ローグライクゲーム

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ローグライクゲームとは、1980年代のPCゲーム『ローグ』の影響下にあるゲームを総称したジャンルである。定義にはやや曖昧なところがあるが、「プレイする度にランダムなマップやアイテムが生成され、リプレイ性が高い(=何度でも繰り返し遊べる)ゲーム」を指すことが多い。元来はRPGやシミュレーションゲームを指すのが一般的だったが、最近はアクションゲームなどでローグライクを標榜する作品もある。

2020年代のブーム「既存のゲーム×ローグライク」[編集]

2020年代のインディーズゲーム界では、既存のゲームにローグライク要素を掛け合わせて、元々のゲームをぶっ壊すことがブームとなっている。

まず前提知識として、2020年代のローグライトに大きな影響を与えているゲームの1つに『Slay The Spire』(2017年発売)がある。これは「デッキ構築ゲー」に「ローグライク」の要素を組み合わせたものである。敵を倒すたびにランダムな3枚のカードが提示され、そのうち1つを自分のデッキに加えることを繰り返していき、より強いデッキの構築を目指すという内容である。本作自体は、なにか既存のゲームをぶっ壊しているものではない。ただ、「シナジー次第でメタ的にゲームバランスをぶっ壊すことができ一見強すぎる敵にも勝てるようになる面白さ」「運のようでありながら実力が試され、実力のようでありながら運が試される絶妙なゲームバランス」は、後続の多くのゲーム開発者に強い影響を与えることとなった。

2020年6月ごろ[1]には、「ローグライク・パチンコゲーム」を標榜する『ペグリン』がリリースされた。パチンコの要領で弾を発射して盤面上のギミックにぶつけ、当たった回数に応じて敵にダメージが入る「RPG風」のゲームである。弾を発射する方向にある程度狙いをつけられるとはいえ、どこに飛んでいくかを完璧に制御することはできず、運に左右されざるをえない。それゆえに「パチンコをプレイするフェイズ」よりも、そのあいだの「アイテムをピックしてシナジーを考えるフェイズ」で、ある程度まで勝負が決まってくる。

2023年1月には、「ローグライク・デッキビルダー」を標榜する『幸運の大家様』がリリースされる。プレイヤーは一定フェイズごとに3つの選択肢からアイテムを選び、スロットマシンの盤面に多様なアイテムを配置していく。あとは自動でスロットを回してコインを稼いでいくのだが、アイテム同士のシナジーによっては思わぬ高額のコインを稼ぐこともできる(というか、それを狙わないとクリア出来ない)。本作は「Slay The Spire から戦闘パートを引き算したようなゲーム」と形容されることもある。スロットマシンを回して自動的に結果を出すことが、オートモードで戦闘しているのと同じだと考えれば、2つのゲームはかなり相似的である。「シナジーを考える段階で勝負はある程度決まっている」という『ペグリン』の特徴をより特化させた作品ということもできるだろう。本作の時点ではまだ「既存の "スロット" というゲームを壊している」という感じではない。が、後のゲームへの影響を考えると、外して語れない一作である。

2023年5月ごろには、トランプゲームを元にした『Dungeons Degenerate Gamblers』『Balatro』がリリースされ、いよいよ「ローグライクで既存のゲームをぶっ壊す」路線が確立された。特に後者の『Balatro』は、正式リリースから1ヶ月足らずで100万本を売り上げた、このジャンルにおける一大成功例である。

前者の『Dungeons Degenerate Gamblers』は、トランプのブラックジャックをベースにしている。初期デッキはトランプのカードのみだが、後から追加できるカードは「タロットカード、Slay The Spireのカード、MTGのカード、健康保険証、名刺」などあまりにも多種多様で「ブラックジャック」の概念が根本から覆されていく。これは「真面目な戦略ゲー」というより、少々「バカゲー」の印象が強い。

後者の『Balatro』はポーカーをベースにしている。デッキに追加できるのはトランプカードのみだが、全体的なバランスを大きく変えられるのが特徴である。極端にいえば「ハートのキングしか入っていないデッキ」を作ることで、毎回「フォーカード」ならぬ「ファイブカード」を成立させることが可能なのである(もちろん、実際にはそんなデッキを簡単に作ることはできないが)。また、デッキとは別に「ジョーカー」というカードを持てるのも特徴。これは、いわば「パッシブスキル」であり、役の得点計算の倍率を釣り上げたりする効果がある。「デッキそのものを改変する」というより「計算方法・計算結果のほうに介入する」というゲーム性は、後述の『Dice Player One』『Bingle Bingle』などに受け継がれている。

2023年12月リリースの『Breaking Survivors』はブロック崩しをローグライク化している。

2024年3月発表の『Bingle Bingle』(正式リリース日未定)は、ルーレットとローグライクを掛け合わせた一作である。

2024年4月には、UFOキャッチャーをローグライク化した『ダンジョンクロウラー』がリリースされた。デッキ構築の代わりに、UFOキャッチャーの中のアイテムの組み合わせを変えていくというゲーム性なのだが、内側に水と毒を入れて「全てのアイテムを毒びたしで浮かせる」といった現実ではありえないプレイを楽しむことができる。獲得したアイテムに応じて、敵モンスターに攻撃したりブロックしたりと「RPG風」の処理を行うあたりは『ペグリン』の影響を受けているといえよう。また、2024年7月に発表された別作品『Cupiclaw』(正式リリース日未定)も、UFOキャッチャーをローグライク化している。

2024年3月には『将棋ライク』、7月には『Skys The Limit MAHJONG』、9月には『おおむねリバーシ』がリリースされ、伝統的なボードゲームとローグライクの融合も進んでいる。『将棋ライク』は、単に動きの強い駒が登場するだけではなく「動くたびに分裂する駒」「相手の任意の駒を破壊できる駒」「近づいてきた相手の駒を自分の駒に変換できる駒」など、さまざまな特殊能力をもった駒が登場して「将棋」という概念を根本からぶっ壊してくれる。『Skys The Limit MAHJONG』は麻雀のローグライクゲームで、用いる麻雀牌の内訳を変えることができ、「白」だけ13枚集めた役を作ったりすることができる。ランダムに引くアイテムの内訳を偏らせることで特定の役が成立する可能性を上げるゲーム性は『Balatro』に近いものがあるといえる。『おおむねリバーシ』には「一度だけひっくり返されない釘付けの石」といった穏当な(?)アイテムから、「相手の石を狙撃して破壊できるマシンガン」まで多様なアイテムが登場し、これまた「オセロ」というゲームを根底からぶち壊してくれる。

2024年9月には、ダイスゲームの「ヨット」をアレンジした『Dice Player One』がリリース予定である。特殊スキルを持ったダイスをデッキに追加することで、役の得点計算を釣り上げていくゲーム性であり『Balatro』や『Bingle Bingle』に似たゲーム性であるといえる。

脚注[編集]

  1. 筆者が「Steam ゲームの最初のリリース日」を調べる方法を知らなかったため、「~ごろ」という曖昧な表現にしている。『ペグリン』に限らず、他の記述も同様。正確な情報をご存知の方は加筆訂正して頂きたい。