トロティエーレ
トロティエーレ（Trotiere）とは、韓国の伝統歌謡であるトロット(트로트、trot)[1]に、声楽的要素を加えて歌う大衆音楽である。
トロット（trot）に愛を歌ったペトラルカ（F. Petrarca）の抒情詩集「カンツォニエーレ（Canzoniere）」[2]の接辞「イエーレ（-iere）」を合わせた造語である。20世紀初頭、激動の時代に庶民の哀歓が込められた韓国大衆歌謡を、個人の物理的、精神的激変期に照らして召喚することで、すべての時代に通用する歌にし、過去と現在を統合、融和したことに意味がある。
大衆音楽が持つ娯楽性、商品性、流行性などの基本的な特徴に声楽発声のベルカント唱法[3]で深さを加えた。周知のように、ベルカント唱法は、それが発生した時代的な背景とイタリア語の影響も大きいが、神から授かった人間の声の自然な発声原理に基づいている。 近代発声法の先駆者であったガルシア2世（Manuel Gartia、1805-1906）[4]も、自分が長年解剖学的に研究していた発声の研究がもはや不必要なものであったことを認め、ベルカントの自然な原理に戻るべきだと告白している。
歌手チョ・ミョンソプは、自分が歌うトロットの歌声がよりよく伝わるように、自ら声楽発声に着目した発声法を研究して練習してきたことを告白している。 独学だったので、むしろ自然発声原理につながることになったと推測できる。 彼は、自分自身の絶えない努力と試みの末に、「トロティエーレ」といった新たな大衆音楽のジャンルを作り出した歌手であり、いまなお「トロティエーレ」を歌い続けている。
チョ・ミョンソプ[5]の歌が、ベルカントの発声法に基礎を置いているということは[6]、正しい位置まで上がった声の強さが一定しており、低音から高音に移り行く際に聞こえる一律な強度のバイブレーションと共鳴の拡張が明らかであるからだ。 彼が歌う歌の音程、音質、音量を介して顕わになるのは、発音、バイブレーション、呼吸が自由であることである。 チョ・ミョンソプの歌う歌に、調和とバランス、安定感が感じ取れるのは、このためであろう。まるでオペラのアリアを聴くように柔らかく深みがあり、歌詞の持つ感情伝達が明確である。 特に音の安定感は、聞く側に心安からさと同時に、感動と余韻を与えてくれる。 彼が爆発的な人気とともにヒーリング歌手として浮上している理由でもある。