駅弁

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
折尾駅の「かしわめし」

駅弁(えきべん)とは鉄道駅で販売されている弁当のことである。

概要[編集]

駅弁業者が加入している組合が認めたものが駅弁である。従って、NEWDAYSなど駅構内のコンビニで販売されているコンビニ弁当は含めない。駅弁業者は駅付近の旅館料亭が調整しているが、家内工業的な零細業者と、地域の食品産業として大型化した業者とに大別される。

種類[編集]

普通弁当と特殊弁当がある。普通弁当は幕の内弁当のことで、特殊弁当とはそれ以外の弁当のことである。いずれも腐敗しにくい種類を選んでいる一方、発熱ユニット使用といった温めて食べる工夫がされた駅弁もある。
他には、味付けが濃いこと、寿司を除く生ものは入れないこと、水分が少ないことが挙げられる。また、車内で食べられることを考えて匂いがあまりしないことも欠かせず、水戸駅納豆が入った「納豆弁当」はないし、米原駅ふなずしの入った「ふなずし弁当」もない。

詳細は「ふなずし」を参照

販売されている場所[編集]

長距離列車が運転されている線区での販売が多く、形態としては駅ホームでの立ち売り、列車内での販売、駅構内(駅ナカ)売店での販売がある。
必然的に鉄道省→日本国有鉄道→JRグループの駅での販売が多く、その中でも急行列車が停車し、なおかつ他線の乗換駅といった駅や、補機連結、蒸気機関車の給水作業、先行列車待避[注 1]で長時間停車し営業時間が確保しやすい駅で販売されていることが多い。また、停車時間が長いことは大日本帝国陸軍大日本帝国海軍が大量に駅弁を仕入れることに好都合でもあった。東武鉄道伊豆急行近畿日本鉄道といった、長距離列車が運転される私鉄の主要駅でも販売されることがある。

沿革[編集]

日本に鉄道が開業した当時は駅弁は存在しなかった。乗車時間が短く、車内で食事をする時間がなかったためである。駅弁が始めて売られるようになったのは信越本線横川駅とも、日本鉄道宇都宮駅ともいわれている。いずれも筍の皮で包まれたおにぎり沢庵数切れといわれている。

本格的な駅弁は山陽鉄道姫路駅で、木で作られた弁当箱に、白飯、梅干し、鯛の塩焼き、伊達巻き、蒲鉾、百合の根、漬物等が入ったいわゆる幕の内弁当で、高価な製品だった。

大日本帝国陸軍大日本帝国海軍が鉄道で部隊を移動するときも駅弁は重要な役割を果たした。奥羽本線の歴史急行列車も停車しない山間の小駅で駅弁を販売しているところがあるが、これは軍隊の移動の名残である。

現状[編集]

新幹線の開業により、駅弁の売り上げが伸びた駅もある一方、駅での専売利権を長らく保ったため新規発想を持った業者が参入しにくい「見えない事情」や、食品販売参入障壁の低い駅構内のコンビニエンスストアの進出によって駅弁の売り上げが減少し、さらに後継者不足といった理由もあって、地方路線での駅弁業者は廃業したところも多い。

加えて、在来線では、窓の開く列車が殆どだった急行列車が廃止されて、窓の開かない特急列車に格上げされた。さらには、鉄道による長距離移動客自体が減少し、系統分割による列車の運行区間の短縮で全体的に3~4時間以上連続で乗車する乗客が少なくなったことにより車内で食事をする機会が減ってしまったり、速達列車の通過[注 2]や、路線自体が廃止され、廃駅となった[注 3]駅が生じたという事情もある。

太平洋戦争後に、旧制大学を母体としない多くの官公立高等教育機関が大学に昇格した際、口の悪い知識人が「急行の止まる駅に駅弁あり、これは駅弁大学だ」と評したが、今や国立大学の数よりも駅弁販売駅の数が少なくなってしまった。四国には駅弁販売駅が4駅しかなく、県庁所在地駅であっても、津駅のように駅弁販売が記録に見えない駅や徳島駅山口駅大分駅のように駅弁販売を取りやめた駅もある。

横川駅の「峠の釜めし」で有名なおぎのやは、いち早く未来を予見したかのように、1970年代後半に早くもドライブイン向けの販売に主力を移しており、信越本線の碓氷峠区間の廃止の影響は小さかった。

空港の増設により、機内食があった飛行機の利用が一般化した事情もあるが、価格競争で機内食が通常サービスから消えると、空港内売店で、駅弁の発想を取り入れた空弁が販売されるようになった。同様に高速道路でもSAで駅弁の発想を入れた速弁が開発された。

各地の駅弁[編集]

下記に、代表的な駅弁を挙げる。社団法人日本鉄道構内営業中央会の加盟業者以外の弁当も含む。

北海道地方[編集]

東北地方[編集]

関東地方[編集]

東京都内[編集]

全般[編集]

埼玉県のJR東日本エリアは、地元の業者が全て撤退した。大宮駅で売られる駅弁は、他県に所在の業者による商品[注 6]

中部(信越・中央)地方[編集]

