タロット
タロット(Tarot)とは「タロウ」「タロック」とも呼ばれる。タロットを用いた占いは「タロット占い」と呼ばれ、卜占としての位置づけにある。ただし易占などと異なる点として、「シャッフル」「カット」といった「占われる側」の作為が反映される点がある。
概要[編集]
現在のプレイング・カードの原形ともなったカードである。じっさい、小アルカナだけを見ると、「ペイジ(従者)」があるだけでほぼ変わりはない。もっぱら占いに使用されることが多い。
カードは 22 枚の絵札である大アルカナ[1]と数札からなる56枚の小アルカナ[2]がある。なお、大小はサイズではないので、同じ大きさである。
占いの際は一般的には大アルカナと小アルカナのすべてを使用した78枚のカードで占うが、大アルカナだけで占ったり[3]小アルカナの特定のスートを使って占うこともある。
占い方は、カードをテーブルの上でシャッフルした後に揃え、カードの山を複数の山に分割してから再度まとめ(カット)、そこから何枚か引き出して占う。カードの上下も気にすることもあるため、(カードが痛むという問題はあるものの)シャッフルは念入りに行われる。シャッフルは一般的なトランプのようなヒンドゥーシャッフルやオーバーハンドシャッフル(ウォーターフォール・シャッフル)が用いられることもあるが、机の上でカードを広げ、回すようにシャッフルするウォッシュシャッフルが用いられることが多い。これは上下を含めて満遍なくシャッフルするために行われるものであり、オーバーハンドシャッフルと組み合わせて使われることもある。占者がシャッフルするが、被・占者がカットする。詳しくはトランプを参照のこと。
タロット占いはによって占いの結果を読むものであり、この特定の並べ方をスプレッドと呼ぶ。スプレッドには多くの種類があり、一枚引きのワン・オラクルや 10 枚のカードを使ったケルト十字と呼ばれるもの、マジック・スプレッドのような六芒星とその中心にカードを配置するものが代表的である。基本的には被・占者に近い方が下、遠い方がうえ。横にめくれば上下は逆にならず、縦にめくれば上下は逆になる。
歴史[編集]
ヨーロッパへの伝来[編集]
古い記録としてはドイツの僧ヨハネス(Johannes)が「LUDOUS CARTARUM」というカードゲームが一三七七年にドイツに齎(もたら)されたという記述を遺している。
また、一四八〇年にイタリアの歴史学者ジョバンニ・コペラツォ(Giovanni Covelluzzo)が、「サラセンの国からナイブと呼ばれるカード・ゲームが一三七九年にイタリアに渡来した」と書いている。
カスティーユの城主ジョン一世は、一三七九年にカード遊戯を禁止する法令を出した。このほかの文書を参考にしても、カードは一三六十年代から一三七十年代にかけて伝承したものであることが推定される。当初は賭博や遊戯に使用されたと推定されている。
中世ヨーロッパでゲームや賭博に使われていたタロットが、やがて占いで使われるようになった。占いでの使用は200年前ぐらいからである。
日本では昭和40年代に星占いと共に広まっている。
分類[編集]
正直、気にする必要はない。「いろいろある」と思っておいてほしい。
「ウェイト版とマルセイユ版の二種類がある」と思っていれば、ほぼ間違いはない。アレクサンドリア・木星王氏が詳細に分類している。著書を参照のこと。
タロットカードにはその構成や出自などから「~系」「~版」と区分されて呼ばれる。主にウェイト版とマルセイユ版、そしてトート版の三系統がメジャーなものとして流通している。
これらの三系統以外にも
- エジプト系
- 現代版
- ニュー・タロット
などがあるが、詳細は未調査。
ウェイト系[編集]
米国からでのシェアが高く、世界的にも広まっている。ウェイト版とは作者のアーサー・エドワード・ウェイトの名前からきている。占い用として最も広く使われているタロットであり、1909年にロンドンで発行されたデッキである。魔術結社である黄金の夜明け団(ゴールデン・トーン)の教義を基に構築したタロットであり、より占い用として再構成されたタロットである。マルセイユ版との大きな違いとして、力と正義の位置が入れ替わっているほか、小アルカナにストーリー仕立ての絵柄が付与されていることが挙げられる。
