伴っていない形式だけにこだわる転倒した精神構造」のことを意味している。成長プロセスという「形式」だけを見せつづけ、歌や踊りの良し悪しといった「内実」に無頓着な日本のアイドル文化は、まさに「スノビズム」の象徴といえるのではないだろうか。