倍音

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倍音(ばいおん)とは、基音の周波数に対し、2倍以上の整数倍の周波数を持つ音の成分。基音の振動数の整数倍になっている音。音を構成するたくさんの部分音。英語ではharmonics、overtone。1倍の音、第1倍音、すなわち楽音の音高とされる成分を基音、基本音、原音という。基音は、ピッチを安定させる重要な役割で、実音の音高、音域、音階や音程、音程感、オクターブを決めるものである。

基音と各倍音の周波数は、波形で表される。倍音を全く含まない基音のみの周波数の音色を「純音」「サイン波」という。1つの倍音の音色はサイン波である。サイン波は、空気の密度が時間を引数とする三角関数で表される音波で、純粋なサイン波は自然界には存在しない音である。様々な楽器の音色を、サイン波成分の集合に分解すると(理工系の用語で言うフーリエ変換)、元の音と同じ音高以外に、様々な倍音が含まれている。倍音の分析は、スペクトルアナライザーで見れる。音の元になる波形を作り出す発振器を「オシレーター」という。

音色の違いにより、倍音成分が決まる。楽器の音色は、基音と倍音が複合したものである。倍音は、音の性質、音色、音程感を決めるものである。倍音は音色に関わる要素を持つ。倍音の割合の含まれ方には楽器によって発音原理が異なり、これらの違いは音色のかたまりの形成に決定的な影響を与える。倍音の合成により、いろいろな音色を作ることができる。主に電子ピアノ・電子キーボードで、鍵盤を1鍵しか押していないのに複数の音が共鳴して鳴る音である。倍音を含むことにより、音に厚みが出る。倍音は、基音からの音程である。倍音の上限は第32倍音の5オクターブまでである。例として、「ド」の鍵盤を押して鳴ってる音は、実は「ド」だけではないという意味である。各1つの鍵盤を押しただけでオクターブ以外の音も出るもの。第7倍音は、平均律からだいぶ外れたピッチで、楽譜の音高とかなりずれていて、不確かなピッチで、鍵盤上では絶対出せない音である。第7倍音の音程は、周波数の比率から導き出すと、「短7度より低く、長6度より高い」という、近似値にならない音で、短7度よりけっこうチューニングのセント単位がずれていて、楽譜に書けない音になる。もし、第7倍音を、チューニングのセント単位が0セントの短7度に変えると、普通のセブンスコード(ドミナント・セブンス・コード)になり、次の和音(コード)に進みたがる、落ち着かない不安定な響きになってしまうので要注意!

第1倍音と第2倍音のみを強く鳴らすと、基音の音圧レベルが大きく、基音のエネルギーが強く聴こえる。

倍音の数字が増えるほど音量はだんだん小さくなる。倍音列の上部では、ほとんどの倍音が微分音となる。実際に聴こえる音は、人間の耳で感じられない周波数に聴こえる。基音周波数が高音になればなるほど倍音が少なくなる。これを周波数の帯域制限という。倍音が多いと明るい音色になる。倍音があることにより、低音域の基音周波数も明確になる。倍音が強調すると、歪み系エフェクトが掛かった音色になる。

整数次倍音を含む音色で、自然界にある楽器の周波数成分は、基音周波数が低くなれば音高のエネルギーが強くなる。

楽器の種類と音高によって、倍音の含まれ方が変わる。

音の強弱「ベロシティ」が変わると、倍音の含まれ方が大きく変わる。ベロシティが小さいと倍音が少なく、ベロシティが大きいと倍音が多くなる。

倍音の上限が第32倍音の理由は、可聴領域の周波数の上限が20000Hzであることと、女声の最高音の上限が、基音周波数約783.99Hz=G4であるのと関係があるかもしれない。もし、倍音の上限が32倍音までではなく64倍音だと、第57倍音では、音程が5オクターブ+短7度より約0.1セント低く、ちょうど短7度で、これだと普通のセブンスコード(ドミナントセブンスコード)という、次に進みたい不安定な響きになってしまうので、第32倍音を超える倍音は存在しないからである。第32倍音が20000Hzとすると、基音周波数は625Hzで、ピッチは、Eb4(D#4)より8セント高い音で、女声の最高音付近と一致する。ノートナンバーの最高音127番、約12543.85HzのG8が第32倍音とすると、基音周波数は392HzのG3となり、G3は、男声の最高音付近と一致する。

電子楽器で、ピッチベンドレンジを-12の-1オクターブに設定して楽器音を鳴らしたり、Wavepad 音声編集ソフトで、「速度とピッチを変更」の設定で、半音を-12に変更して聴いてみれば、周波数の帯域制限と倍音の上限が測定できる。ピッチベンドレンジを+12の+1オクターブに設定と、Wavepad 音声編集ソフトで、「速度とピッチを変更」の設定で、半音を+12に変更して聴いてみれば、コントラバスの音域の範囲の音に基音のエネルギーがあるかないか確認できる。

