タニグチ式望遠鏡

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タニグチ式望遠鏡(タニグチしきぼうえんきょう、Taniguchian telescope )は、日本の実業家谷口浩により考案された反射望遠鏡の一形式である。主軸上の無限遠にある点の像に対して球面収差がない。

二次元凹面鏡を主鏡・副鏡として用いるという革新的なアイデアのため、今後、派生が考えられる光学系として、広い視野に渡って良い星像を確保するために主鏡に双曲面、副鏡に高次非球面を用いて収差を高度に除去したリッチー・クレチアン式望遠鏡や、主鏡に楕円面、副鏡に球面を用いて鏡面研磨を容易にしたドール・カーカム式望遠鏡、主鏡を球面としシュミット補正板を入れて反射屈折望遠鏡としたシュミットカセグレン式望遠鏡、メニスクレンズを入れて反射屈折望遠鏡としたマクストフカセグレン式望遠鏡が考えられる。

発明[編集]

従来の望遠鏡は、屈折望遠鏡も反射望遠鏡も、どちらも凸面レンズ、または凹面主鏡によって縦軸、横軸を同時に拡大するという仕組みだが、タニグチ式望遠鏡は、縦軸と横軸をそれぞれ主鏡と副鏡に分けて拡大するというアイデアに基づく。
従来の反射望遠鏡は主鏡となる凹面鏡で縦軸・横軸を同時に拡大する。副鏡はその拡大された像を接眼する目に映すための補佐的なものである。副鏡に平面鏡を用いるニュートン式望遠鏡もあるが、カセグレン式望遠鏡のように双曲凹面の副鏡で球面収差を補正することもある。高次非球凹面を用いたシュバルツシルト式など数学的にサイデル収差を解決しようとしたものもあるが、高次非球面は3次元で製造するのが非常に困難で量産には向いていない。

これに対して、タニグチ式望遠鏡は、主鏡・副鏡で用いる凹面鏡の複雑な高次非球面を2次元にすることで、あらゆる曲率に対応することができる。

タニグチ式望遠鏡は、縦軸の拡大、横軸の拡大を分けて行うというアイデアがベースになっており、1枚目の二次元凹面鏡(高次非球面)で縦軸を、2枚目の二次元凹面鏡(高次非球面)で横軸を拡大する。主鏡と副鏡は異なる曲率を持つことになる。

タニグチ式望遠鏡のメリット[編集]

1990年NASAが宇宙望遠鏡(ハッブル望遠鏡を)の打ち上げ後、すぐに打ち上げ時の強いGによる主鏡のひずみの問題があるとの報道があったが、タニグチ式望遠鏡は同様のGでの歪みを回避することができる。

望遠鏡には、色収差だけでなく、サイデル収差(コマ収差、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪面収差)という問題があるが、タニグチ式望遠鏡は、シュバルツシルトやシュミットが3次元の高次非球凹面鏡を利用して試みた解決を、X軸とY軸に分割し、2次元の凹面鏡を利用することで、同様に解決している。また、何より製造が難しく実用化には向かなかった3次元の高次非球凹面鏡を、2次元の高次非球凹面鏡に置き換えることで、高次非球面に曲げた雨どいをザクザク切るかのように望遠鏡の主鏡を製造できるという大きな躍進をもたらした。タニグチ式望遠鏡に利用される二次元凹面鏡は、従来の三次元凹面鏡と比較にならないくらいに、製造コスト、メンテナンスコストを圧倒的に安価にすることができる。

タニグチ式望遠鏡のデメリット[編集]

ただし、タニグチ式望遠鏡も完全ではなく、シュミット式望遠鏡同様に、縦軸と横軸の比率がちょうど程よくなる点が一点のみとなるので、接眼レンズでの観測には向いていない。しかし、むしろ、今の天文学は、アマチュアの天体観測も含め、カメラを利用するので、この問題はシュミット式望遠鏡同様、解決されたと言っても構わない。

歴史[編集]

1984年、当時中学二年生であった谷口浩は、ハレー彗星の近日点通過に合わせて彗星をどうしても見たいという想いから、望遠鏡を制作した。ぼんやりと食器のスプーンを見て、スプーンの裏面は目とスプーンの距離によって大きくも小さくも見えるという事象から、谷口もグレゴリーやニュートンと同様の反射望遠鏡を思いつくが、アルミホイルにシワを付けずに縦にも横にも曲げるという加工がどうしてもできず、結果的に縦軸と横軸を分けて拡大するというアイデアに行き着いた。

2015年特許庁に特許申請、2016年に特許取得後、アメリカでの国際特許申請を経て、2019年4月国際特許として認められる。大口径望遠鏡への採用、宇宙望遠鏡への採用が見込まれる。

望遠鏡にはレンズを使ったガリレオ式望遠鏡ケプラー式望遠鏡の屈折望遠鏡が2種類。改良を含め違った曲率の主鏡・副鏡が採用されたニュートン式望遠鏡、カセグレン式望遠鏡(リッチー・クレチアン式、ドール・カーカム式など含む)があり、また、準リッチークレチアン式望遠鏡などハイブリッドと言われる主鏡とその収差を補正するレンズを配置した反射屈折望遠鏡があるが、望遠鏡の発明者として日本人の名前が冠されるのは「タニグチ式反射望遠鏡」が初めてとなる。

参考文献[編集]

出典[編集]