ポリメラーゼ連鎖反応法
ポリメラーゼ連鎖反応法(ポリメラーゼれんさはんのうほう,英:Polymerase Chain Reaction method (PCR))、省略してPCR法とは、検体中に含まれる遺伝子を増幅させる方法である。この方法では、まず、鋳型となるDNAと、プライマーと呼ばれるDNAの断片を2種類用意する。これをサンプルチューブに入れ専用の機械に入れる。DNAを引き剥がし、プライマー同士を繋げ、さらにDNA同士を引き延ばすという方法で、DNAの量は1回につき2倍になる。30回繰り返せば10億倍以上になる。プライマーは目的とする遺伝子だけを増幅するように作成しているので、目的とする遺伝子以外は決して増幅しない。例えば、SARS-CoV-2を増幅するプライマーを使用した場合、SARS-CoV-2固有の遺伝子配列を見ているので、インフルエンザウイルス等、その他のウイルスを増幅することはない。また、0は何倍しても0なので、60回増幅すれば(=100京倍にすれば)全員が陽性になるというのは嘘である。「パパイヤで陽性になった」等も全てデマである。コロナウイルスに限らず、わずかなウイルスを吸入しても免疫機能で感染に至らない場合がある。数個のウイルスではCT値は40を超えるので、PCR陽性になることはない。
CT値[編集]
よく「CT値を上げると陽性になりやすい!」と言うことが誤解である、CT値はウイルスの情報を増幅させるサイクル数である。日本の公的検査ではCT値40以下としているから、CT値41以上で検出されても、日本では感染者には扱わない。国立感染症研究所の新型コロナの検査マニュアルでは、原則この値が40以内でウイルスが検出されれば陽性としている。
国際的研究[編集]
なお、フランスの研究グループはCt値が34を超えると培養細胞への感染が成立しないとしている。イギリスの研究グループは、Ct値が35を超えるとウイルス分離培養成功率は8%にまで減少することを示している[1]。世田谷区の調査では、無症状であってもウイルスに感染し、Ct値が低い(ウイルス量が多い)人が年齢・性別に関係なく存在する。つまり、無症状でも他人に感染させる力を持っている[1]。
CT値の基準[編集]
CT値の基準値に国際標準はまだない。基準を高く設定するとウイルス量が少なくても陽性となってしまう。台湾では35未満に設定し、中国では中国疾病対策予防センター(中国CDC)で37未満を陽性と判断する。米ニューヨーク・タイムズの報道では専門家かが「30~35程度が適正だ」との指摘が紹介された。基準値を高めに設定すると、発症前や感染初期などでウイルス量がまだ少ない陽性者を見付けやすくなる可能性もある[2]。
PCR陽性は感染である[編集]
「感染」とは、ウイルスが細胞に侵入し、それが体内で増殖していることである。CT値40以下ならウィルス数は1万以上あるので、体内で増殖している証拠となる。つまり、感染しているといえる。
なお、PCR陽性者(感染したヒト)の唾液の中には、1mml(ミリリットル)中に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は1000万株が存在している。よって、ウイルスの1株や数個だけが存在している状況ではない。1ミリリットルは重さで言うと約1グラムである。新型コロナウイルが付着すると、ヒトの細胞に侵入するまでの所要時間は約30分から1時間である。
脚注[編集]
- ↑ a b 感染拡大防止の鍵となる社会的PCRスクリーニングCOVID-19有識者会議,2021年6月4日
- ↑ PCR「陽性」基準値巡り議論日本経済新聞,2020年11月8日