基音周波数が1000Hz以上の音高は、倍音は16倍音までしか得られない。

サイン波は基音のみ、矩形波は奇数倍音、ノコギリ波は全ての整数次倍音。いずれも、次数と振幅が反比例する。ノコギリ波は、基音と共に整数次倍音が一緒に鳴っている。

倍音の含まれ具合は、自然界にある実際の楽器の音色では、基音周波数の音高が低くなれば、倍音が多く、倍音が豊富になる。

奇数倍音が強いと歪みのエフェクトの効果がかかった音色がする。

基音が無く、基音以外の整数次倍音のみからなる音色を「ミッシング・ファンダメンタル」という。ミッシング・ファンダメンタルの現象は、例として、基音及び基音に対するオクターブの「ド」を鳴らしていないのに「ド」が聴こえると見せかけているという錯覚である。基音のみの設定は、「ド」の鍵盤を弾いたら、同じオクターブの「ド」の鍵盤が鳴る。奇数倍音のみで分析した場合、基音・第3倍音・第5倍音のオシレーターを同時に鳴らすと、矩形波のような音色になる。ここで、基音をカットして、第3倍音・第5倍音の2つのソロに設定して、ハ長調の音階「ドレミファソラシド」の鍵盤を弾くと、不思議なことに、「ドレミファソラシド」っぽく聴こえる。倍音の設定で、鍵盤図で、基音を鳴らしていないのに、基音が聴こえてしまう現象が起きる。第3倍音のみに設定した場合、「ドレミファソラシド」(ハ長調の音階)の鍵盤を弾くと、実音は「ソ.ラ.シ.ド.レ.ミ.ファ#.ソ」(ト長調の音階)が出る。

DTMで、各倍音の単体の周波数を入力するには、ピッチベンドが必須となる。設定する音色は、サイン波リードであるが、サイン波リードが無いときは、オカリナで代用する。

オクターブ単位で設定する音高を表現するものは「フィート」という。ピアノの音の高さと同じ通りの実音は8フィートで、ノーマルの楽器の音色である。ノートナンバー45(A1)を鳴らしたとき、8フィートのみは110Hzとその整数次倍音を持つ音色となる。8フィートの音色で、ノートナンバー45(A1)+ノートナンバー57(A2)を同時に鳴らした場合は、ノートナンバー45(A1)の8フィートと4フィートの組み合わせになっている。オクターブ上の音がミックスされたノコギリ波の音色である。

サイン波リードにおける8フィート+4フィート+2 2/3'フィートの組み合わせは、8フィートを基音とした場合における、第1倍音と第2倍音と第3倍音の組み合わせと同じである。

倍音列[編集]

倍音を順番に並べたもの。

例として、真ん中のドより1オクターブ下の音=基音周波数約130.81Hzのド(C2)の音高を記す。第3倍音は、C2の鍵盤を弾くと、G3の音が鳴る。

倍音 音程 音高差 音名 周波数 平均律よりの差 ノートナンバー
第1倍音=基音 ユニゾン 00 C2 約130.81Hz ±0.000セント 48
第2倍音 1オクターブ 12.000000半音 C3 約261.63Hz ±0.000セント 60
第3倍音 1オクターブと完全5度 19.019550半音 G3 約392.44Hz +1.955セント 67.02
第4倍音 2オクターブ 24.000000半音 C4 約523.25Hz ±0.000セント 72
第5倍音 2オクターブと長3度 27.863014半音 E4 約654.06Hz -13.686セント 75.86
第6倍音 2オクターブと完全5度 31.019550半音 G4 約784.88Hz +1.955セント 79.02
第7倍音 2オクターブと短7度 33.688259半音 Bb4(A#4) 約915.69Hz -31.174セント 81.69
第8倍音 3オクターブ 36.000000半音 C5 約1046.5Hz ±0.000セント 84
第9倍音 3オクターブと長2度 38.039100半音 D5 約1177.32Hz +3.910セント 86.04
第10倍音 3オクターブと長3度 39.863014半音 E5 約1308.13Hz -13.686セント 87.86
第11倍音 3オクターブと増4度 41.513179半音 F#5(Gb5) 約1438.94Hz -48.682セント 89.51
第12倍音 3オクターブと完全5度 43.019550半音 G5 約1569.75Hz +1.955セント 91.02
第13倍音 3オクターブと短6度 44.405277半音 Ab5(G#5) 約1700.57Hz +40.528セント 92.41
第14倍音 3オクターブと短7度 45.688259半音 Bb5(A#5) 約1831.38Hz -31.174セント 93.69
第15倍音 3オクターブと長7度 46.882687半音 B5 約1962.19Hz -11.731セント 94.88
第16倍音 4オクターブ 48.000000半音 C6 約2093Hz ±0.000セント 96

第3倍音はちょうど1オクターブ+完全5度であり、1オクターブ+完全5度の平均律は1:2.997であり、ほぼ完全に1:3と一致している。完全5度は、最も調和しやすい音程である。「第2倍音と第3倍音の組み合わせ」や「第4倍音と第6倍音の組み合わせ」などがその例で、周波数の比率が2:3である。とすれば、例として、440Hzと660Hzの音を鳴らすと220Hzのうなりが生じる。計算は、660Hz-440Hz=220Hz。倍音には、5度を最も強く含むという特性がある。完全5度は、最も良い音がする。

ルートがCのときの完全5度は、C4(約523.25Hz)とG4(約783.99Hz)を同時に鳴らして、そのまま歪み系エフェクトを掛けると、C4(約523.25Hz)より1オクターブ下のC3(約261.63Hz)の基音周波数の音が生じていることがわかる。

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]