インサイダーゲーム

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インサイダーゲームとは、オインクゲームズが開発したアナログゲーム(ボードゲーム)である。

「20の扉」「ウミガメのスープ」のような質問ゲーム(クイズ)と、「人狼」のような正体隠匿をかけあわせた内容である。

ルール[編集]

参加者(4人以上)をマスター1人・インサイダー1人・コモンズ(庶民)その他全員に分ける。役割は当人のみが知ることができ、互いには分からない。「インサイダー」がいわゆる「人狼」役である。

マスターは山札からカードを引いて、答えとなる「単語」を確認する。他の人たち(インサイダー+コモンズ全員)は単語を当てるべく、質問を行っていく。質問は「Yes/No」で答えられるもののみ。例えば「赤色ですか?」という質問はアリだが「何色ですか?」という質問はできない。

コモンズは答えを知らないが、インサイダーだけは答えを知っている状態でスタートする。インサイダーは「自分がインサイダーであること」がバレないように、それとなく誘導する質問を行っていき、制限時間が尽きる前に正解が出るようにする。正解が出た後で、誰がインサイダーだったのかをみんなで推理する。

インサイダーゲームはお手頃なゲームか?[編集]

  • ルールが小難しくない
  • 使うアイテムの数が少ない
  • 参加できる人数の幅が広い(4人以上なら大体何人でもいける)
  • 1回のプレイ時間が短い

といった特徴がある。そのため、見知らぬ人間が寄り集まったボドゲ会やボドゲカフェでは「とりあえずプレイするお手頃な定番ゲーム」としてチョイスされがちである。

しかし、インサイダーゲームが本当に初心者向けでお手頃なのかは、よくよく考えると難しい。

まず、「正体隠匿」という要素はボドゲの定番ジャンルの一つであるが、なかには苦手な人もいることに注意を要する。

次に、参加者が「単語当てゲーム」にどれぐらい慣れているか、という問題がある。不慣れな参加者が多ければいつまで経っても答えに近づかないため、インサイダーは露骨に答えに近づく質問をせざるを得ない。逆に、慣れている参加者が1人でもいればその人がガンガン質問するだけで答えに辿り着いてしまうため、インサイダーは不用意な質問をする必要がない。このゲームは、全ての参加者が同程度に積極的な質問をしなければ成立しないのであるが、現実にはそううまい塩梅になることは無い。そもそも見知らぬ人間が寄り集まったときに、全員が積極的に発言するのは難しい[1]し、「単語当てゲーム」への慣れ具合も人それぞれだからである。

そして、コモンズは「本気で」勝ちにいこうと思えば、そもそも積極的に質問をする必要がない。インサイダーが焦って露骨な質問をするまで待てばよいからである。[2]つまり、このゲームは「本気で勝ちを狙う」のではなく「適度に盛り上がるように参加する」という(やや複雑な)参加姿勢が求められる。[3]ルール自体は難しくないが、ルールの外側にある「暗黙のお約束」を理解しなければならないという難しさがある。ボードゲーム初心者がオセロ」や「将棋」のような純粋に勝利を目指すゲームを想定してボドゲ会に参加していた場合、根本的な認識が食い違う可能性がある。

また別の問題として、参加者がお互いの性格を知っていなければ「誰がインサイダーであるか」推理するのは難しいという問題がある。「普段あの人はこれぐらい喋る」「普段からあの人は鋭い質問をする」といった前提知識がなければ、誰が怪しいのか推理することは難しい。一般的な「人狼」であれば、投票行動という静的データからロジカルに推理することも(ある程度まで)可能であるが、インサイダーゲームは質問内容・喋り方・表情といった不定形で曖昧な動的データのみから直感的に推理するしかないのである。もちろん、「このゲームを通じてお互いの人となりを知ろう!」という考えもあるにはあるだろうが、人となりを知るのが目的なら『ito』や『ワードバスケット』といったゲームの方が適しているのではないだろうか。

一見すると「シンプルなルール」というのはプレイしやすくお手頃に思えるが、ゲームの外枠がカチッと定まっておらずプレイヤーの裁量に任されている面が大きい、ということでもある。ボドゲ初心者、あるいは見知らぬ人間が寄り集まっている場で、インサイダーゲームは本当に「お手頃」な遊びやすいゲームであろうか?[4]

より楽しく遊ぶためのヒント[編集]

このゲームに慣れていない参加者がいる場合、まず「インサイダー要素を抜きにした単純な言葉当てクイズ(全員協力)」を何回か行い、慣れてきた頃に「インサイダー」の役職を追加すると面白さが伝わりやすい。

脚注[編集]

  1. 個々人の「性格的」な問題もあれば、テーブルのお誕生日席に座っている人は距離が遠くて声が届きにくいといった「物理的」な問題もある。
  2. 制限時間内に答えが出なかった場合、「全員(コモンズもインサイダーも)負け」というルールに一応なっている。しかし得点制のゲームではないし、仮に得点制だったとしても「全員負け」なので差はつかない。「勝敗」のみを考えれば、コモンズ側には積極的に質問をする動機が何もないのである。お笑い芸人たちを集めて「時間切れ=電流ビリビリ」という罰ゲームでも与えたら、一味違った楽しさになるかもしれない。
  3. 同じ構造は「NGワードゲーム」にも見られる。漫画『かぐや様は告らせたい』では、ヒロインのかぐやが本気でNGワードゲームに勝とうとして「一言もしゃべらない」というシーンが登場し、読者の笑いを誘う。しかし、「盛り上がり」よりも「勝利」を目指すタイプのプレイヤーがいれば、このようなことは現実でも起こりうるだろう。
  4. 別の例をあげよう。『カタンの開拓者たち』が定番ゲームでありながら、しばしば初心者にオススメしにくいと評されるのは「交渉」という自由度の高い選択肢が存在するからである。オセロや将棋に「交渉」の余地はない。盤面だけを見てルールに則って手を指せばよく、考えるべき範囲がしぼられている。逆説的なことに、「自由度の高さ」はしばしば「新規参入の妨げ」となる。

外部リンク[編集]