  • 黒の信州牛めし(長野駅)吉美
  • とりそぼろ弁当(長岡駅)池田屋
  • 雪だるま弁当(新津駅新潟駅三新軒 - 光沢のある白をはじめピンク・水色・橙・緑と五色ある「雪だるま」容器の駅弁。他に「鮭の焼漬弁当」も有名。
  • さけとにしんの親子めし(新津駅・新潟駅)神尾弁当 - 「さけとにしんの親子わっぱ」を改名したが、包装紙の色や中身の内容は同じもの[2]
  • 高原野菜とカツの弁当(小淵沢駅茅野駅丸政
  • 元気甲斐(小淵沢駅・茅野駅)丸政
  • 直火炊き 山菜鶏釜めし(小淵沢駅)丸政
  • 岩魚ずし(塩尻駅)カワカミ
  • 安曇野釜めし(松本駅)イイダヤ軒

東海地方[編集]

北陸地方[編集]

  • くるみ山菜寿司(越後湯沢駅)川岳軒 - 昭和から販売されている寿司駅弁。越後湯沢~金沢・福井(または和倉温泉)特急があった頃は、JR西日本エリアとJR西日本「ホワイトウイング」車両(「はくたか」号)内でも売られていた[注 7]関越自動車道の石打サービスエリアでも販売される時がある。
  • 磯の漁火直江津駅上越妙高駅)ホテルハイマート - 以前は、ホテルセンチュリーイカヤも直江津駅はじめ、JR西日本エリアと北陸自動車道(インターチェンジ・道の駅)・佐渡汽船(待合所)でも複数の駅弁を販売していた。
  • 釜ぶた弁当(直江津駅・上越妙高駅)ホテルハイマート
  • 鱈めし(直江津駅)ホテルハイマート
  • 笹すし糸魚川駅)笹すし総本舗九郎右ェ門 - 駅ホーム構内と特急車両内での販売は終了、現在は待合室の売店と駅前の「ヒスイ王国館」1階で売られている。色彩が非常に鮮やかな寿司。
  • ますのすし・ぶりのすし(富山駅 - 個人で完食できる少し小さめの「ますのすし 小丸」も商品ラインナップにある(上位商品の「特選ますのすし」と共に数量限定)。
  • 二味笹すし(金沢駅)大友楼
  • 越前かにめし福井駅武生駅芦原温泉駅)番匠本店
  • 元祖たいずし(敦賀駅塩荘
    • 北陸本線には、紀行作家の宮脇俊三も随筆などで評価した「夫婦釜めし」(糸魚川駅および北陸本線の特急車内など、たかせ)[3]が1970年から売られていたが、製造元が2013年限りで駅弁事業から撤退している。

近畿地方[編集]

中国地方[編集]

四国地方[編集]

九州地方[編集]

  • かしわめし弁当折尾駅小倉駅鳥栖駅都城駅ほか) - 当地の郷土料理がもとになっているため、複数の業者が類似名称・同系列の駅弁を発売している。
  • おこわ無法松弁当(小倉駅)北九州駅弁当株式会社
  • あごめし(佐世保駅)株式会社松僖軒
  • 高菜弁当(佐世保駅)株式会社松僖軒
  • 焼麦弁当(鳥栖駅)株式会社中央軒
  • あさりめし(熊本駅)有限会社音羽家
  • 鮎屋三代(八代駅)合資会社頼藤商店
  • 鮎ずし(人吉駅)有限会社人吉駅弁やまぐち
  • 椎茸めし(宮崎駅)宮崎駅弁当株式会社
  • えびめし(出水駅)株式会社松栄軒
  • 百年の旅物語かれい川(嘉例川駅)森の弁当やまだ屋 - 土・日・祝日限定販売。特急「はやとの風」では通年販売だが要予約。

沖縄地方[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

参考作品[編集]

  • 泉昌之『夜行』。映像化もされているという。

脚注[編集]

  1. 例えば、東海道新幹線こだまの停車駅。
  2. 磐越西線日出谷駅
  3. 名寄本線興部駅渚滑駅
  4. みかど(株)函館支店からジェイ・アールはこだて開発を経て事業譲渡。
  5. 住吉屋から鈴木屋・芝田屋(水戸駅)・海華軒(日立駅)が継承、3社で駅弁を共同販売していたが、2007年6月30日をもって3社ともいわき駅での駅弁販売を撤退した。
  6. 「埼玉の味 大宮辨當」は埼玉県の地図が描かれた包装紙だが、栃木県(松廼家)の業者の商品。
  7. 北陸トラベルサービスが2014年9月30日にはくたかでの営業を終了。JR西日本も北陸新幹線での車内営業を2019年6月で終了。
  8. 2008年から販売の「京都牛善」は京都の風景のシルエットが包装紙に描かれているが、兵庫県の業者(淡路屋)による所謂「企画もの」駅弁である。
  9. 元々は「下関駅弁当」の商品。廃業後、数社の紆余曲折を経て引き継ぐ。
出典
  1. 関根屋の公式webでは「ハタハタ漁が不作の為」のコメント表記がある。
  2. 神尾弁当web「さけとにしんの親子わっぱが変わりました。」(2013.10.01 17:02)
  3. 「dancyu」1994年6月号『駅弁ベスト10』(宮脇俊三)ほか。
  4. a b c d 対象駅弁 - 四国の駅弁選手権2014