空間論的転回

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
白銀のミヤコ様.pngEnpedia:おすすめ項目 (仮)に追加されています。
ピックアップを編集

空間論的転回(くうかんろんてきてんかい、spacial turn)は、1980年代後半以降の新都市社会学に見られる特徴で、社会学が(主に都市の)「空間」という存在をその理論の中に取り込み始めたことを指す。あるいは、社会学における「空間」の発見であるとも言える。

新都市社会学と空間論的転回[編集]

1970年ごろにカステルらによって新都市社会学が興される以前の都市社会学は、シカゴ学派の視座や手法を中心としていた。すなわち、都市をそれ自体で完結した社会と捉えた上で、その内部に見られる(農村に対して)都市に特有の現象を、そこに存在する個人や組織の相互作用に着目することで捉えようとしていた。これに対して、このシカゴ学派を中心とする従来の都市社会学を批判するように1970年ごろに台頭してきた初期の新都市社会学では、国家や世界といった大きな構造的枠組み(たとえば、ウォーラーステインによる世界システム論など)の中に都市を理解し、都市に発生する社会的事象を大きな社会動態のなかに理論づけようとした。しかし、シカゴ学派的な都市社会学も、初期の新都市社会学も、都市内部の現象を特定の主体(個人や集団や組織)とそれを取り巻く構造の間に渦巻くものとしてとらえようとした。

これに対して、このような社会的現象が空間という物理的な客体と相互に紐づけられるようになったのが空間論的転回である。すなわち、それまでの「都市という社会のなかで起こっている現象を理解する」ことが目指されていた視座ではその現象の理解のために主体と構造に着眼点が置かれており、もろもろの社会現象の舞台としての都市はいわば自明視されていたが、それに対して「都市という空間が社会な現象が発生させ、また社会が都市という空間を生産している」という、社会と空間の作用に着目して現象を理論づけようとする視座が獲得されたのである。ここで、「空間」ではヒトやモノや情報が行き交い、またそれは誰にとっても同質でどこをとっても均質的なものとして理解される。

空間論的転回のその後[編集]

空間論的転回ののちには、上記のように均質性が特徴であった社会学的「空間」に対して、生活や記憶といった個人の固有性に立脚した非均質的な広がりとしての社会学的「場所」の重要性が説かれるようになり「空間と場所」の理論が発達した。また、この「空間」の考え方に移動や速さの視点を加えた社会学的な「モビリティ」の理論も発達した。なお、後者に関しては移動論的転回として認識されることもある。

別側面から見た空間論的転回[編集]

空間論的転回以前、主に都市を中心とした空間の分析や考察は、地上の現象を主に統計的手法で研究する地理学や人間の生活の場をデザインする建築学(都市計画学を含む)によるところが大きかった。しかし、1980年代以降の先進国諸都市の空間は急激に進展するグローバル化に伴い急激な変容を遂げ、また科学技術の発達等による都市住民の生活スタイルの変化は都市計画の失敗を招くようになったため、従来の地理学や建築学の手法のみで先進国の都市を分析・考察することが困難になり、地理学や建築学は社会学的な視座や手法を求めるようになった。このように、地理学や建築学といったもともと空間を研究対象としていた学問が社会学と手を取り合うようになったこととして空間論的転回を捉えることもできる。

関連項目[編集]