- 無修正版
- ライダー版(英)。発行会社がライダー社であったことからライダー版とか、ライダー=ウェイト版とも呼ばれる。また、デザイナーのパメラ・コールマン・スミスの名も加えてライダー・ウェイト・スミス版とも呼ばれる。
- ユニバーシティ・システィム版(米)
- U.S. Games Systems 版(米)
- ミニ・ウェイト版(スイス)
- 修正版
- ゾラ・アストロロジカル・タロット(米)。ウェイト版に占星術を組合わせたもの。
- ダイナミック・ゲーム社版(米)
- デ・ローレンス版(米)。紺と赤の二色刷りが特徴。
- ホイ・ポロイ版(米)。ウェイト版を現代風に作画したもので、米国ではデパートで主に売られている。裏模様はキー。
- メリー・マーク版(米)。一枚ごとに英文の説明が記されている。
- メリー・マーク版の豆版。世界最小のサイズといわれるウェイト版。
- アルバノ・ウェイト版(米)。イーデン・グレイのタロット。クレイト・カラートーンで原版ではもっとも美麗。
マルセイユ系[編集]
もっぱら欧州に普及している。最も伝統的なタロットであり、もともとゲーム用カードとして使われていたころの名残を強く残しているのが特徴である。そのため、小アルカナは単純に数札としての絵柄が強く、一般的なトランプに極めて近いようなデザインになっている。
- なお、1650年頃に発行されたジャン・ノブレ版がマルセイユ版の元祖ともされており、現在のマルセイユ版は18世紀ころにマルセイユで使われていたデッキの復刻版ともいえるものである。
伝統版、修正版、双頭版などに分類される。
トート系[編集]
黄金の夜明け団に在籍していたアレイスター・クロウリーが作者であり、フリーダー・ハリスによるデザインのデッキである。占い的な絵柄がウェイト版よりも色濃く出ているのが特徴であり、大アルカナのいくつかのカード名が変更されているほか小アルカナの最も上位が騎士になっていたりするなど、前述のタロットに比べると大きく違っているものである。また、ウェイト版やマルセイユ版の大アルカナにあったキリスト教的要素を排除しているのも特徴である。
大アルカナ[編集]
大アルカナはそれぞれ固有の意味を持つ二十二枚で構成される。
「タロットといえば大アルカナ」といわれるほどイメージが強いカードでもあり、タロットを題材とした創作でも大アルカナのみの参照としていることもある。デッキによってはカードの順番が異なっていたり[4]、デッキオリジナルのカードが入っている[5]こともある。
大アルカナ全体が一つの円環という解釈もあり、「何もない『愚者』が旅立つところから始まって『世界』ですべてが完結し、また再び『愚者』から物語が始まる」と解釈する。ただし、「愚者」を「世界」の後にもってくるスタイル(マルセイユ版の古い形はこれ)もあるし、「世界」の直前に置くスタイル(ウェイト版はこれ)もある。本ページではザイン(C.C.Zain。本名はエルバート・ベンジャミン)のエジプシャン・タロットに倣って(1)を「魔術師」、(21)を「世界」、(22)を「愚者」に置いた。ただしタロットに書かれているのはギリシャ文字の「0」とヘブライ文字「ℵ」(Aleph)である。
一覧とすると、
- 魔術師(The Magus)
- 女教皇(Veiedl Isis)
- 女帝(Isis Unieiled)
- 皇帝(The Sovereign)
- 法王(The Hieropant)
- 恋人たち(The Two Parths)
- 戦車(The Conqueror)
- 正義(The Balance)
- 隠者(The Sage)
- 運命の輪(The Wheel)
- 力・勇気(The Enchantress)
- 吊るされ人(The Martyr)
- 死神(The Reaper)
- 節制(The Alchemist)
- 悪魔(Black Magician)
- 神の家、塔(Lightning)
- 星(The Star)
- 月(The Moon)
- 太陽(The Sun)
- 審判(Sarcophagus)
- 世界(The Adept)
