地域OTA

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OTA(オーティーエー)とは、Online Travel Agent(オンライン専業旅行代理店)の略で、実店舗を持たずにインターネット上で旅行商品の販売を行う事業者のことを指す。

概要[編集]

日本全国を網羅するOTA(本稿ではメガOTAと呼称)として、じゃらん楽天トラベルるるぶトラベルYahoo!トラベル等がある。

なお、店舗を持つ事業者(旅行代理店)は、リアル・エージェントと呼ばれ代表的な企業としてJTB、HISがある。団体客やネット予約に抵抗のある高齢のお客に強みがあるため現在でも存在感がある(特に客室数の多い大規模な宿泊施設は依存度が高い)。

市場規模[編集]

JETROの2021年のレポートでは、OTAとリアル・エージェント(伝統的旅行会社)の市場規模・動向について、OTAが増加し、リアル・エージェントが微減したと記載されている[1]

地域OTAとは?[編集]

地域に特化した宿泊プランや体験プログラムをインターネット上で検索・予約できるWEBサイトの運営を通じ、当該地域の活性化に取り組む事業者もしくはビジネスモデルのこと。

地域OTAの担い手は、旅行業免許を有する当該地域の観光協会や地域商社・地域DMOであることが多い。 以下のような背景から近年注目されている。

注目される背景[編集]

  • 多数のメリットが見込まれるため

地域外(=メガOTA)に流出している莫大な送客手数料を地域内で循環させることで経済面、人材面、地域ブランド向上、観光事業者の生産性向上など多くのメリットが期待できるため。

  • 「地域」で取り組むことが合理的であるため

ホテル・旅館・民宿といった宿泊施設の集客力は、その宿泊施設がある地域の知名度やブランドイメージに大きく依存するため、地域全体での一貫性のある取り組み・情報発信が重要である。これは宿泊施設単独では実現できないため観光協会や地域DMOが担うことが合理的である。

  • 国の後押しがあるため

高齢化と人口減少で衰退する地方・田舎を下支えするための中核産業として「地域資源を活用した観光業」への支援が手厚くなった。観光庁は、観光地域づくりの舵取りを行う法人(DMO / 観光地域づくり法人)の認定制度を設けて重点的に投資しようとしている[2]

  • 旅行形態の変化(団体から個人)

団体旅行が減り個人旅行が増えている。旧来の店舗営業を行う旅行代理店が利用されなくなりオンライン予約に移行している。この傾向はスマートフォンの普及により加速していると考えられている。

  • 情報システム利用コストの低減

情報通信革命(ICT革命)により情報システム実行コストが劇的に低下した(30年間で1000万分の1)ため低価格で利用できるようになった。

  • 情報システムパッケージの登場

地域OTAを実現するための情報システムパッケージが開発されて、安価に提供されるようになった。

目指すもの・期待される効果[編集]

  • 経済的メリット

メガOTA(例:じゃらんや楽天トラベル)に流出している莫大な送客手数料が地域内で循環(納税や再投資)できる。これにより後述する様々な効果創出が期待できる。

  • 地域ブランドの確立・向上

メガOTAでは「その他大勢」となるが地域OTAでは、その地域・プレイヤーが主役。メガOTAでは提供できな地域独自・地域横断的な施策や情報発信が可能となる。

  • Web系人材育成

地域OTAの運用に必要な多様なスキル(編集、Webデザイン、写真・動画撮影)

  • 情報発信力の向上

地域内でWeb系人材が活躍することで地域全体の情報発信力が洗練・強化される。

  • 業務のデジタル化による効率・品質の向上、収益最大化

電話や紙主体で発生する「非効率」や「トラブル(いった・言わない、勘違い)」の減少。「おもてなし」「魅力的なプラン造成」に注力することができる。手動では困難な繁閑にあわせた料金設定(レベニュー・マネジメント)が容易になり収益を最大化できる。

  • 関係人口増

顧客情報がデータベース化されることで、継続的に接点を持つことが可能となる。

課題[編集]

  • 中長期ビジョンの確立とステークホルダーとの意識共有

地域OTAを運営することで実現したいことを明確にしてステークホルダー(運営者、自治体、観光系事業者、住民)と認識を共有する。

たとえば、議論・対話を繰り返してミッション・ステートメントを作成する。地域OTA運営開始後も運営者は定期的にステークホルダーに対して進捗・評価を共有することで協力を得ることが肝要である。

  • 運営主体の中期的コミット

予約システムはストック型ビジネスであり、導入してすぐに利益(手数料収入が人件費・システム利用料を上回る)が出るわけではない。初期にあまり期待が大きいと失望してしまい、ステークホルダーが協力的でなくなってしまう可能性が高い。このため最低でも3年間の計画を立案して、初年度・・2年目は投資期間と位置づけ控えめな収支計画として、ステークホルダーの期待値をコントロールすることが肝要である。

  • 事業者の協力

事業者は送客手数料が不要の自社ホームページでの販売を最大化したいという動機があることに留意が必要である。地域OTA運営者に手数料を支払うことの意・価値をわかりやすく説明して協力を得る必要がある。また、送客手数料も(集客力の高い)メガOTAより優遇することが望まれる。またタダ乗り(プランや在庫を出さずに自社ホームページに誘導する行為)を許さない制度設計や情報システムが必要である。

  • ネットリテラシーの低い事業者のサポート

パソコン操作やインターネットに不慣れな事業者をサポートする必要がある。例えば、メールでなくFAXやLINEによる通知や頻繁にスマホでの操作、業務全般の代行などが期待される。

  • 情報システムの選択肢が少ない

自社ホームページからの直販用の予約システムは多数あるが、地域OTA用システムは選択肢が少ない。

システムに求められる機能[編集]

個々の宿泊施設や体験プログラム提供者向けの予約システムの機能に加えて以下の機能が必須となる。

  1. 参画事業者自身がプランの作成や在庫調整を実施できること
  2. 管理者用、事業者用それぞれにアクセス権限が設定できること
    1. 管理者は全ての事業者の情報にアクセスできること
    2. 各事業者は、自身に関連する情報(プラン・料金・在庫、顧客、予約)にしかアクセスできないこと

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. 観光 魅力的な注目市場分野
  2. 「意欲とポテンシャルがあり、地域の観光資源の磨き上げや受入環境の整備等の着地整備を最優先に取り組む観光地域づくり法人(「重点支援DMO」という)を選定し、重点的に支援」と明記されている。観光地域づくり法人(DMO)を核とした、世界に誇る観光地の形成へ~「重点支援DMO」32法人を選定~ | 観光庁。