- 愚者(The Marerialist)
小アルカナ[編集]
小アルカナはスートごとに 1 から 10 の数札(ヌーメラルカード)と、ペイジ、ナイト、クイーン、キングの四枚の人物札(コートカード/ドレス・カード。それぞれ階位を表す衣裳を身につけている)の計 14 枚で構成される。スートは
- 魔法の杖(ワンド。トランプでいうところのクラブ)
- 五芒星(ペンタクルス。同ダイヤ)
- 剣(スウォード/スワード/ソード。同スペード)
- 聖杯(カップ。同ハート)
の四つから構成され、それぞれに火・地・風・水という四大元素が対応している。また、それぞれのスートごとに杖は冒険、五芒星は価値、剣は試練、聖杯は愛というようなストーリーを持っている。タロット占いの際はこういったストーリーを加味してリーディングすることも珍しくない。また、各スートの 1、つまりエースはそのスートが持つ意味を極めて純粋に表しているカードであり、ある意味ではコートカードよりも強力な意味を持つカードとされている。
スプレッド[編集]
カードを決まった形に配置することはスプレッド(展開法)とよばれ、位置によって占う項目が決まっているものである。オーソドックスなスプレッドの場合、一枚引きのワン・オラクルから13枚引きのホロスコープまで、占適や占期に合わせて使い分けることもある。一方で慣れた占者の場合はオリジナルのスプレッドを考案することもあり、もっぱらそのスプレッドを多く使用する場合もある。
大アルカナのみを使用したスプレッドの場合、場合によっては枚数の不足や精度に影響を及ぼすため、必要枚数が多いスプレッドは避けられる事もある。また、小アルカナを併用することでより細かな結果を得られることもあり、占適によっては特定のスートを大アルカナに混ぜる[6]、という方法もある。
リーディング[編集]
スプレッドにより展開されたタロットの意味を解釈することはリーディングと呼ばれる。
タロットカードの一枚一枚には意味が込められており、例えば大アルカナの戦車(チャリオット)であれば「前に進む」という意味がある。これが正位置であれば自信のある行動とか、成功を手にするための前進、という意味にとることができる。一方、逆位置であれば暴走や空回りというマイナスな意味になってしまう。占者はこれらのタロットカード意味だけでなく、カードのスプレッドや小アルカナであればスートの意味や数字、または絵柄から想起される事象など、カードを様々な視点から観察し、結果を導き出す。尤も、占者によって拾い上げる情報はまちまちであることも多く、占うテーマによって情報の選別をしているものである。
一方で依頼者からのヒアリングがうまくいかないと占うテーマが定まらず、占いの精度が落ちることもあるという。特に親しい間柄の場合は愚痴聞きの方が多くなってしまうこともあり、一種の簡易カウンセリングとして利用されるケースがあるという。それを逆手に取り、易占だけでなく依頼者の安らぎになる空間を提供するという占者もいる。
精神医の場合はこの「カウンセラーとクライアントとの相性」が顕著であり、「遠くの精神分析医より近くの易者」である。
余談[編集]
複数のバージョン(版)があり、「007版」などもある。
占い用としてはウェイト版が定番である。そのため、タロットの入門書や解説書はウェイト版について書かれたものが多く、更にウェイト版のシェアが進んでいる状況である。一方、マルセイユ版でも占うこともできるほか、クロウリーのトート版で占う人もいる。クロウリーが易にも通じていたことから、トート版は東洋思想とも相性が良いともされている。
カードの「機嫌を損ねる」ような占い方をした場合[7]は、なぜか逆位置ばかり出たり特定のカードばかりが出るようになったりすることもあるという。そういった場合は水晶などでカードに溜まった邪念を払う必要があるとされている。非科学的な行為と言われることもあるが、そもそもが魔術結社由来の占術であるタロット占いに対して非科学的と言われても今更な話である。
脚注[編集]
参考資料[編集]
- アレクサンドリア・木星王『TAROT ― タロット入門と占い』((株)大陸書房。1975)
- 藤森緑 『続 初めての人のためのらくらくタロット入門』、2011年3月1日。